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2023年8月9日観覧

2023年の夏は、自分も前立腺がんなわけですが…さらに父親に皮膚がんが見つかり、家から70㎞先の病院への送迎、入院や手術の立ち合いと…仕事の休みはそんな用事に時間をとられていました。

そんな中、8月8日は夜勤で9日の朝8時に勤務終了。
その後は10日13時出勤まで時間があるということで、強行軍ではありましたが上野、東京都美術館で開催中のマティス展を見に行きました。


家に帰り着替えなどして9時半ころの新幹線に乗れば上野に11時前に到着するのです。
列車も展覧会もオンライン予約・決済として、iPhoneで改札通過します。

それにしてもこの日の東京は暑かった!
何日も猛暑が続いていましたが、短時間雨が降り、湿度もMAX!
不快指数メーター振り切り!
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東京都美術館の建物に入ってビックリ!
時間帯ごとの予約制にしているはずですが、私の予約した11時~12時の入場者列がとんでもない長さに。
新コロのリスクが大幅に下がって、人数制限が解除されたのでしょう。
列に並んで展示室に入るまで20分(?)20230810_005356448_iOS
入口で展示リストをもらってみると作品の通しNOが155まで!
マジか?!
坐骨神経痛で足を引きずる身にとっては試練の予感(´Д`)

さて、ここでマティスその人、その作品について。
中学高校の教科書で見ていましたので、その頃から原色を使ってデフォルメも大胆な作品の人…と認識はしていました。

僕自身も高校から油彩画を描くようになりましたが、マティスがなぜあの様式になるかは現在に至るまで、理解できません(自分がそのように描けないという意味で)
というか、あまり好みでもないです。

ポンピドゥーセンターが長期閉館になるので、日本でも20世紀前期の作品を集めた企画展がいくつか予定されていますが、これもその一環。

マティスの画業を包括的にみられるのはウン十年に一回あるかないか…というのでかなり無理やり見に来たという感じです。

初期作はG.モローに師事していた頃のものなど、褐色を基調とした渋い色使いですが…じきに派手さを増してきます。

結構、表現様式をふらふら変えるマティスですが、シニャックに出会った直後のこの作品は一つの目玉になっているようです。
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「豪奢、静寂、逸楽」1904年

マティスの画集では必ずと言ってよいほどの掲載率の本作。
日本初公開とのこと。
…なんですが、「そんなに良いか?」と思ってしまいます。
この中途半端な点描はマティスの持ち味が出ていないような気がするのです。
やはり色面で表現した作品が魅力的ですね。
作品解説のキャプションもなんだか抽象的でポエム感出してました。

それと展示前半から彫刻作品がいくつも並んでいて、マティスといえば「平面の人」と勝手に思っていましたが、完全に覆されました。
後のブルーヌードとおなじポーズの彫刻までありました!

前半の展示で気に入った作品。
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「金魚鉢のある室内」1914年
青基調の画面ですが、途中でサーモンピンクっぽい色が塗られていたようで…その上に青が重なって複雑な効果を出していますね。


ところで、今回の展示は3フロア(地下1階・1階・2階)を使っていたのですが、二番目に見る1階がフロアまるごと撮影OKという珍しいパターン!

その撮影可フロアで良い意味で驚かされたのが、木炭の素描。
いままでマティスの素描は線描しか見たことなかったのですが、線だけだと物足りないというか…やはりマティスは色面でしょ…と思うわけです。
そこにこの木炭の調子で色面を表現した素描を見せられたら「これだ!」となったわけです。
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「ピアノの前の若いヴァイオリン奏者」1924-1926年
初っ端からこれですよ。
白場から黒い箇所、それをつなぐハーフトーン…イイですね。

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「扇を持つスペイン女性」1923年

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「半裸で立つ女性」1923-1924年

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「自画像」1937年
30年代以降はよりシンプルで線の強さが前面に出てきますね。

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「眠る女性」1942年

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「レリッシュ教授の肖像」1949年

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「コレット」1950年
描線がシンプルになった結果、日本のアニメキャラ的な印象になった?

さて、撮影可フロアでの有名作。
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「赤いキュロットのオダリスク」1921年
イスラムモチーフの作品ですが…完全な平面性はなくて、女性の身体の立体感とついたて・床の平面性が同居する不思議な画面ですが…悪くない。

あれ~これってセザンヌでしょ!という作品。
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「石膏のある静物」1927年
石膏像と果物の組み合わせって、セザンヌにありましたよね。
あっ…ゴッホも描いていたかも。

もう一点、セザンヌ的な静物。
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「緑色の食器戸棚と静物」1928年
器と果物のあたりはキュビスム入っているように見えます。
構図的には左上に要素を偏らせ、斜めに置かれたナイフが右下への流れを作っていますね。
個人的に割と好みです。


人物画になると、これでもか!というデフォルメも特徴です。
この辺、ピカソと知り合いだったというのも影響しているのかも。
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「夢」1935年
かなり大胆なデフォルメ、肌の色とブルーの対比。

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「《夢》のための習作」1935年
構想段階の素描でしょう。
最終の作品とはかなり違って、まだ写実よりです。
このあと「あーでもない」「こーでもない」と試行錯誤があって作品がつくられたのでしょう。

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「座るバラ色の裸婦」1935年4月ー1936年
明らかに試行錯誤していたのが分かる作品。
もはや顔は描いていないし、どうしてこうなったのかさっぱり分からない一枚。


あと、マティスといえば…室内画。
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「黄色と青の室内」1948年
タイトルが「そのまんまじゃーん!」と言いたくなるのですが、注目したのが二点。

一つは左上のツボとスイカ(?)の描き方で、イエローオーカーみたいな絵具を拭きとって白さを出してますね。
なのにすぐ隣のテーブル上の白場は絵具を盛ってます。

二つ目は額縁。
キャンバスの縁にかぶさる部分がなく、画家が描いた面積100%を見せるようになっています。
この辺、見せ方の意識が変わってきたのでしょうか。

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「赤の大きな室内」1948年
大胆に赤が使われている典型的なマティスの室内画です。
モチーフは平面的に表現されているので、例えば左下のまだらの物体はヒョウ柄の動物なのかな?なんて思いましたが、どうなんでしょうか。
これも額縁の作りはキャンバス全面を見せるようになっています。

最後のフロアは「ジャズ」に代表される切り絵、最後の最後にはマティスが装飾を手掛けたヴァンス礼拝堂にまつわる展示。
出口直前で上映されるヴァンス礼拝堂の映像は、朝から夜にかけて光が変わっていく中でどのように見えるかを表した秀作です。

作品リスト(PDF)

山田五郎氏による作風変遷の解説動画


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