東京、丸の内にある三菱一号館美術館で開催の展示です。
「印象派・光の系譜」ということで、印象派とその前後…写実主義のクールベ、コローからナビ派までを網羅しています。
ところでイスラエル博物館所蔵品とのことで、ずばりエルサレムにある博物館にこうしたコレクションがあるというのは初めて知りました。
有名な「死海文書」を所蔵していることでも知られているようです。
印象派とその周辺といえば…日本では人気コンテンツであり「この作品、何度目の来日?!」という作品もありそうですが、今回の展示は日本初が多い!というのが一つのウリです。
全体は4つのチャプターに分かれています。
1.水の風景と反映
2.自然と人のいる風景
3.都市の情景
4.人物と静物
展示室に入るとまずはコローの作品から…最初のチャプター「水の風景と反映」です。
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「川沿いの町、ヴィル=ダヴレー」 1855–1856年頃
シルバーグレー~グレイッシュなグリーンの諧調、ふわっとした樹木の表現、合間にのぞく光る水面、人物と建物がポイントで効いています。
典型的なコロー作品が数点続き…川や海の水面が描かれた、ヨンキント、クールベ、ブーダン、セザンヌ、シスレーらの作品が。
やはりセザンヌは浮きますねw
印象派の先駆けというか…実質的には印象派の技法で描いたブーダンの作品。
光の表現としては海景画は外せませんね。
海景を多く描いたブーダンですが、艦船をテーマにしたちょっと珍しい一枚。
ウジェーヌ・ブーダン 「港に近づくフリゲート艦」1894年
途中、撮影可能の部屋があります。
以前ラファエル前派展でもありましたが、同じ広めの部屋です。
撮影の間合いが取れる広さが撮影の可否を決めているのでしょうか。
レッサー・ユリィ「風景」1900年
作者はドイツの印象派画家。
今回の展示で初めて見ました。
フランス印象派の筆触分割というより面で塗って、その色面対比でみせるのが特徴。
本作も明るい水面の白い部分に厚く絵の具が盛られています。
クロード・モネ「睡蓮の池」1907年
後半展示される1907年の睡蓮のひとつ。
晩年眼病の影響で抽象度が爆上がりする前の作品。
次のチャプター「自然と人のいる風景」
必ず人の姿があるというわけでもないのですが…
シャルル=フランソワ・ドービニー 「花咲くリンゴの木」1860~62年
展示室の現場で女性にウケていたのがこれ。
やはりお花はいいですね。
ギュスターヴ・クールベ 「森の流れ」1873年
個人的にクールベの作品はあまり好みではないのですが、斜め線を強調した構図が面白いと思いました。
カミーユ・ピサロ 「エラニーの日没」1890年
ピサロの作品も何点かありましたが、点描的な技法で描かれたこの作品は目を引きましたね。
構図も下の地平線+木の横方向要素になんとなく富士山っぽい形が見える空が組み合わさって面白いです。
ポール・セザンヌ 「陽光を浴びたエスタックの朝の眺め」1882~83年
自然に描くのが不得意なはずのセザンヌですが、本作は朝の空気感が自然に表現されています。
セザンヌ特有のアクが少なく素直にきれいだと感じます。
フィンセント・ファン・ゴッホ 「プロヴァンスの収穫期」1888年
色面と色の輪郭線で表現するゴッホの様式がはっきりわかる一枚。
極端な線のうねりもなく、安定感を感じる画面です。
クロード・モネ 「ジヴェルニーの娘たち、陽光を浴びて」1894年
積みわらの輪郭を娘の姿になぞらえています。
全光を浴びてモチーフが全て平面的な色面になっているのが非常に珍しい。
ゴーガンによる人物のいる風景
ポール・ゴーガン 「ウパ ウパ(炎の踊り)」1891年
ゴーガンの作品でハッとする面白さをもったものがこれ。
タヒチの光景で焚火の明るさとそれを斜めに横切る木の幹が印象的。
3番目のチャプターは「都市の情景」
カミーユ・ピサロ 「テュイルリー宮庭園、午後の陽光」1900年
都市の風景を俯瞰で描いた作品の多いピサロ。
ピサロらしい安定感のある構図、陽の当たった感じの表現がイイ感じ。
レッサー・ユリィ 「夜のポツダム広場」1920年代半ば
雨の夜景というどちらかというと珍しい光景を描いた作品。
人物の黒いシルエット、青の空と地面、明かりの黄色の対比が印象的です。
電球の黄色の光、雨傘が近代的な都市空間を感じさせます。
日本では全然知られていない画家ですが、この作品は来場者に大変好評らしい。
最後のチャプター「人物と静物」
ピエール=オーギュスト・ルノワール 「花瓶にいけられた薔薇」1880年頃
幅70センチ強あるやや大き目の画面いっぱいにバラが描かれた作品。
ルノワールのフワフワした筆致がまたよくマッチしています。
エドゥアール・ヴュイヤール 「長椅子に座るミシア」 1900年頃
印象派後のナビ派のひとり、ヴュイヤール。
中間的な明度の茶系下塗りにちょっとくすんだ色がのせられています。
壁紙と手前の椅子に意図的に同じターコイズブルーが使われていたりします。
ピエール・ボナール 「食堂」 1923年
最後は色彩の魔術師、ボナール。
全体では淡い青と鮮やかな黄色の対比が印象的。
ガサガサした筆致で鮮やかな黄色も浮かないで済んでます。
食卓の影も色彩入ってます。
見終わって…なるほど「初来日」作品が多い展示でした。
しかもどの作品もそれぞれの面白さを持っていました。
まだまだ印象派周辺で見たことのない作品が多いのだと分かり面白かったですね。
作品リスト(PDFファイル)
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