20240326_033409000_iOS - コピー
2024年3月26日に見てきました。
「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」と、長いタイトルだなぁ…と思ったら副題に「国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」だそうで、企画者の気負いのようなものを感じました。

一見、なんだか分からないように見える現代美術も実は美術の長い歴史を踏まえたうえで制作され、解釈されるものだという認識は私もあって、そうした流れで西洋美術館の作品群を見直すのも意義があるかな…と思いながら見に行ったわけです。

さらに展覧会開幕前に行われた記者発表の会場で、参加アーティスとの一人とその仲間たちがイスラエルのガザ地区侵攻に抗議する場面が(世間的に)ちょっとだけ話題になりました。
美術の世界で政治的プロテストというのは、19世紀頃より近代的表現として100年以上行われてきたので、別にプロテストという意図事態は「あり」だと思います。

しかし…手法がねぇ(苦笑)
下に TOKYO ART BEAT の記事へのリンクを置きますが、抗議声明の言い方はネット上でパヨクと揶揄される人々のデモのようだし、「川崎重工虐殺に加担するな」という垂れ幕は私が学生時代にみた極左の立て看板を彷彿とさせるし…要するにアートとしての洗練が感じられなくポジティブに評価する気にはなれませんでした。


同時に見られたゴヤの銅版画「戦争の惨禍」では、進行してきたフランス兵が悪役ではありますが、極限状態では敵も味方も残虐になる場面があり、それ故普遍性が出ていると思うわけです
それと比べたら表層的なプロテストに過ぎないことが露呈してしまいますね。

さて…展示そのものは西洋美術館に所蔵された歴史的な作品と現代作家の作品を絡めて「何か」を表現しようとしている…のかな?と思いました。

ただ、「トンチ」的な展開が多かったような印象です。
地震など天災と美術の関係…でしょうけど、倒された立体として、ロダンの作品が寝かされた状態で置かれていました。
20240326_042416000_iOS
台座に固定する面を下から見られるため、中はこんな空洞になっているんだ!という変な興味が湧きました。

他にも障がい者や子供の低い視点に合わせて低い位置にかけられた絵画とか…やはり「トンチ」的ですね。

比較的面白かったのは、現代のモダンな家具を置いた室内空間に西洋美術館の作品を配置してみた展示。
20240326_044103000_iOS
モダンでオシャレなデスクの前にはゴッホのバラの絵( ゚д゚ )

20240326_044114000_iOS
ドニの絵画とブールデルの彫刻を配した室内。
美術館の所蔵品が微妙に「浮いて」見えるのが良いのかどうか?

川崎重工にパレスチナ人虐殺に加担するなと、声明を出した飯山由貴による作品。
20240326_044844000_iOS
西洋美術館の基礎を作った松方幸次郎の肖像画や松方コレクションの作品の周りにびっしり文字が書き込まれています。

20240326_045310000_iOS
観覧者たちも参加して形作られる。
「支配者=体制」に対してプロテストするという基本姿勢は分かりますが、「アート」「美術」に昇華しきれていないように私は感じました。


社会的な視点を取り込んだ興味深い作品群。
ドンキホーテのような密度感のある展示。
弓指寛治による、ホームレスの人たちを題材にした大量の作品。
20240326_050111000_iOS

簡易宿泊所で寝泊まりする人々を描いた作品群。
20240326_050603000_iOS

ホームレスの人が作った手作りフィギュア。
妙な力強さがあり、アウトサイダーアートといえますね。
20240326_050428000_iOS


竹村京による損傷したモネの睡蓮の欠損部分を補完するオーガンジー。
アートとしての技を感じる作品です。
20240326_051157000_iOS

パープルームというセクション。
部屋仕立ての会場に展示されていました。
ボナールの絵画を取り囲む現代作家の作品ですが…正直、雰囲気を合わせただけのように感じました。
20240326_052823000_iOS


最後に近いセクションで、個人的に絵として良いなと感じた作品群。
具象と抽象の狭間を狙ったかのような坂本夏子による絵画。
20240326_054348000_iOS

一通り展示を見てから常設展に入ると、ホッとします。
自分はやはり美術に関しては保守的な志向であることを強く実感したのでした。

展覧会フライヤー(PDF)

作品リスト(PDF)

******************************************