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「カッコいい」…「格好よい」ではない。
この言葉は日本で戦後一般化したのだといいます。

この本は作家の平野啓一郎氏が「カッコいい」とその周辺の言葉をめぐる様々な概念・現象を読み解いていきます。
正直、あまりに多くの分野・時代に話が及ぶので冗長な印象も受けますが、これはこれでややもすると掴みどころのなくなる「カッコいい」を浮き彫りにするには必要な作業だったのかもしれません。

気の短い方は第10章にすべてダイジェストで書かれていますので、先にそちらを読んで特に興味をひかれた部分に対応する章を読んだりすると良さそうです(実際著者もそう書いています)


さて、私個人的な本書のヤマ場は…第3章「しびれる」という体感…でしょう。
19世紀の芸術の世界で起きた「体感主義」とでもいうような流れ(美術においてはドラクロワに代表されるロマン主義)は「カッコいい」の正当な源流かと思います。

言い方としては「しびれる」「衝撃」「痙攣」「戦慄」…色々ありますが、理屈・論理ではなく身体で感じるものに価値を見出すわけです。

なんだか…「考えるな、感じろ」(Don't think, feel)を想起しましたね(本書にはそんなことは書いてませんが)
「機動戦士ガンダム」を初めて見たとき、いい歳して私がNegiccoにはまった瞬間の感覚も「それだ!」と思いました。


もう一つ「カッコいい」を政治的に悪用(?)する危険性にも言及しているのもポイント高いです。
不満がたまった社会において、突破口を感じさせる「カッコよさ」は非常に危険です。

仮想敵を想定してそちらを「ダサい化」して、自らは徹底的な演出で「カッコよく」見せる。
そうすることで論理的・理性的に判断しなければならないものを、感情の盛り上がりで多くの人を扇動することで多くの戦争が起こってきたのでしょう。


「カッコいいなんて、人それぞれじゃない!」
そんなことを思う方もいるでしょうが、本書を読めばどうして「人それぞれ」になってしまうかがわかると思います。

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