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2019年10月19日から開催中の展示です。
どういうわけかメインの看板がやや小さい( ゚д゚ )

14~15世紀のマクシミリアン1世以降の帝国統治者としてのハプスブルク家のコレクションをズラリと並べた内容です。
絵画以外に、工芸品、彫刻など豪華絢爛な王族の世界を見ることができます。

会場は地下に空間を拡げた新館。
エントランスから一つ下ると大きなビジュアルがあり、展示室への入り口に続きます。
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展示構成はおおむね時代順に並んでいますので…最初はマクシミリアン1世の治世。

そのマクシミリアン1世が実際に着用していたというものも含めて数点の甲冑が展示されていました。
甲冑1492
ロレンツ・ヘルムシュミット「神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の甲冑」1492年頃
これ以外もそうなのですが…どれもシルエットが細い!
特にウエストが極端に細いものがあり、本当に着用できたのだろうか?と疑問に感じるくらいでした。

同時代で最も重要な画家の一人、A・デューラーの作品。
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「ヨハネス・クレーベルガーの肖像」1526年
デューラーの油彩画を見られるのはかなりレアです。
独特のえぐるような表現がスゴイ!


この時代に限りませんが、絵画作品(特に王族の肖像画)は「その当時評価の高かった」画家の作品であり、現代において「超一流」と評価されている画家とは限りません。
「超」のつかない一流の作家の作品がいくつもありますが、これも歴史をたどるという展示の目的に対しては十分な内容といえるでしょう。

それでも…デューラー、ジョルジョーネ、ベラスケス、ティツィアーノ、レンブラント、フランス・ハルスといった豪華な面々の作品が見られました。

ハプスブルク家が治めていた、スペインの文化的な最盛期(?)17世紀…本展示のメインビジュアルにも使われているベラスケスの肖像画。
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「青いドレスの王女マルガリータ・テレサ」1659年

政略結婚のお見合い写真的な作品です。
確か私、20年以上前にウィーンで見たことありますね。
フワっとしたタッチが集まって的確な表現になっているベラスケスの技が見られます。
200年後の印象派を先取りしています。

今回、すぐ近くにドレスを緑にアレンジした他の画家による模写も展示されていましたが…技量の差がはっきり表れて残酷なほどでした(´Д`)

また、今回の展示の中には1984年同じ西洋美術館で見た作品が再度来日したものもありました。
高校生の私が初めて見た本格的なヨーロッパクラシック絵画の展覧会「ウィーン美術史美術館展」以来
35年ぶりです!
ティントレット
ティントレット「甲冑をつけた男性の肖像」1555年

ちなみに1984年に来日した王女マルガリータ・テレサの肖像は今回より小さい頃に描かれた(5歳?)ものでした(今回来ていません)
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ディエゴ・ベラスケス「王女マルガリータ・テレサ」1656年
1984年当時、華麗な筆さばきに感動したんですよね。


ネーデルラントを治めたレオポルト・ヴィルヘルムが収集した絵画は粒ぞろいで、かなりの目利きであったことがうかがえます。
ヴェネツィア派、ヴェロネーゼによる生首系の作品も…よく描けてます。
ヴェロネーゼ:ユディット
「ホロフェルネスの首を持つユディット」1580年頃

18世紀、その時代を表す肖像画の例
皇帝フランツ1世7歳
ヨハン・ゾファニー「7歳のオーストリア大公フランツ」1775年
少年に権威を持たせるため周囲に小道具を配し、堂々たるポーズをとらせていますね。
あまり注目されない画家ですが、技量は高いです。

marie
ヴィジェ=ルヴラン「フランス王妃マリーアントワネットの肖像」1778年
アントワネットお気に入りの女流画家ルヴランによる作品。

アントワネットがハプスブルク家出身だったので、この作品がウィーンに残っているとのこと。
盛ったヘアスタイルや服の装飾など女性ならではの表現が特徴ですね。

そして、個人的に印象深かった肖像作品。
Fヨーゼフ1世
ヴィクトール・シュタウファー「オーストリア=ハンガリー二重帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の肖像」1916年頃

時代は20世紀、昔の華やかなものではなく質素な制服をよく着ていたというフランツ・ヨーゼフ1世の容貌・人格を的確に表していると思います。
ずっと、皇帝や王族の「権威」を表現してきた肖像画が続いて、最後にこうした近代的な画面が出てくるとハッとします( ゚д゚ )
19世紀に写真が発明されたことが大きく影響しているのでしょう。


通して見ていくと、近世ヨーロッパの歴史を概観したような感覚になります。

我々は日本史の印象が強くて、日本の近世というと…室町時代、戦国時代から江戸時代になって19世紀になって一気に近代化しますが…

ヨーロッパはルネッサンス期前後まで小国家の集合が多くて、バロック期に現代の国家単位にまとまり始め、18世紀に科学技術等の進歩から合理的な発想が拡がり…

ナポレオン時代になって国民が戦争に動員されるようになると王族の縁戚関係で国境線が変わることもなくなり、第一次世界大戦後にはハプスブルク帝国は完全に消滅…という流れでしょうか。


そして、芸術といえども誰かがお金を出してくれなければ成り立たないわけで…近世の長い期間王族・貴族が支えてきたものが、徐々に裕福な市民も参加してきて19世紀、20世紀とどんどん庶民化していって現在に至るのだなぁ…と思ったのでした。


さて、注目の(?)物販

こうしたクラシックな美術展では、そのままビジュアルを使うと現代のアイテムとは違和感が出てしまうことが多いのですが…この展示では洒脱なタッチのイラストにアレンジして上手くはめています。
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アイテムも流行の(?)パーカーがあったりしてw
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図録も王族にふさわしい(?)豪華な装丁です(買わなかったけど)


「ハプスブルク展」出品リスト

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