玉木俊明 著 文春新書
2021年4月20日初版
昨年だったか…「NHKスペシャル 戦国~激動の世界と日本~」という二回シリーズの番組がありました。
本書はその番組で取り上げた内容と被りつつも(著者が番組を意識していたかは不明ですが)さらにその背景を深掘りしたかのような構成になっています。
「16世紀」1500年代は日本では戦国時代、ヨーロッパでは宗教改革でプロテスタントが起こりカトリックと戦争しまくり…一方オスマン帝国は最盛期で地中海を押さえていた。
前の15世紀から始まった大航海時代の流れで、ヨーロッパ人がアジアに進出。
その主役になったのがカトリックのイエズス会で、彼らはキリスト教布教しながらヨーロッパの武器を売り込み…日本にも火縄銃が伝来し織田信長が世界初の大量運用したのでした。
自分の記憶では、学校の科目としての歴史は「日本史」「世界史」と完全にセパレートされていて、日本史の中で断片的に外国との関係に触れるという感じでした。
日本は島国で、比較的国内で完結していることが多いような感覚が影響しているのでしょう。
国の垣根がかなり薄くなった現代でもその感覚は残っているような気がします。
しかし、最近の歴史に関するニュースを見ると古代から日本は海外との交流、影響があったことが分かってきました。
特にこの16世紀に全世界的な交流が始まり、日本もそこに組み込まれていったんですね。
信長と秀吉は積極的に海外との交流(交易)とそこから得られる利益を重視していました。
ですが…秀吉はイエズス会がその布教先の支配をも目論んでいたと察すると伴天連追放令を発し、侵略を防いだという歴史になるのでした。
学校の教科書だとかなり唐突に伴天連追放!という言葉が出てきて、その背景についてはほとんど触れられません。
学校で歴史を習っていたころ、皆さんも疑問を感じなかったでしょうか…南米のインカ帝国が滅ぼされたのに日本のような小国が白人支配から逃れられたのか?
それは戦国時代の日本は鉄砲をアッという間に国内で大量生産してしまう軍事大国になっていたからだというのです。
実は当時のヨーロッパ(スペイン、ポルトガル)は国力はまだまだで、中国(明)に至っては入国すらままならない。
相手が弱ければ強く出て支配もするけど、日本支配はあきらめたというのです。
その後江戸時代にはキリスト教布教や侵略など興味がなく交易できればいいというオランダに限って付き合うようになったわけです。
弱肉強食的な国際関係に日本もさらされていて、秀吉や家康もそれを意識していたことがわかります。
この弱肉強食の世界は「平等」「人道」と言われる21世紀の現在も続いていると思うべきです。
どうも日本の学校教育はこうした現実から目を逸らしているような気がしてなりません。
ちなみに本書では触れていませんが16世紀は美術史上はルネサンス後期~マニエリスム。
発注主は教会主体→王侯貴族主体と変遷しますが、これは政治が宗教勢力優位から世俗権力優位になっていったことが関係します。
ハプスブルク家関係の美術展でよく登場する君主としてはカール五世、フェリペ二世、彼らを描いたのがまずはティツィアーノが筆頭でしょう。
やはり16世紀において美術の最先端はイタリアですね。
神聖ローマ皇帝カール五世
スペイン王フェリペ二世
宗教改革を始めたルターを描いたのはルーカス・クラナッハ
マルティン・ルター
16世紀、フランシスコ・ザビエルの出身地スペインではキリスト教の主題を神秘的に描いたエル・グレコが活躍。
「オルガス伯の埋葬」
という具合にルネサンス後、色々な傾向が出てきて興味深い時代ですね。
最後、脱線しました(・´з`・)
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今回ご紹介した一冊
(Kindle版もあります)
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