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長岡市にある新潟県立近代美術館で開催していた企画展「ベルギーと日本」の招待券をいただいておりましたので、見てきました。

近代美術でのベルギーと日本の関わりを振り返る展示です。

ベルギーというと、バロック期のルーベンスやヤン・ブリューゲル辺りが思い浮かびますが、近代以降だとマグリットくらいしか思い浮かばないですね。

19世紀以降、日本人画家でベルギーに留学した人たちの作品と、彼らが現地で影響を受けたベルギー人画家の作品が最初のセクションに展示されていました。

時代は19世紀後半、印象主義の技法が徐々にヨーロッパ全体に広がっていった頃。
ベルギーで絵画を学ぶということは、印象派が始めた筆触分割の技法に間接的に触れるということ。

これはフランスに留学した黒田清輝ですら、アカデミズムに薄めて取り入れられた「外光派」の技法を輸入したに過ぎないわけです。

キャプションで驚いたのは、ストレートに印象主義の筆触分割で描かれた作品に対して、日本の評論家は「表面的な技法を真似ているに過ぎない」と批判的なコメントをつけていたということでした。
日本的な中途半端なアカデミズムができてしまっていたといことなのでしょう。

そんな作品群の中でも面白い効果を出している作品が、展示のメインビジュアルにもなっている児島虎次郎の作品でしょう。
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児島虎次郎「和服を着たベルギーの少女」1910年
ザクザクした筆致ですが、特にバイオレットの部分など絵の具をのせてからかき取ることで変化を持たせています。
筆触分割を自分なりに消化した表現ではないでしょうか。

次のセクションは彫刻。
ロダン的なモリモリした表現から、労働者をモチーフにしたプロレタリア方面の作品まで、それが戦前の日本に波及していた様が表現されていました。

その後、第一次世界大戦で荒廃したベルギーへのチャリティー展覧会の記録とか、逆に関東大震災でダメージを受けた日本を援助するベルギーでの動きなども展示されていました。

最後は瀧口修造と絡めたマグリット作品の展示もありました。

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次に別料金でのコレクション展を見ました。
旧大光コレクションを核としたこの美術館のコレクションは特に日本の近代美術に見るべき作品多数なのです。

以前見ているのに、その時の気分でしょうか?
ある時、突然見え方が変わることがあります。
今回はT.ルソーの作品でその感覚を味わいました。
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テオドール・ルソー「ボートに乗る人のいる夏の風景」1845年
何故か画面が非常にビビッドに見えました。
森に差す日照と照らされた風景が素直に美しく感じられました。

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シャルル=フランソワ・ドービニー
「オワーズ河、イル・ド・ヴォーの夜明け」
1869年
大雑把な筆致はかなり印象主義の筆触分割に近いですね。
森の木々のかたまりや水面への空の反射など、色は黒っぽいですがモネ的な要素もあるように思います。

写実主義と言われるクールベの印象主義的作品も
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ギュスターブ・クールベ「エトルタ海岸、夕日」1869年
枝が分岐したような奇岩で有名な海岸を描いた作品ですが、夕日の光に照らされた色彩がイイ感じです。

日本人画家の作品でも気になる作品が…
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岡鹿之助「朝の城」1970年
ややもするとファンシーな雰囲気を醸し出す作風ですが、モチーフはかなりかっちり表現されています。
…でも絵の具の塗りは厚くない( ꒪Д꒪)
ボナールとならんで、なんでこうなるか分からないけど、イイ❗️画家ですね。

巨匠、藤島武二も
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藤島武二「海」1934年
旧ブリヂストン美術館(現アーティゾン美術館)所蔵の海景画の印象が強いのですが、本作はその流れにある一枚。
船と帆のシルエットが幾何学的なリズムを作り出しています。
朝か夕かわかりませんが、ピンク系の色彩とブルーの対比がイイですね。

企画展からの流れでヨーロッパに留学した日本人画家ということで…日本画家の土田麦僊の作品が❗️
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土田麦僊「鮭之図」1924年
西洋的な表現を勉強して帰国後に描いた作品らしいのですが、なんだか司馬江漢や高橋由一っぽく見えるのはわたしだけでしょうか。

土田麦僊が滞欧中に描いた素描。
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土田麦僊「巴里の女 素描」1922-23年
丸いリズムのある線が特徴的で、ヨーロッパにいても日本画家としてのアイデンティティを失わない感じがあります。
品がありますね。

この人、ヨーロッパ行ってたの⁉️と思ったのが、蕗谷虹児。
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蕗谷虹児「川びらき」1952年
挿絵を描くイラストレーターという印象が強いのですがこういった作品もあるんですね。

全く個人的に引っかかりを感じた作品。
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竹谷富士雄「船泊り le canal」1968年
独特のマチエール(絵肌)で興味を惹かれました。

最後の展示室には三好悌吉の絵本原画が並んでいました。
画像は撮影しませんでしたが、面白かったですね。

あと…この時初めて気づいたのですが、入口の前にボテロの彫刻がありましたね。
ボテっとしたフォルムが(笑)らしいですね。

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蕗谷虹児 (らんぷの本)
蕗谷 虹児
河出書房新社
2013-12-20

蕗谷虹児 (らんぷの本)
蕗谷 虹児
河出書房新社
2007-04-01