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2022年5月27日公開

”あの”トップガン(1986年)の続編。
傑作と言って差し支えないと思います。


一作目公開の1986年当時、私は大学生。
学生時代はヒネた映画が好きで…吉祥寺にあったバウスシアターやそれに付属していたジャブ50なんていう映画館で、タルコフスキーの惑星ソラリスとか、ディバインのお下劣作品とか、韓国の外人球団とか喜んで見てまして…正直一作目のトップガンはなんだか軽いノリだよなぁ~と思って確か劇場では見なかったような(記憶曖昧w)
その後TVかビデオで見たけどやはり「軽い」という印象でした(というか今でも)

2年位前から、ネット上で今回の「トップガンマーヴェリック」のメイキング映像などが宣伝で目に付くようになり、その本気度の高そうなアクションシーンに徐々に期待値が高まっていったのでした。

しかし、新型コロナの影響で公開は延期に次ぐ延期…やっとこの5月に劇場公開!
これだけ引っ張ったのも相当内容に自信があったであろうことがうかがえます。

さて、本作はCGを極力排して航空機も実機を使えるものは徹底して実写で、役者も実機に乗せて(ついでにカメラ操作までやらせて)撮影したとのことです。
トム・クルーズ本人はスタントを使わない主義というのは聞いたことあったのですが、搭乗員役の共演者にまでそれを要求したというわけです。

この辺は前半のシーン…今後は戦闘機も無人機になっていくと言われたけれど、「そうかもしれないが、それは今ではない」と返すマーヴェリックのセリフに表れているとは皆さん指摘してますね。

そして、良い意味で前作を踏襲する内容が多く…それも現代のクオリティで、主人公は歳を重ねた重みも加えて上手く表現されています(86年版の軽さに深みが加わっていい塩梅)
前作80年代の音楽、前作でレクリエーションからチームの一体感を作るとか…80年代的な恋愛模様(この辺はコメディ入ってます)まで。

まあ…敵地への攻撃任務がクライマックスなわけですが…その敵国はボカされていますし(ちゃんと機体の国籍マークも架空)、最後のピンチからの脱出劇はほとんどファンタジーだけど、私はギリ許せました。

なお敵国の設定については…
(1)核兵器製造につながりかねないウラン濃縮を行おうとしている
(2)いまだにF14を保有し運用している
…これらから、イランではないかと思われますが
スホーイの第五世代(ステルス)戦闘機はあり得ないわけで、この辺は作劇上の盛り上げ最優先ですね。

ちなみに敵方パイロットは黒っぽい装備で濃色バイザーで目や表情がほぼ見えないようにして、観客が感情移入できないようにしています。
これは前作でも同じで、おそらくスターウォーズの帝国軍タイファイターの搭乗員のイメージではなかろうかと思います。


…と、ここからは過去の航空ネタの映画作品へのオマージュについて。

冒頭、マーヴェリックはマッハ10の極超音速に挑戦する機体のテスト飛行を行います。
これ自体は近年話題の極超音速の流れを取り込んでいるのですが、機体は架空。

マッハ10の速度は達成するものの、機体は損壊しマーヴェリックはかろうじて脱出して半分黒焦げにないながら戻ってくる…これは明らかに1983年の「ライトスタッフ」に登場するチャック・イェーガーにダブらせています。
宇宙へのチャレンジが始まった時代、宇宙飛行士への資格のなかったイェーガーはF104の試作機で高度記録に挑みます。
宇宙空間が見えた…か?!という高度まで到達したところで機体は墜落。
半分黒焦げになりながらも生還するのでした。
「ライトスタッフ」チャック・イェーガーF104クラッシュシーン


TBSラジオのアフターシックスジャンクションで宇多丸氏が指摘していたのは、86年のトップガンにライトスタッフの特撮スタッフが参加していたそうで、その縁もあるそうです。
極超音速プログラムの中止を告げに来るのがエド・ハリスというところではっきり分かるんですけどね(エド・ハリスはライトスタッフで宇宙飛行士のグレンを演じた)


そして、物語のクライマックスである敵国のウラン濃縮施設攻撃作戦。
複雑な谷の地形を這うように飛んでアプローチ、ピンポイントで爆弾を投下して一発必中で破壊…という、どう見てもスターウォーズのデススター破壊作戦ではないか?!

途中までですが、デススター攻撃作戦の映像



しかし、そのスターウォーズのさらにイメージソースとなった作品があるわけです。
そこまで言及していた宇多丸氏は流石!
…で、スターウォーズの元ネタになったのが宇多丸氏によれば「暁の出撃(原題:THE DAM BUSTERS)」


これは1943年第二次世界大戦中にドイツの工業地帯にあるダムを破壊する作戦をイギリス空軍が行うという内容で(実話)アブロ社製のランカスター爆撃機が水面を水切りのように跳ねてダムに当たる特殊爆弾を超低空飛行で投下するというものです。

実話としてのダムバスターズの話(英語)





確かに飛び切りの特殊作戦ではあるのですが、私が個人的に元ネタだと思うのは「633爆撃隊」なんです。


こちらは、デハビランド社のモスキート爆撃機でドイツの特殊燃料製造施設(ロケット燃料用だったかな?)をピンポイントで攻撃するというもの(こちらは架空の作戦)
モスキートは2人乗り(スターウォーズのXウイングもパイロットとR2D2ユニットの二人?乗り)でノルウェーのフィヨルドの谷間を飛行、ピンポイントで施設の上の山にある巨岩を崩すという作戦。
かなり機動もギリギリで訓練からして非常に危険という…これはトップガン・マーヴェリックに似通っています(というかソックリ)
下の動画7分くらいからが「633」のクライマックスで…ほら、マーヴェリックとクリソツでしょw


暁の出撃に出てくるランカスターは重爆、モスキートは軽快な飛行性能でXウイングやマーヴェリックのFA18と共通点が多いですよね。

…とまぁ語れる航空ネタも多い作品ですね。
それにしても本作、作戦参加者が一人も死なないのもスゴイ。
多分、戦争映画というよりスポーツ的ノリのアクション映画として作ったのでしょう。
人によっては不謹慎と感じるかもしれませんが、これだけ正面切って娯楽作に仕立てられると私は映画としてはアリだと感じました。

最後の脱出シーンはほとんどファンタジーかもしれませんが「そう来たか!」と思わせるところでリアリティより優先するものが本作品の中にはあるのです。
この辺は同じトム・クルーズが主演した「ラストサムライ」(サムライらしさを表現するため明治初頭なのに戦国時代のように戦うサムライ)と共通していると思います。


最後にマーヴェリックが操縦して飛び去っていくP51ムスタングはトム・クルーズの私物(!)とのこと。

航空機を愛するトムさんの映画愛全開の作品なのです。

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前作を復習してから見るべし、とはよく言われますね


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