アーティゾン美術館で開催の石橋財団所蔵の作品展です。
まず、メインビジュアルで…この作品の作者って誰?!となったのですが、答えは後程。
そもそも印象派の良品が多いコレクションです。
旧松方コレクションを引き継いだものもあるそうですし、ブリヂストン美術館時代は私も定期的に見に行っていました。
今回は印象派の作家たちの師弟関係、友人関係を作品を通じて見ていこうという展示です。
まずは…<マネと女流画家のエヴァ・ゴンザレスとベルト・モリゾ>
師弟関係もあり、マネのモデルも務めた二人でもあります。
エドゥアール・マネ「自画像」
ブリヂストン時代から見ていたおなじみの作品。
筆致に見られるギリギリの密度感が絶妙ですね。
エヴァ・ゴンザレス 「眠り」
白~シルバーグレーの諧調がいい感じで「なかなかやるじゃない!」と思わせる作品。
ベルト・モリゾ 「 バルコニーの女と子ども」
印象派関係の女性作家は家族的な作品が多いですね。
<ドガとメアリ・カサット>
ドガは私個人的に好きな画家ですが、どうもこの方は女性コンプレックスがあったようです。
そんなドガ先生の数少ない女友達(?)がアメリカ人のメアリ・カサットなのです。
エドガー・ドガ 「浴後」
パステル画ですが、主な線は木炭みたいな柔らかさ。
水平垂直要素を排した独特の構図ですね。
メアリ・カサット 「 日光浴(浴後 )」
先に紹介したモリゾのように家族的な作品。
カサットには小さな女の子を描いたものが多く知られていますね。
かなり色鮮やかな表現も特徴。
<ピサロとセザンヌ>
ピサロはセザンヌを印象派展に誘ったいわば師弟関係(全く作風は異なりますが)
カミーユ・ピサロ 「 ブージヴァルのセーヌ川」
こういう典型的な印象派の風景画も、見ると安心しますね。
ポール・セザンヌ 「 サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」
これもブリヂストン時代からのおなじみ作品。
青を基調として建物のイエローオーカーが対比されています。
<カイユボットとルノワール>
この2人は友人関係
ギュスターヴ・カイユボット 「ピアノを弾く若い男」
裕福だったカイユボットは、単に親しい友人というだけでなく経済的にも印象派の画家たちを支えたそうな。
この作品もそうですが、対角線や斜め線を多用するのが彼の構図の特徴。
ピエール=オーギュスト・ルノワール 「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」
とにかく女性や子供の肖像を可愛らしく描くことに長けていたのがルノワールであり、本作も非常に魅力的に仕上がっています。
ギュスターヴ・カイユボット 「イエールの平原」
珍しいパステルを使った風景。
構図もカイユボットでは珍しく水平の線が強いですね。
<ゴッホとゴーガン>
この2人の関係は耳切り事件などで有名ですね。
ポール・ゴーガン 「馬の頭部のある静物」
これはどこかの企画展で見たことあるような気が…
点描要素があるのはゴーガンにしては珍しいですね。
フィンセント・ファン・ゴッホ 「モンマルトルの風車」
ゴッホがオランダからパリに来てまだそれほど時間がたっていない頃の作品。
色はまだオランダ時代の茶系主導の地味な感じが残っているようです。
ブリヂストン時代からおなじみ。
<ブラックモン夫妻>
フェリックス、マリーの夫妻は二人とも画家で、印象派展にも出品していたそうです。
全然知りませんでした(・´з`・)
会場のメインビジュアルになった作品を描いたマリーの情報
↓
マリー・ブラックモン 「セーヴルのテラスにて」
最初一見して…(ボナール?)と感じた色使い。
ちょっとくすませた全体トーンにワイン色~赤紫の効果がイイ感じ。
展示の途中に写真のコーナーがありました。
エドガー・ドガ 「エドガー・ドガ」
自画像ならぬ自写像?!
