2018年6月17日、本当はエッシャー展を見ようかと思っていたのです。
この日はたまたまエッシャーの誕生日で特別講演会も予定されていて、朝から長蛇の列。
入るまでで50分待ちとのアナウンスがあり、早々に心折れたのでした。
都内開催の展示で比較的混んでなさそうな…「ルーヴル美術館展~肖像芸術~人は人をどう表現してきたか」に転進決定!
予想通り、待ち時間ゼロ!
早速凸です!
美術の展示でよくあるパターンは時代の古いものから新しいものへと移り変わりを見るという見せ方ですが、本展示はテーマ別でその中で時代は様々です。
古くは古代エジプトやメソポタミアで19世紀までの幅広い時間軸を網羅しています。
まずはプロローグとして棺につける(故人をイメージさせる)マスクが2点。
「棺に由来するマスク」エジプト新王国時代BC1391-1353
眼と眉は石を加工してはめ込んでいる精巧な作りです。
「女性の肖像」2世紀
エジプトで出土ですが、ローマが支配していた時代なのでポンペイの壁画とか彷彿とさせる板絵です。
よく描けていますね。
セクション1は「記憶のための肖像」として、神を信じる人間、墓碑に故人をしのぶ肖像、故人の高貴さを表現するものです。
ここでひと際目を引く不気味な彫刻が…
「ブルボン侯爵夫人、次いでブーローニュおよびオーヴェルニュ伯爵夫人ジャンヌ・ド・ブルボン=ヴァンドーム」1465-1511年
半裸の腹部にいくつかうごめくのは屍を食い荒らす虫、下腹部でとぐろを巻くのは露出した大腸とのこと(´Д`)
ペストが大流行した時代、身分が高かろうが低かろうが死は等しく訪れるという表現。
グリューネバルトのキリスト像を想起します。
故人の高貴さの表現として、かなり有名な作品
「マラーの死」1794年
ジャック=ルイ・ダヴィッドと工房
フランス革命期に活躍し、暗殺されたマラーをシンプルな構成の中に神々しく表現した作品。
ぱっと見たとき「あれっ?思ったより密度感がないなぁ」と感じたのですが…どうも教科書等にのっていた原作はベルギーにあって、今回やってきたルーブル所蔵の本作は工房で複製されたものということだそうです。
セクション2は「権力の顔」…古代からナポレオンまで権力者の表現です。
「アレクサンドロス大王の肖像」2世紀
(BC340-330頃リュシッポスの原作に基づく)
一般的に「アレキサンダー大王」というと、この顔を思い出す人も多いのでは?
カラカラ帝の像もありましたが、なんか石膏デッサン思い出しますよね。
また、教科書によくのっているリゴーの太陽王ルイ14世の公式肖像画(工房作)とかも。
そして時代が下ってくるとナポレオンです!
「アルコレ橋のボナパルト1796年11月17日」1796年
アントワーヌ=ジャン・グロ
これは颯爽と旗をふっている全身像の習作。
旗はアウトライン程度で上半身・顔の表現に焦点が絞られていてかえって近代的な画面になっているように見えます。
「フランス王太子、オルレアン公フェルディナン=フィリップ・ド・ブルボン=オルレアンの肖像」1842年
ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル
7月王政のルイ・フィリップ王の王太子の肖像です。
芸術にも理解があり軍事的にも優れ、アングルも敬意をもって描いたようです。
ただ、この絵の完成直後1842年に馬車の事故で亡くなっています。
この作品を見ていたとき、隣で女性客の方が「写真みたい~」と言ってましたが…顔こそアングルらしい写実の極致みたいに見えますが、恐らく腕などは実際より引き伸ばされ優雅さを強調していると思います。
エル・グレコ的かもしれません。
セクションの間に「幕間劇」として携帯可能な小さなアイテムに表現された肖像が展示されていました。
このミニアチュールはすごいです。
さすが国王向けの作品と言うところでしょうか。
歴代国王と王族、有名宰相、有名文化人まで精緻な表現のエマイユです。
セクション3は「コードとモード」…「コード」とはドレスコードという言葉もある通り、その場や人の地位に見合った姿形だし、「モード」は時代によって移り変わるスタイルです。
このセクションは服飾史的な性格もあります。
「赤い縁なし帽をかぶった若い男の肖像」1480-1490年頃
サンドロ・ボッティチェリ
15世紀の上流階級の男性像ですが、意外と現代的な服装に見えますね。
女性の肖像画の目玉としては
「女性の肖像(通称”美しきナーニ”)」1560年頃
ヴェロネーゼ
誰を描いたか不明で色々な説があるそうですが、衣装の青が非常に美しく装飾品も豪華で、それが過不足なく表現されている作品です。
ヴェネツィア派的な柔らかな絵の具づかいですね。
ヴェロネーゼ、いいなぁ…と思っていたら、しれっと(笑)レンブラントが!
