生前売れた絵はたったの一枚であったが、今やみんな大好き「ゴッホ」
日本でも様々な切り口で何度も展覧会が開催されています。
全開は2年前2017年に日本美術との関連を中心に構成した展示がありました。
ゴッホ展 巡りゆく日本の夢(東京都美術館)
今回2019年10月~2020年1月の展示ではオランダ時代ハーグ派からの影響とフランス印象派からの影響にフォーカスしています。
特にハーグ派の紹介に多くのスペースを割いているのが特徴的です。
オランダ時代のゴッホの代表作と言えば1885年の「ジャガイモを食べる人々」※本展不出品
今回はそのリトグラフ版が展示されていました。
自信作であったが故、広く知らしめたかったのであろうと思われます。
面白いのは当時交流していたハーグ派の画家との関係性を示す展示もあったという点です。
初期の茶と黒を基調とした色使いは、並んで展示されていたハーグ派の作品を見れば…なるほどそうなるのもむべなるかな…と納得です。
たとえばアントン・マウフェの「4頭の曳き馬」
実際に見るともっと暗く全体に茶色基調に見えました。
おそらく、ちゃんと素描の技術を習得したハーグ派の作家たちにとってゴッホは基本の出来ていないアマチュア画家に見えたのではないかと思います。
それ故、ゴッホの作品に対する酷評も展示の中に含まれていました。
農民の真の姿を描きたいのはわかるが…ちゃんと描けていない…というような文書の内容だったかな。
「疲れ果てて」1881年(素描)
主題の表現はできていますが…確かに腰から脚にかけての描写は正確性に欠けています。
この辺は現代的なデフォルメを認めるかどうかといったところが評価の分かれ目なのかなと思います。
オランダ時代、これは「描けてるな!」と思った静物画
「器と洋梨のある静物」1885年
セザンヌ的な存在感があるように感じました。
今風に言うと「人間的に問題のあった」ゴッホはオランダにはいられなくなったので、フランスにやってきます。
そこで真に近代的な表現に目覚める…という流れなのですが…いきなりガラリ!と変化するのではなくオランダ時代の色遣いを引きずりながら徐々に画面が明るくなっていくところも展示されていました。
「パリの屋根」1886年
シルバー・グレー基調の色使いがまだオランダ時代を引きずっているように見えます。
そして、有名な「タンギー爺さん」の最初期の肖像
バックに浮世絵を配した有名な画面にたどり着く以前の作品(1887年)
平面化、様式化される前におそらくモデルを目の前にして描かれたのではないかと思われる具体性があります。
筆触分割が明確にみられる作品 ↓
「アニエールのヴォワイエ・ダルジャンソン公園の入口」1887年
印象派のそれとは趣が異なりますが、生き生きした色彩のタッチが踊っています。
おそらく浮世絵の色面構成を消化して出てきた作品 ↓
「麦畑」1887年
黄色を基調として青と組み合わせて画面が構成されています。
やっと独自のスタイルが確立したという感じです。
あと一つ重要だと思ったのが、盛り上がった厚い絵の具のタッチが実はアドルフ・モンティセリの影響だという内容でした。
アドルフ・モンティセリ「陶器壺の花」1875-1878年頃
印象派が表舞台に出てきた頃、ゴッホがフランスに来る直前の作品。
確かに厚塗りゴツゴツの絵肌が特徴だという認識はありましたが、ゴッホに影響していたとは!
ハーグ派も印象派もそこまでゴツゴツ絵肌の印象はないので、モンティセリがルーツだよと言われれば納得感高いです。
この辺で今回の展示の目的は達成されたように感じました。
最終期の作品もありましたが…「なるほど、こうなるよね」という結末。
「糸杉」1889年
サン・レミ精神病院に入院した時に描かれた作品。
面白いことに今回の展覧会において最終期の比重は高くないです。
むしろ最後の作風が出来上がる前にフォーカスしたところが面白かったですね。
ただし、会場となった上野の森美術館はそれほど面積が大きくないので、割愛された作品が何点もあったようです。
そこが残念ですが、巡回で神戸に行くときにはフルで展示されるようです。
関西在住の皆さんはぜひ見てほしいですね。
注目の(?)物販
なぜかコラボしているスヌーピー
サンリオのキャラも!?
さらにベビースターラーメンも!
人気作家の展示ですので、混雑覚悟して観覧してください。
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