晩年近くのドガ自身の姿を紹介するのによく使われる画像です。
<モネ、シスレー、シニャック>
印象派風景画の代表格であるのがモネとシスレーで、最後まで筆触分割の手法を通した二人です。
そしてティーンエイジャーの頃にモネの作品に感動して画家になったのがシニャック…というつながり。
クロード・モネ 「雨のベリール」
典型的なモネの海景画。
波の動きを皿型の筆致、雨の動きを斜めに揃った筆致で表現しています。
霞んだ空気感の表現も巧みですね。
アルフレッド・シスレー 「レディーズ・コーヴ、ウェールズ」
シスレーの作品も何点か展示されていましたが、モネとの対比で海景画を。
描かれた場所はウェールズってことはイギリスですが、シスレーはイギリス人ですからね。
表現はモネと共通性を感じますね。
ポール・シニャック 「コンカルノー港」
シニャックの海景、ブリヂストン時代からお馴染みの作品。
モザイク画的な煌びやかさがあります。
シスレーの作品から一つ…
アルフレッド・シスレー 「サン=マメス六月の朝」
ブリヂストン時代からお馴染みですが…朝の光、空気感が存分に表現された良い作品だと思います。
そういえば、同時期に近所の美術館で特集展示されている1907年のモネの睡蓮と共通する作品が…
クロード・モネ 「睡蓮の池」
画商の求めに応じて制作した連作の中の一枚。
4階に降りてくると石橋財団所蔵で印象派以外の作品が見られました。
パブロ・ピカソ 「腕を組んですわるサルタンバンク」
中学か高校の美術教科書の表紙になっていてよく覚えている作品。
いわゆる「新古典主義の時代」に描かれたピカソにしては写実寄り。
適切な描線からやはりピカソは画力高いと思います。
アンリ・ルソー 「牧場」
ブリヂストン時代から常設展示されていた作品。
画面右の丸い木、左側の並木と二頭の牛が生み出すリズム感が面白い画面。
ピエール・ボナール 「ヴェルノン付近の風景」
個人的に好きな画家ですが、どうしてこういう表現になるのかさっぱり分からないのがまた面白いです。
ガサガサ擦り付けるような筆致が興味深い。
日本人作家の名品も
岡鹿之助 「雪の発電所」
新潟県の山沿いに住んでいる人間にとっては非常に親しみを感じる作品。
絵具は厚みを持って塗られているわけでもないのに構成や表面感がカッチリしている不思議さがあります。
日本の近代洋画家の大家、藤島武二の作品もいくつか所蔵されています。
藤島武二 「黒扇」
重要文化財指定の作品。
構図バランスが絶妙。
粗い筆致ですが、ヴェールの白と扇・髪の黒の対比が印象的。
藤島武二 「東洋振り」
戦前に中国的なモチーフが流行った時期がありました。
この作品はその流れにのったものでしょう。
真横から人物を描くのはルネッサンス期に流行った構図ですが、東洋風の柄を強調した装飾的な画面ですね。
最後のコーナーはフランスのワインにまつわる挿絵の展示でした。
こんなきれいな冊子が配布されていました。
ミニ図録?
20世紀、フランスは自国産のワインのブランド化を進めるのに画家の作品を使っていた…という話。
例えばラウル・デュフィは…個人的にタブロー作品は表現が軽く感じてしまいあまり好みではありませんが、イラストレーションとしての表現でははまっているなぁ…という印象です。
この展示を見ると、フランスではワイン醸造産業を輸出できるものとして、文化的背景を持ってPRし続けてきたことがよく分かります。
日本の状況を振り返ると…太平洋戦争中から戦後にかけては、特に日本酒は少ない原料からいかに多く供給するかが重視されていたように思います。
それ故、醸造した原酒を水で薄めてアルコールや糖類を添加して量を増やしてきました(それは現在でも残っています)
そして、国家としては税源として重視して文化的にはどうでもいいという扱いだったわけで、現代のビール・発泡酒問題はそうした背景があるのでしょう…個人的には嘆かわしい限りです。
こうした視点での展示も面白いものです。
振り返って、アーティゾン美術館は旧ブリヂストン美術館と比べて床面積も何倍にも拡大して、大変充実した展示内容になったと思います。
楽しめました(´∀`)
出品作品リスト(PDFファイル)
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