小林武彦著
講談社現代新書
2021年4月
終戦記念日だ、お盆だ…さらに新型コロナだと…生と死を意識することの多い2021年の8月ですがこのような本を読みました。
著者は遺伝子、ゲノムを研究されている生物学者とのことで、生物学における「死」はなんなのかが語られています。
読む前からその答えは薄々分かってはいました。
生物が環境に適応するために新たな遺伝子を持った個体に世代交代していますので、古いものは「死んで」地球上から退場し、時に自らを新しい世代の栄養分とするわけですね。
本書の面白いのは、天文学的な大きな話が導入部になって、宇宙の中の地球でどのように生命が発生したか(仮説ですが有力な推論)、その後遺伝情報を軸に生物の進化をたどるという展開になっているところです。
さらに老化と若返りの問題に触れ、「死」はプログラムされていてそのメカニズムも解き明かします。
しかし、ヒトだけは周囲との関わりと感情を持つところから「死」を恐れるようになった。
最後はヒトが作り出した「AI(人工知能)」という「死なないAI」とヒトの関係はどうなるのか?という考察まで進みます。
途中の遺伝情報の組み換えメカニズムなどやや難解と思われる個所はありますが、総じてわかりやすい語り口でスラスラ読める文章なので、中学生くらいでも楽しめる本ではないでしょうか。
「死生観が一変する」かは読者があらかじめ持っていた情報量によるとは思いますが。
この本を読んで、自分が本格的に老いた時に次の世代に何ができるのか?「老害」などと呼ばれないか…ちょっと心配になりましたね。
誰かの役に立たなり生きている価値もないとなれば、死んでしまえばいいと思っていましたが…本書によって、より具体的な感覚になりました。
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小林武彦氏の著書
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