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2019年6月に企画展の「松方コレクション展」を見に行ったわけですが…普段は常設展で展示されていた作品が多数企画展にまわったことで、新館の常設展のスペースではフィンランドの女性作家の特集が展示されていました。
フィンランドとの外交関係樹立100周年記念の展示とのこと。

このモダン・ウーマン展と常設展は一部を除き撮影可能でしたので、額縁付きで画像紹介しましょう。

展示のメインビジュアルはシャルフベックの「占い師(黄色いドレスの女性)」
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シャルフベックの名前は聞いたことありましたが、他の作家は全然知りませんでした。
今回の展示では19世紀後半から20世紀半ばにかけての作品が出ていました。

最初は19世紀末期から活躍したマリア・ヴィーク
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「ボートをこぐ女性・スケッチ」1892年
19世紀的、自然主義的な表現です。

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ヘレン・シャルフベック「少女の頭部」1886年
シャルフベックも初期においては印象派的というか自然な見たままを表現しているようです。

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ヘレン・シャルフベック「木こりⅠ」1910-11年
20世紀に入ると、セザンヌ的というか線や色面が単純化されて独自のスタイルになっていきます。
この方…線の思いっきりさが魅力かな?とも思います。

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エレン・テスレフ「自画像」1916年
この人は色使いが独特で強いコントラストは排してこの作品では青基調で画面が組み立てられています。

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エレン・テスレフ「イタリアの風景」1900-1910年
フランスのナビ派を想起させる色使いの風景画です。

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エルガ・セーセマン「花売り」1946年
こうした表現主義的な作品もありました。

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版画、素描も展示されていました。
が…実はそれだけではなくて、修業時代の本当に初期の作品もあり女性芸術家の教育環境を知るという側面もありました。


そして、本館の常設展で今回気になった作品など。
常設展もなにげに好きなのです。

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2018年度収蔵作品。
ルーカス・クラーナハ(父)「ホロフェルネスの首を持つユディット」

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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」1560-1570年頃

生首と美女という組み合わせで、ユディットとサロメの画題はルネサンス後期からバロック期にかけてかなり流行ったようです。
現代でもホラー映画、スプラッター映画を見たくなる感覚と通じるものがあると思います。

ドイツ人のクラーナハとイタリア人のティツィアーノではここまで画風が違うというのも面白いですね。

もう一点生首系の作品
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グエルチーノ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」1650年頃
バロック期の作品なので、スポットライト的な光や天を仰ぐ視線が特徴ですね。


生首シリーズはこれくらいにして、毎度「これはイイ!」と思う作品
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ヨース・ファン・クレーヴ「三連祭壇画:キリスト磔刑」16世紀前半

ファン・アイク以来のフランドル絵画に見られる常軌を逸した精緻さで描かれています。
遠景が細かい!!( ゚д゚ )
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描かれた時代からするとかなり個性的な作品だと思ったのが…
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ヨアヒム・ブーケラール「十字架を運ぶキリスト」1562年

16世紀フランドルの画家による作品ですが、この時代の過剰な几帳面さはなく色彩も黒っぽい。
構図自体は前景から無理やり(?)遠景につなげるあたりフランドル的かもしれませんが…イタリアの画家の作品とか見ちゃったのでしょうか?


珍しいところでは精緻な写本の「内藤コレクション」から数点展示されていました。

ホントに精緻です!画像ではわかりませんが、一部金が使われて光の具合でキラリと光ります。
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13世紀フランス「ラテン語聖書断片:イニシャルP」


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14世紀フランス「ラテン語聖務日課書断片:イニシャルD」


バロック期の肖像画の名品も
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アントニー・ヴァン・ダイク「レガネース侯爵ディエゴ・フェリーペ・デ・グスマン」1634年頃
ヴァン・ダイクはもっと華やかな画面も作れるはずですが…モデルがスペイン人ということで、黒基調の組立てになっています。
まるでベラスケスみたいな画面ですね。


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コルネリス・ド・ヘーム「果物籠のある静物」1654年頃
この方、父親の方が静物画家として有名だそうなのですが、この作品もよく描けています。
皮をむきかけたレモンの描写が目を引きます。


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エドワールト・コリール「ヴァニタス-書物と髑髏のある静物」1663年
虚栄を示すのが「ヴァニタス」という画題。
髑髏が虚しさを示すモチーフですが、ガラスから透けて見える描写など画家の技量を誇示するような画面です。

そして、よく見ると非常に面白い作品
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ダフィット・テニールス(子)「聖アントニウスの誘惑」17世紀
この画題は様々な幻覚でアントニウスを惑わそうとする場面であり、超常現象的なモチーフを思いっきり使えるため画家のイマジネーションがいかんなく発揮されるわけです。

よく見ると、魚類のような爬虫類のような生物にまたがった小さな魔物が空中で槍のトーナメント試合のようなことを行っています。
こんなモチーフもヒエロニムス・ボス以来の伝統なのでしょうか。
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魔物とはうって変わって、オランダ人画家による海景画
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ヤン・ファン・ホイエン「マース河口(ドルトレヒト)」1644年
見渡す限りさざ波が拡がる海面に多くの船舶が浮かんでいます。
色味のほとんどないグリザイユのような画面ですが、光の加減によってはこのような見え方になったのでしょう。


18世紀の画家、ティエポロの技が光る天井画の習作(あるいは縮小版ひな形)
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ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ
「ヴィーナスによって天上に導かれるヴェットール・ピサーニ提督」1743年頃
色面だけではなく、要所に線状のタッチを入れることでうまく表現しているところが実に職人的。


最後に…非常に独自性の高い作品(しかも巨大!)
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ヨハン・ハインリヒ・フュースリ
「グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ」1783年頃
イギリス人画家かと思っていましたが、イギリスで活躍したスイス人画家でした。

自然主義とは真逆な立場で、物語・神話などを題材に時に非常に怖い表現を使った画家です。
この作品でも「肉体とはこうした筋肉の集合体である!」とでもいう勢いで身体がキレまくっています。
コミックでいうと刃牙(バキ)っぽいというか…(・´з`・)
目をむく馬の表情もなにげにツボw

見やすい規模で西洋美術を楽しめるのが常設展の良いところだと思います。

今回の状態での展示は9月23日までのようです。

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