書店でふと目に留まった一冊。
第二次世界大戦でアメリカ陸軍の主力戦車、M4シャーマンのモデリングガイド。
モデルアート社刊です。
先日の記事でご紹介したのはジェット戦闘機のF-4ファントム、今回は戦車のM4です。
偶然4のつくものを取り上げたわけですが、型式に4のつく兵器といえば…ドイツのⅣ号戦車とか、日本陸軍の四式戦闘機疾風とかありますし、米海軍だとF-4Fワイルドキャット、F-4Uコルセア、A-4スカイホークとかいろいろ出てきますね。
日本陸軍の四式中戦車は…微妙ですが(´Д`)
脱線しました…さて、本書の中身は…M4の各型式が模型とイラストで解説されています。
不鮮明な写真よりこうした表現の方が形の違いがよくわかるような気がします。
M4と言えば…異常なまでのエンジンバリエーションでしょう。
初期型は航空機用の空冷星形エンジンを搭載していたり(それ故腰高な車体になっている)、もちろん戦車用設計のエンジンもあればバスのエンジンを5機束ねた30気筒なんてものも!?
なりふり構わず戦車の数を揃えるため、あらゆる手段を使うアメリカ的な合理精神なのでしょうか。
多様なエンジンを調達できてそれらをちゃんと運用できる、細かな規格の統一など…そのあたりが工業力の高さということなのでしょう。
ドイツやイギリスも優れたエンジン技術を持っていたと思いますが、技術のある企業はほんの一握りで、M4はアメリカの企業が「よってたかって」生産されたわけで、自動車工業のすそ野がとび抜けて広いことがわかります。
日本はドイツ製の航空機エンジンDB601をライセンス取得して再現しようにも上手くできないことがあったくらいで、基礎工業力が劣っていた一例ですよね。
(一方、アメリカはP-51用にイギリスのRRマーリンエンジンを自動車で有名なパッカードにライセンス生産させたところ、英国工業規格を米国規格にサラっと修正して問題なく作ってしまったわけです)
あと…脚回り、サスペンションの形状を各社が発売しているプラモデルのパーツを並べて見るページが興味深いです。
こうした模型は適度に省略が入るので、形状の特徴がかえって見えやすくなるのだと思います。
サスの構造が表に見えるのもこの戦車の特徴ですが、前半の垂直ばね(VVSS)、後半の水平ばね(HVSS)どちらも整備しやすそうな形状です。
接地圧分散を重視したドイツのパンター以降のサス・転輪とは大違いです。
さて、面白いのがブローニングのM2機関銃の比較。
近年のキットはこんな小さな部位も何分割かにして、ものによってはエッチングパーツまで!
もちろん、模型の作例も多数掲載されていて、最近のテクニックが見られます。
鋼鉄の質感、溶接跡や鋳造の表面感を出すテクニックや、ウエザリング(いわゆる「よごし」)など非常に興味深いです。
ジオラマでの展示例も
樹木などヨーロッパの自然物の表現も良いですが、この作品はフィギュアの塗りがまたイイ感じです。
ノルマンディーの家屋を表現したジオラマの作例。
現代はネットで容易に資料が入手できるのでいいです。
私が一番模型を作った70年代~80年代は…なんにも無かったもんね(・´з`・)
個人的に好きな車体も砲塔も鋳造の初期型。
丸っこくていいです。
それにしてもこんなデカイパーツを鋳造で作ってしまうアメリカってどうなってんの?!…と言いたくなります。
塗装では二色迷彩も珍しいですね。
…というわけで、忙しくて模型を作る時間もないけど、眺めているだけで楽しい一冊でした。
M4シャーマンの全般について解説した動画
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