2023年2月21日鑑賞
展示の公式WEBサイト↓
佐伯祐三のWiki
戦前の日本の洋画家は若くして亡くなった方が多く「悲劇性」を強調されることが多いような気がします。
佐伯祐三も30歳で早世してしまった画家です。
美術の教科書にも載っていた記憶もあり、日本においては有名作家と言ってよいでしょう。
佐伯祐三の作品をこれほどまとまった数見るのは多分初めて。
ただ…個人的にはちょっと苦手というか…こういう、ガー!っと描きまくる画家さんはよく分からないんですよね。
エネルギーのあるのは理解するんですが。
とはいえ、中でも自画像の変遷は興味深かったですね。
「自画像」1923年
東京美術学校の卒業制作
教科書で見たことある作品。
ルノワール的なおつゆ描き(?)
「パレットをもつ自画像」1924年
もろにセザンヌ風味になった作品。
1920年代は絵画に様々な傾向が出てきて、佐伯もどっちへ進もうか模索した時期があったのでしょう。
セザンヌに寄せようと思えばそうできる。
結構器用な面もあることが分かりますね。
「立てる自画像」1924年
ブラマンクに「このアカデミック野郎め!」と言われてショックを受けた心情が表現されている?!
ものすごく粗い筆致で、顔は一度描いて削ったようにも見えます。
画面裏にノートルダムが描かれています(展示では表裏見える)が、この自画像を塗りつぶさなかったのはこの時感じたものを忘れたくなかったのでしょうか。
「コルドヌリ(靴屋)」1925年
油彩のこってりした絵肌にパリの建物がマッチしたのでしょう。
1回目のフランス滞在時の作品。
ゴツゴツした壁がメインでまだ文字の要素は店名程度というバランス。
個人的にはこのくらいの方が気楽に見られるような気がします。
そして、意外と見る機会のなかった日本での作品群。
「下落合風景」1926年頃
一度フランスに行った後に描いたものでしょう。
ヨーロッパの堅固な建物を描いていたのに、日本の景色はそういった要素がないことが分かります。
しかし電柱や細身の人体など線的な表現ははっきりしてますね。
「滞船」1926年頃
こういった船を描いた作品は全然知りませんでした。
おそらくマスト・ロープの線の要素が良かったんでしょう。
割と「普通」な感じがするのは線以外の要素が弱いからなのかもしれません。
2度目の渡欧時の作品。
佐伯祐三の典型的な。
「ガス灯と広告」1927年
堅い建物の壁、黒い線と画面を埋める文字。
ただ…こういう傾向の作品がずらりと並ぶと、個人的には息が詰まるような感覚になります。
自分で絵を描くようになったら、自己の感覚と合う・合わないという感覚がよりはっきりしてきたような気がします。
パリの店舗内部もモチーフになってます。
「カフェのテラス」1927年
色味があり、黒の線描、文字も取り入れた画面。
白いイスは黒の線描と呼応している。
文字とイス、衝立といった要素がバランスよく配置されたように見えて割と好きな作品。
最後は文字の要素が控えめになってきてたような。
フランスの風景…というか建物。
「モランの寺」1928年
白っぽい壁はユトリロ的であり、本当は直線のはずの建物の線が波打っているあたりはゴッホ的。
要所に黒っぽい線が入るのは佐伯の独自性かな。
数少ない人物モチーフ。
「郵便配達夫」1928年
多くの人がゴッホが郵便配達夫を描いた作品を連想するのではないかと思います。
ですが…これは佐伯祐三の独自性が明確に出ているところがイイ感じ。
直線的にアレンジされた人体が背景の建物の直線とマッチしてます。
やや斜めになっているのも動きにつながっていますよね。
展示のキャプションで、この頃佐伯は超早描きで半日で1枚仕上げていたとか。
ちょっと考えられないペースですが、これもゴッホ的ではあります。
長く生きられないことを意識していたのでしょう。
そんな描き方をしたから死期をはやめてしまったのか、死を意識したから早描きになったのか?
今となっては分かりませんが、結果作品を残せたことで今でも記憶される存在になっているわけで…
美術家は作品を残していくことが第一なんだと思ったのでした。
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