2022年7月8日公開、7月21日鑑賞
作品公式サイト
予告編
夢枕獏の小説を谷口ジローがコミカライズしたものを、フランス人がアニメ化したという作品。
聞くところによると谷口ジローはフランスにおいてはアーティストとして大人気だといいます。
フランス人の「OTAKU(オタク)」が日本リスペクト全開で作ったアニメだな!
…というのが全体的な印象です。
私自身はコミック版を読んだことがあって、結構長い話だなぁ…と思ってました。
が、本作は話の骨子を押さえたうえで約90分強の尺に上手くまとめ上げています。
絵そのものは谷口ジロー的ではなく、フランス人によって描かれた日本人という感じ。
これ自体は個人的に悪くないと思いましたよ。
そして予告編などで強調している登山シーン。
山の描写も見事なものですが…
熟練の登山家のライブアクションをキャプチャーしたかのような動作が強い説得力を生んでいます。
何より滑落などのトラブル発生のシーンが山の恐ろしさを十二分に表現できていて、見ているとこちらの胃がキリキリしてくるほど( ゚д゚ )
精神的に追い詰められて幻覚が見えるところなどアニメならではの強烈な表現です。
個人的に登山シーンより感心したのが、日本そのものの描写です。
物語は羽生丈二の若い頃の70年代からストーリーメインの90年頃(?)までのようですが…
その90年頃の日本ですよ!
2022年の現代と似ているけど、細かいところが色々違っている。
例えば携帯電話が普及していないので電話ボックスのある街。
深町が暮らす一人暮らしの部屋とか喫茶店など、当時の空気感すら漂わせています。
私も体験した当時の東京の街が…本当にフランス人が描いたのか?!と言いたくなるリアルさなのです。
色彩も独特で、日本のアニメとは違って全体がややくすんだトーンで表現されています。
ピュヴィス・ド・シャバンヌかアルベール・マルケの絵画作品のような色使いで、非常に「大人な」印象です。
あと、日本語版のアフレコでは
深町誠=堀内賢雄
羽生丈二=大塚明夫
…他にもベテランの声優さんを起用していて、安心感のある演技が聞けます。
声まで含めて日本や日本人を表現して全く違和感がありません。
すごいです。
どうも日本のアニメは技術が進歩しても、私個人の感覚からは乖離していく作品が多くなってきたように感じます。
たまにこうした作品を見ると逆にほっとします。
ククルスドアンの島より見ていてしっくりきました(笑)
フランスのアニメで過去に見た作品のブログ記事
油彩画でアニメを作ったという驚きの作品のブログ記事
***************************************
谷口ジローによるコミック(文庫版)
原作小説(Kindle)
阿部寛主演の実写映画
コメント