エゴン・シーレですよ。
確か私が大学生だった1980年代以来のまとまった展示企画でしょう。
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会場は東京都美術館…集客多そうな企画をよく行っている印象。
まぁ、私も年に数回訪れているわけですが…。

展覧会公式サイト


え~、本展は4月9日で終了しております。
私が見に行ったのは3月31日と会期も終盤でした。

シーレについて正直な印象を言うと…クセの強い、もっと言えば世紀の変わり目に現れた「変態」画家。しかも早死にしちゃった(これについてはスペイン風邪で亡くなったそうで、他にもこの時期に亡くなった有名人も多く、今世紀の新型コロナよりも凶悪な疾病であったと思われます)

さて、展示そのものはエゴン・シーレとその周辺の画家たち…とでもいうべき内容でした。
そもそもシーレは保守的なウィーン画壇からの「分離」を標榜した「分離派」の運動の中から出てきた画家と言えるでしょう。

その「分離派」の代表的な画家であるクリムトはかなりエロい表現はあるけど「耽美的」とでも言いたくなるキレイさを持っています。
しかし、その後に続くシーレは形態の崩し方も強烈で、不気味とも思える色使いで分離派立ち上げメンバーとは明らかに違う傾向を持っています。
あと、自分自身をモチーフにすることの多いナルシシズム。
勝手な印象ですが、自身の身体を描くナルシズム傾向のある人はやせ型が多いような…?
後半出てくるゲルストルもそんな印象があります。

展示のメインビジュアルとなっているシーレの自画像
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「ほおずきの実のある自画像」1912年
技法的には黒い服のかすれたテクスチュア感と背景のしっかり塗り込まれた白等…油彩とグワッシュを使ったミクストメディアでもあり、「ああ、かなりのテクニシャンだな」と感じました。
さすが16歳でウィーン美術アカデミーに入学するだけのことはありますね。

ちなみに同じような角度で写された写真も残っています。
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上の自画像はまだ普通さを保っているのですが…
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「抒情詩人(自画像)」1911年
直交する直線の構成が目につく画面構成、そのためにデフォルメされた人体、不気味な色使い…と一般的に「シーレらしい」画面です。
やはり、シャツかジャケットか分かりませんが、身に着けているのはそれだけで下半身は裸だし、服の隙間から除く白い肌もまた…変態性ですね。


今回、なぜかシーレの風景画は撮影可能でした。
人物画に対して風景は不気味度が低めかな?なんて思いましたよ。
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吹き荒れる風の中の秋の木(冬の木)1912年
先にご紹介した自画像の背景部分を発展させたような作品。
画面いっぱいに枝が配されて、抽象的な印象の画面になってます。

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モルダウ河畔のクルマウ(小さな街Ⅳ)1914年
なんというか「カワイイ」ようにすら感じる作品です。
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この作品もよ~く寄って見ると…かなり複雑なテクスチュアが作り込まれています。
風景画はほとんどがスクエアな画面で、クリムトの影響でしょう。
人間の自然な視界は横長だと思いますが、スクエアにすることで特別感のある視覚体験を演出しているのでしょう。

そんなシーレも結婚して身を固めると画風も落ち着いていくんですねw
妻を描いたこんな作品。
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「縞模様のドレスを着て座るエーディト・シーレ」1915年
だいぶ表現が落ち着いてきましたね。
グワッシュで描かれているようですが、やはり「かすれ」の効果を利用したテクスチュアは健在。
あと、人物モチーフで顕著に見られるのが、素描の描線の迷いのなさをあらためて感じました。
これも一種のデッサン力ですね。

こういう表現主義的な作品を残した画家に対しては「病んでいた」「狂気」「悲劇的」というキーワードを思い浮かべることが多いのですが、それはゴッホの印象が強烈だったからなのだろうと思います。
シーレは、スペイン風邪で早くに亡くなってしまったことを除けばそれほど病んでいなかった…というのが山田五郎氏の見解です。
私も支持します。

山田五郎氏、シーレの実像に迫る①


山田五郎氏、シーレの実像に迫る②



シーレと並び、表現主義的な作品が目を引く…
サイズの大きなリヒャルト・ゲルストルの半裸の自画像
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「半裸の自画像」1902/04年
この方…本作はまだ見えた通りに描いてますが、この後タッチが激しく(ガッチャガチャに)なっていきます。「ザ・表現主義」という表現ですね。
ゲルストルは25歳にして自殺してしまったそうで、シーレより余程悲劇的ですわ。

山田五郎氏、ゲルストルを語る!


あと表現主義的な画家としては、オスカー・ココシュカも展示されていました。
…なんですが、やはり個人的には表現主義って苦手でしっくりくるものがなかったです。

本展示での最大の収穫は、シーレのグワッシュと油彩を併用したテクスチュア感の発見ですかね。
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映画化されたシーレ