2022年7月1日公開 7月6日鑑賞
エルヴィス・プレスリーが音楽シーンに登場してから亡くなるまでの物語。
基本、実話ベースで…ボヘミアンラプソディが当たったから作られた作品なのかな?…な~んて思ったりして。
エルヴィス・プレスリーに関する私自身のリアルタイムでの記憶は1977年、私が小学生の頃に聞いた亡くなった時のニュース。
晩年はド派手な衣装で体重増に苦しむかつての大スターという印象でした。
本作の情報はネット上での動画広告で初見。
初期のロックンロール反逆児的な映像が非常に「そそる!」
なんだ!初期は超絶カッコイイじゃないか!
タイトルロゴもゴージャスでイイ感じ!
…ってなわけで封切から数日後に見に行ったのでした。
場所はいつものTジョイ長岡でしたが、平日昼間ということもあったのか観客は非常に少なかったですね。
しかも年齢層高め( ゚д゚ )
監督は、バズ・ラーマン。
この方の他の作品は見たことないのですが、自身俳優もやるし映画の他にTVのシリーズドラマを手掛けたりと多彩な方のようです。
ちょっと時系列がガチャガチャする部分もありますが、全体的にはテンポよく話が進んでいきます。
最初は少年エルヴィスが黒人音楽に触れて、後年の熱狂につながるトランス状態の体験などが語られます。
そしてデビュー直後、人気うなぎのぼりの時期。
しかし1950年代はアメリカが非常に保守的だった時代。
さらに人種差別も激しく、アメリカ人全体がなにかにガチガチに縛られていたとも言えます。
そんな時代、黒人音楽の要素を取り入れ、ステージ上ではセクシーな振りで歌うエルヴィスは逆に熱狂を巻き起こすのでした。
初期ライブのシーンでは当時の熱狂的ノリノリのリズムで思わずか身体が動いてしまうほど!
なかなかない体験でした。
そして、「聞いたことあるな」と思う曲のなんと多いことか!
洋楽についてはそれほど深い関心のなかった私でそうなのですから、好きな方にはタマンネェ!のでしょう。
社会的に抑圧されている女性たちがこらえきれずに歓声を上げるところなど「禁断の存在に触れるとかえって興奮が高まる」現象を見事に現わしていました。
禁断に触れるというのはエデンの園で禁断の果実を食べる…というキリスト教のエピソードに通じているようにも思います。
人気が高まっていく頃から組んでいくのが怪しげな敏腕マネージャーのトム・パーカー、通称「大佐」
この退役軍人を騙る人物をトム・ハンクスが演じています。
この詐欺師ぎりぎりの人物がストーリーを横から支えるような構造になっているのが面白いですね。
この辺が序盤。
人気絶頂の時にエルヴィスは兵役で何年か芸能活動を離れますが、この間もストックしておいた曲をリリースし続けて世の中から忘れられないようにするのも「大佐」の手腕。
この兵役に取られるのも、問題児エルヴィスを社会から隔離しようという陰謀めいたものがあったのかもと感じさせます。
中盤の展開は…
兵役終了後、人気を保つため色々な活動を行うわけですが…
エルヴィスは時として「大佐」の意図とは違った行動をとるようになり、自分でスタッフを選んだりします。
この辺は「売るため」を最優先する「大佐」と、音楽の質を追求するエルヴィスの相違が際立つのですが、最終的には「大佐」がエルヴィスの才能に負けた格好になるわけです。
そして終盤は病んでいくエルヴィス。
その怪しい経歴から海外渡航できない(と思われる)「大佐」は海外ツアーの話をことごとく潰して、アメリカ国内のライブを海外へTV中継するという逆転の発想からこれがまた大成功。
ラスベガスのホテルで定期的に華麗なショーを行い、安定した収入を確保することにも成功します。
一方で、エルヴィスには怪しげな専属医をつけて薬漬けにします。
早くして亡くなった原因はおそらくオーバードーズではないかと思われます。
(この辺はマイケル・ジャクソンもそうかもとアメリカの病理かなと思ったり)
最後、家族とも離れ離れになり、ボロボロになりながらも舞台に立ち続けるエルヴィスはおそらく観客のために純粋に頑張っていたのでしょう。
最後のライブシーンだけ実際の映像が使われていましたが、そんな姿勢がリアルに伝わったと思います。
それを追い立てるようにしていた「大佐」はやはり鬼畜というか一種のサイコパスに見えますね。
…なんだけど…エルヴィスの才能へのリスペクトは持っている、そんな複雑さをもった人物を表現しているトム・ハンクスは上手い役者だと感じました。
トム・ハンクスもいいけど、やはり主演のオースティン・バトラーのエルヴィスっぷりたるや…惚れ惚れするほどです。
エルヴィス本人より少し線の細い姿は21世紀的な基準での格好良さを加えていると言えましょう。
実際に歌唱も行ったそうで、なりきり度はマジ半端ないレベルです。
音楽史の流れを表現した映画という意味では…
映画の序盤、エルヴィスはカントリー歌手と各地でライブする場面がありますが、これによってどこかのんびりした感のあるカントリーとの対比で、ロックンロールが出現したときの衝撃がより明確になっています。
またBBキングら黒人アーティストとの交流シーンなどその音楽のルーツについてもかなり丁寧に描かれていますね。
映画を見ながら気づいたのですが、日本にも影響ははっきりあって、80年代の吉川晃司は初期のエルヴィスを再現しようとしたとしか思えませんし、バンド名の「ハウンドドッグ」なんてモロですね。
そして私は全然知らなかったエルヴィスの家族思いで優しい人柄を現わすエピソードも興味深かったです。
兵役中にアルコール依存から亡くなった母親の場面はグッときますし、家族のために豪邸を建てたり妻のプリシラと娘とのふれあいとか。
そもそも当時人種差別意識の強かった時代に黒人音楽に親しんで、人種問題からくる暗殺事件などに心を痛めたりとか。
ずっと純粋さを持ち続けた故に、ファンから愛されたのだと感じました。
…とまぁ、かなり濃密な内容で個人的には満足度かなり高めです。
*******************************************
極初期のエルヴィス写真集復刻版
Amazonプライムのライブ映像
1968年「カムバック」TVショーを軸に語られるエルヴィスの評伝
本作のサントラ
コメント