2024年2月15日鑑賞。
東京都美術館で開催。
基本印象派が好物の私にとっては、かなり見たい展示でした。
印象派の作品はフランス本国ではアカデミックなサロンではなかなか認められず、伝統的な権威のないアメリカで先に火がついたように記憶しています。
この展示は本家の印象派の成立からその広がりをアメリカ(USA)方面中心に概観するものです。
マサチューセッツ州のウスター美術館の収蔵作品を中心に構成されています。
ウスターの名称ですが…Worceterと書くそうですので…「ウースター」というべきでしょうか。
多くの日本人にとって初耳の美術館でしょうから、美術館自体のPRにもなっているように思いました。
ただ…副題に「モネからアメリカへ」って、ちょっと最近の美術展は「モネ」と言い過ぎじゃないか?と思ったりもします。
最初のセクションは予想通り19世紀からの写実的な傾向をなぞるところから。
コローやトロワイヨンらバルビゾン派、クールベあたりは印象派登場の基礎を準備したというところでしょうか。
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「ヴィル=ダブレーの牧歌的な場所 湖畔の釣り人」1865〜70年
銀灰色に意外と鮮やかなグリーンがイイですね。なにやらホッとします。
印象派以前のアメリカで自然を描いた作品としてこんなものが…
トマス・コール「アルノ川の眺望、フィレンツェ近郊」1837年
初見の画家です。
イタリアの風景でまだ18世紀的な表現を引きずっているような気もしますが、光が綺麗ですね。
あと忘れてはならない画家が…
ウィンスロー・ホーマー「冬の海岸」1892年
時代的にはとっくに印象派が活躍している頃ですが、実直な表現で海景画を多く残している人だなという印象です。
こうした流れが20世紀に入ってアンドリュー・ワイエスとかに繋がっていくのかな?なんて思ったりもします。
2番目のセクションはパリの印象派誕生…です。
モネ、ルノワール、ピサロなどお馴染みの雰囲気の作品が並びます。
メアリー・カサットはアメリカ人ですが、印象派展に出品していたためでしょう、このコーナーに展示されていました。
また、彼女は印象派をアメリカに伝える役割を果たしていたそうです。
メアリー・カサット「裸の赤ん坊を抱くレーヌ・ルフェーブル(母と子)」1902〜03年
子供が裸だったりする等、聖母子像が下敷きになっているのは間違いないと思われます。
とはいえ同時代性を表現しているというのも印象派の一つの特徴ですね。
もう一人、印象派の影響を直接的に受けたアメリカ人画家…
チャイルド・ハッサム「花摘み、フランス式庭園にて」1888年
本作は明るい色彩が印象派的ですが、かなり平面的な画面でナビ派のような装飾的な雰囲気も漂っていますね。
チャイルド・ハッサムの作品はいくつか展示されていました。
アメリカ以外への波及も…まずはスウェーデン。
アンデシュ・レオナード・ソーン「オパール」1891年
「スウェーデンでは国民的画家」というキャプションがついていましたが…知りませんでした(汗)
風景に裸婦とは、やや意表を突かれますが、色やタッチは軽やかですね。
もう一人印象派の影響を受けたアメリカ人として、有名どころのサージェント。
ジョン・シンガー・サージェント「キャサリン・チェイス・プラット」1890年
肖像画家として有名ですね。
白や黒と他の色彩と対比させるというのが持ち味かな…と思います。
そして、日本人画家も…
黒田清輝「草つむ女」1892年
個人的に黒田が「中途半端に印象派の手法を輸入し」それ故日本の洋画界にゆがみが生じたと思っています。
ただ、ヨーロッパ滞在中の作品は結構イイのですよねぇ。
日本人では久米桂一郎も
画像は昨年西洋美術館で開催された「ブルターニュ展」から同じ作品がでていまし。
久米桂一郎「林檎拾い」1892年
そして、アメリカの印象派というセクションでは、またチャイルド・ハッサムの作品が
チャイルド・ハッサム「シルフズ・ロック、アップルドア島」1907年
これはかなりストレートに印象派(しかもモネ)の影響が見られます。
ごつごつしたタッチ、補色の赤系で描かれた岩の影とか。
最後のセクションはアメリカならではのモチーフ、表現の作品群。
フランク・ウェストン・ベンソン「ナタリー」1917年
アメリカのドライで強い日差しを感じる画面です。
人物モチーフが少ない中、なかなか魅力的な作品だと思いました。
デウィット・パーシャル「ハーミット・クリーク・キャニオン」1910-16年
北米大陸で絶景といえば、グランドキャニオンを挙げる方は多いと思います。
その渓谷をカラッとした空気感と共に表現した作品です。
黄色系と青緑系の色彩対比もキレイですね。
一通り展示を見終わると、物販です。
結構、食品系が充実していた印象です。
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