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11月16日国立西洋美術館に「ハプスブルク展」を観に行ったわけですが、同時に版画素描展示室でやっていたのがこのゴシック写本の特集。

医学者の内藤裕史氏が収集してきたコレクションが西洋美術館に寄贈されたとの説明がありました。
ヨーロッパにおいては15世紀中ごろグーテンベルクが活版印刷を始めたというのは有名なお話ですが、それ以前は、手書きによる写本が膨大な時間をかけて作られていたわけです。

日本でいえば、奈良時代~平安時代の写経作品が近いイメージでしょうか。

写本そのものは、現在の定義による紙ではなく獣皮紙に色数の少ないインクで丁寧に書かれています。
時に部分的に金が使われ、豪華さを持たせているものもありました。


このコレクションの特徴は、とんでもなく貴重な(入手には高額な費用がかかる)完本ではなく、切り離された1ページを収集していることだそうです。
写本の文字と装飾の図柄を造形的に見ることができます。


13~14世紀のものが中心で、文字は多分ラテン語で何が書いてあるかさっぱり分かりませんが、線画は独特の味わいがあります。

以下、個人的に面白いと思った数葉。

行間の植物っぽい図柄、横向きに描かれた人物、どこかユーモラスな鳥がいい味。
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もっと写実的(?)に描かれた鳥もありました。
裏側が少し透けていますが、それも獣皮紙が貴重であったことを感じさせます。
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こちらは縦長の大作。
元々どのような装丁の書物であったのか?
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こちらも縦長の大画面。
現代でいう「図鑑」「辞典」みたいなものでしょうか。
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展示の中には、ファクシミリ版という複製によって書物一冊を再現したものもあり、当時の面影をイメージできます。
携帯用の小型の本もあったようです。

ヨーロッパというと、ルネサンス以降に目が向きがちですがこうしたゴシック期の作品もまた違う味があります。
「書物」という情報媒体の価値がとんでもなく重かったことを想いながら見させていただきました。
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