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2025年11月11日鑑賞

国立西洋美術館で幾度となく開催された印象派の展示がありましたが、今回は室内の表現にフォーカスした異色の企画です。

印象派の特徴として、屋外の光を屋外の現場で表現したとはよく言われるお話。
これは主にモネに代表される筆触分割を説明するものです。

もう一つ印象派の試みたのが、当時19世紀の実相を画題として取り上げるということ。
結果として当時の富裕層(ブルジョワ)の生活が多く表現されたというわけ。
そこで「室内」というテーマが取り上げられたのが今回の展示です。

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地下1階のエントランス ↑
室内をテーマにすると、印象派関係の画家でもマネやドガが中心になってきますね。
個人的に敬愛するドガ先生の作品が大挙来日する、非常に楽しみな展示なのでした。

作品の多くはパリのオルセー美術館から来日。
オルセーといえばその収蔵作品は昔から画集やムック本で見ていたわけで…とにかく「学生時代に見ていたあの作品」が多数ありました。

初っ端から…印象派の仲間たちが描かれた
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フレデリック・バジール
「バジールのアトリエ(ラ・コンミダンヌ通り)」1870年
オルセー美術館

確か自分が学生だった1980年代に出版されたジュ・ド・ポーム美術館の作品集の冒頭に掲載されていた作品。
印象派の作品が現在のオルセー美術館に集められたのが1986年、それ以前はジュ・ド・ポームで展示されていたとのこと。

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エドガー・ドガ
「ドガとエヴァリスト・ド・ヴァレルヌ」1865年頃
オルセー美術館

ドガの初期作品として画集に収録されることの多い作品。
友人(左)と自画像(右)の二重肖像画的な作品。
ド・ヴァレルヌの左手に描き直しがそのまま残されていて、とにかく完成させるという古い価値観と決別しているのが面白い。

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エドゥアール・マネ
「エミール・ゾラ」1868年
オルセー美術館

ジャポニスムの例として紹介されることの多い作品。
ゾラ本人は全光的なフラットな色面で表現され、背景に描きこまれた浮世絵と同様の平面性が特徴ですね。

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エドゥアール・マネ
「ステファヌ・マラルメ」1876年
オルセー美術館

友人の文学者を描いた肖像。
これも画集に収録されていることの多い作品。
全体にサクサクした筆致だけど、個人的に注目したのはサラッと描かれているのにしっかり立体感の出ている袖口カフスの表現ですね。

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エドガー・ドガ
「家族の肖像(ベレッリ家)」1858-59年
オルセー美術館

ドガの叔母さんの家族の肖像画。
画集にまず間違いなく収録されるドガ初期の代表作にして本展示の目玉。

一番見たかった一枚。
実物を見て感じたのは…「デカい!」
それもそのはず、ドガによる最大サイズの作品とのこと。
表現は古典的といえるほどきっちりしていて、後の自由な筆致とは異なるが、個人個人のパーソナリティを当時の舞台上で描ききる姿勢が近代的ということになるでしょう。

さらにドガ先生の作品が並びます。
Edgar_Degas_-_Lorenzo_Pagans_and_Auguste_de_Gas
エドガー・ドガ
「ロレンソ・パガンスとオーギュスト・ド・ガ」1871-72年
オルセー美術館

スペイン人音楽家ロレンソ・パガンスがギターで弾き語りしているのをドガの父親が聞いている場面。
色彩は茶褐色主体ですが、表現が巧みでドガ先生の技巧の高さが味わえますね。

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エドガー・ドガ
「マネとマネ婦人像」1868-1869年
北九州市美術館

日本国内に所蔵されているドガの作品。
私は見るのは2回目かな。
どこまで本当かわかりませんが、マネ婦人の顔の出来に不満を覚えたマネが画面の左側を切ってしまったという話が伝わります。
婦人はピアノを弾いていると思われ、それを聞くマネのくつろぎっぷりが近代的?!

19世紀ブルジョワの生活空間と音楽を現した作品群にルノワールも。
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ピエール=オーギュスト・ルノワール
「ピアノを弾く少女たち」1892年
オルセー美術館

国家買い上げになった、ルノワールにとっては「公に認められた」作品。
明部に白絵具を敷いて、おつゆ的な絵具を重ねたルノワール後期の透明感のある技法が見られます。

室内でもプライベート感の強い画題も。
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エドガー・ドガ
「足治療師」1873年
オルセー美術館

たしか本作はずっと「ペディキュア」という題名で呼ばれていたと思います。
その題名では足の爪の手入れ、エナメルの塗布だと思ってしまいますが…
本展の図録の解説によれば、近年では巻き爪の治療の場面だと解釈されているそうな。

画面上、巧みに表現された白い布の印象が強く、構図の要素としては斜め方向が強調されているように見えます。
非常にリラックスした格好の少女のポージングから、私個人的には写真を利用していると思います。

ドガのさらにプライベートな空間での女性像も。
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エドガー・ドガ
「背中を拭く女」1888-1892年
国立西洋美術館

西洋美術館の常設展で見られることの多い作品ですが、しっかり画面に乗せられたパステルの顔料が印象的。
よく見ると色彩も豊かになっています。

そして、生活空間の延長として屋外につながる場面も
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アルベール・バルトロメ
「温室の中で」1881年
オルセー美術館

本展示で数少ない撮影可の作品。
作品の隣には画面中の女性が着ていた衣装も展示されていました。
等身大の印象的な作品でした。

展示の終盤は屋外の花々などに到達します。
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エルネスト・クォスト
「バラ」1909₋1916年
オルセー美術館

作者は全然知らない画家ですが、筆触分割の手法で描かれた装飾画で印象的でした。

最後はモネの睡蓮で締めという構成でしたが、展示の大部分は筆触分割ではない作品でした。
非常に面白い企画だと感じました。
かなりオススメ!


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