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いわゆる”ファーストガンダム”の物語では設定上のみ、もしくは回想でのみ語られてきた前史を、稀代のアニメーター、安彦良和の絵で描くシリーズです。

この第6巻をもって機動戦士ガンダム第1話の直前までを映像化、一応完結となりました。

1~6巻まで見てきたわけですが、シャアとセイラ(キャスバルとアルテイシア)の生い立ちから始まりスペースコロニーに住む人々と地球上に住む人々の対立が次第に激化して戦争に至る流れを描いています。

一定割合でロボットの戦闘シーンを入れなければならなかったTVアニメに対して、本シリーズはその制約がない分ドラマ部分を思いっきり描写できています。

ただ、あまりに戦闘シーンが少ないと(せっかくガンダムなのにメカアクションも見たいな~)なんて思ったのも事実。
その点、今回の6話目は前半でルウム会戦がたっぷり描かれていて、かつて見ていたガンダムに近いバランスで楽しめました。

個人的に一番評価したいのは、ミノフスキー粒子でレーダーが無効化される様子が初めて詳細に描写されたことでしょう。
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ドズル艦隊が転進してミノフスキー粒子を散布すると、連邦軍側艦艇のCICにあるレーダースクリーンが次第にぼやけたような状態になり、ついには目視で見張らなければならなくなるという流れが段階的に示されました…なるほどです。

この辺、ナレーションやセリフで済ませてどんどんストーリーを追っかける富野監督に対して安彦監督はねちっこくリアリティを追求します。
単純に二人の個性の違いなのか、安彦さんは絵描きゆえに具体性にこだわってしまうのか…どっちなのでしょう。

あと連邦軍艦隊に突入するときのシャアのセリフ「ひざまづけ…神よ!」ですが、なんだか安彦良和的かなと思いました。
一言で説明できないのですが、富野さんからは出てこないような気がするのです。


さて、前半シーンは艦隊戦ですので宇宙艦艇がたくさん出てきます。
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今時はメカニックはほとんどすべてCGらしいので、正確無比な形のままぐるんぐるんといくらでも動かせるようですね。

この辺は宇宙戦艦ヤマト2199の描写が影響しているのは明らかでしょう。

ちなみに爆炎をピンクや黄色で鮮やかにすると、ガンダム(というか安彦アニメ)っぽくなりますw
(あと、遠景の爆発は三日月形になって消えていく)


モビルスーツのアクションは最新のガンプラに見られるような”ちゃんと動ける関節”を備えたCGモデルで、無理なく動かしていますが…昔の手描きで表現された”生き物のような”躍動感はありません。
良くも悪くも時代とともに一番変わった部分でしょうね。


背景美術で感心した表現は、ジオン公国ザビ家の宮殿。

これまでの描写では70年代ロボットアニメの典型的な悪の城といったデザインでしたが、今回は生物的なフォルムの超モダンアート的なカテドラル風建築物として描かれています。

ガウディの建築がもっと極端になったと思えば、こういうのもありかな?と思わせますね。
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TV版機動戦士ガンダムにおけるジオン公国首都ズムシティw
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でもって、私の考える安彦アニメが昔から持っている良さは、カッコよいわけじゃないけど味のある男性キャラ(おっさんキャラ)が多数出てくるところです。

とにかく今のアニメはキャラクターが全員キレイ過ぎるんです!

男はイケメン過ぎ、女は美少女過ぎるんです!

いくら架空の物語とはいえ、世の中そればっかじゃねーだろ!ヽ(`Д´)ノ!とね。

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連邦軍戦艦のブリッジ内のシーンですが、おっさんばかり!

こういうキャラクターの描き分けで安彦さんの右に出るものはいないのではないでしょうか。

ファーストガンダム中盤のオデッサ作戦前後で、スパイだったエルラン将軍と副官ジュダックも”癖のあるおっさんキャラとして登場しますし。
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この二人…すでに××で、捕虜になっていたレビル将軍脱走に○○して…というわけで(あんたらこんなことにも関わっていたんかい!)と叫んでしまいそうになりますね(´∀`)


味のあるおっさんとして、おなじみシャアの副官ドレンも登場。
もっとふてぶてしくても良いような気はしましたが。
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マ・クベも重要な役どころで登場です。

ファーストガンダムでは、骨董趣味の変人で陰険な策士なのにいきなり水爆を使ったりと、やや支離滅裂な印象もありましたが、地球で人類が築いてきた伝統文化への理解が深い文化人的なキャラクターになっています。

声を当てていた塩沢兼人さんも何年も前に亡くなられて声はどうなっちゃうのだろう?と思っておりました。
が…山崎たくみさんという声優さんが演じていますがなかなかイイ感じですね。
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おっさんばかりじゃなくて、女性キャラも。
セイラさんは終盤に登場し、ルウムからサイド7へ移るいきさつが描かれます。

”お医者さんの卵”という設定もじっくり描写されています。

ただ声がね…潘めぐみさん(ファーストでララァ役の潘恵子さんの娘)なんですが、井上瑶さんの声が刷り込まれている私世代には違和感がどうしてもぬぐえません。
演技はちゃんとやられているとは思います。
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思えば、1979年のTV放送から40年近くが経過して当時声をあてていた声優さんも亡くなった方が何人もいますものね。

先ほど触れたマ・クベの塩沢兼人さん、セイラの井上瑶さん、ブライトの鈴置洋孝さん、ナレーションや端役のほとんどをやった永井一郎さん…

それでも主要キャストのシャア、アムロ、カイ、ギレンがオリジナルの声優さんが演じているのは大きいと思います。
みなさん60~70歳代になっているのに、さすがプロですね。
当時と同じとはいかないまでも、今も生きた役を演じているように感じました。

セイラさんだけじゃ寂しいので
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水着のサービスショットを披露しているのはフラウ・ボウ。

昔から安彦さん一番のお気に入りキャラだそうで、上画像もポーズからして安彦原画かな?

あと、ファーストガンダムでのチビ3人組と水遊びシーンを彷彿とさせるシーンも
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水の絡んだ動きが上手いのも安彦良和さんの持ち味です。


最初にも書いた通りジ・オリジンのアニメ化プロジェクトもここで終了とのことですが、このクオリティでサイド7でのガンダム始動からア・バオア・クーの最終戦まで制作してほしいという意見もあるのは分かります。

ただ、約3年で6本のペースでしたのでオリジン本編をアニメ映像化するとなると…ねぇ…10年以上かかっちゃうのでは?
そうなると安彦良和さんやオリジナルの声優さんは大丈夫?って、失礼ながら思っちゃうわけです。
(年齢的にも60~70歳代だしね)

それに、ここまでは映像化が初だったわけですが、この先はファーストガンダムとして既に映像が存在しているわけで、具体的に制作するとなるとそれらとの違和感との闘いになるのではと思います。

元々は富野喜幸監督の作ったストーリー・演出ですが、再現するのは安彦良和という絵描きさんですから。

実現したとしても、おそらく私世代の人間にとっては見る方もその違和感との闘いになるでしょう。
あったら見るとは思いますが(´∀`)

儲かりそうだったら作っちゃうのかな…(´Д`)

※サンライズ「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」作品サイト

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