「ヴィーナスとキューピッド」1657年
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン
レンブラントが事実婚の妻と子供をヴィーナスとキューピッドに見立てて描いたらしい作品。
当時の服装ですが、子供にはキューピッドの羽を描き加えてギリギリ神話風にしています。
家族愛がにじみ出る画面ですね。
…で、これまたしれっと今度はゴヤが出てきます。
「第2代メングラーナ男爵、ルイス・マリア・デ・シストゥエ・イ・マルティネスの肖像」1791年
フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス
調べてみると1792年にゴヤは大病で聴覚を失い、その後の作品は凄みを増してくるのですが、その前のまだ柔らかさのあったころの作品です。
気に入らない大人の肖像だと、人格を暴き出すような容赦なさを発揮するゴヤですが、子供の肖像は好意的に描いていますね。
あと、展覧会公式サイトでも情報のない作品で、私…ピピっときました
ネット上も画像見つからないので図録を撮影したものです↓
「画家の息子アンブロワーズ・ルイ・ガルヌレ」1793年のサロンに出品(?)
ジャン=フランソワ・ガルヌレ
印象派等が身近な人たちをモチーフにするはるか前、18世紀にこれほど近代的な表現があったのかというところに驚きました。
現代のインスタグラムにもあり得るような少年のリラックスした表情、一緒にいるネコ(笑)
どうやら当時の公式な肖像画に求められる「コードとモード」を無視したからこのような親密さが出ているようです(かえって他作品のコードとモードの存在が際立ちます)
髪型が現代にあっても不思議でないところがまたイイのでしょうね。
この作品をリストに入れた人はセンスがいい!
このセクション最後は「自己に向き合う芸術家」というサブタイトルで18世紀啓蒙思想のなかで近代的な自意識の表現の例が展示されていました。
「性格表現の頭像」1771-1783年
フランツ・クサファー・メッサーシュミット
精神を病んでしまった作者が一人引きこもりながら制作し、没後に発見された作品の一つだそうです。
なにかこらえる様な表情ですが、よく見ると口を閉じるかのようにテープが貼られています。
18世紀に粘着テープなんてあったのだろうか?という疑問も持ちつつ、迫真の表情には驚きますね。
眼を閉じている自分の表情って、実際は見ることはできないわけで…そこは作者のイマジネーションなのでしょうか。
エピローグとして「アルチンボルド~肖像の遊びと変容」ということで人物の横顔を人間ではないものの集合で描いた作品がありました。
「春」1573年
ジュゼッペ・アルチンボルド
昨年6月に西洋美術館でアルチンボルド展見たよな~と思いながら…この「春」は花の縁取りがありますね。
やや蛇足感ありますが、肖像表現の変化球ということで理解しました。
なんでこんな回りくどい描き方するんだ!?と思うでしょうが、おそらく「普通に描く」なら当然できるでしょうから「こんなこともできるよ!」という一種の知的ゲームなのでしょう。
絵画のアクロバットと言ってもいいかもしれません。
最近は美術館の物販はどこも充実してます。
「LOUVRE」ロゴのプラスチックボトル。
何を入れるかやや悩むかもですが、なかなかにクール!
アパレルもありますゼ(笑)
これは正面から見ると「LOVE」だけど、横から見ると文字が浮き上がって「LOUVRE」になるというギミック!
マルセイユ石鹸…オーガニックなイメージで魚柄がプリントされています(´∀`)
エッフェル塔歯ブラシとか…もう単なるフランス土産状態w
ルーブル美術館のマスコットキャラクターというカバのぬいぐるみ!
4000円+税!(タケェ!)
今回はコラム等テキストが面白そうだったので図録を買いました。
何年振りでしょう?
広大なルーヴル美術館を効率よく見るためのガイド
この日はたまたまエッシャーの誕生日で特別講演会も予定されていて、朝から長蛇の列。
入るまでで50分待ちとのアナウンスがあり、早々に心折れたのでした。
都内開催の展示で比較的混んでなさそうな…「ルーヴル美術館展~肖像芸術~人は人をどう表現してきたか」に転進決定!
予想通り、待ち時間ゼロ!
早速凸です!
美術の展示でよくあるパターンは時代の古いものから新しいものへと移り変わりを見るという見せ方ですが、本展示はテーマ別でその中で時代は様々です。
古くは古代エジプトやメソポタミアで19世紀までの幅広い時間軸を網羅しています。
まずはプロローグとして棺につける(故人をイメージさせる)マスクが2点。
「棺に由来するマスク」エジプト新王国時代BC1391-1353
眼と眉は石を加工してはめ込んでいる精巧な作りです。
「女性の肖像」2世紀
エジプトで出土ですが、ローマが支配していた時代なのでポンペイの壁画とか彷彿とさせる板絵です。
よく描けていますね。
セクション1は「記憶のための肖像」として、神を信じる人間、墓碑に故人をしのぶ肖像、故人の高貴さを表現するものです。
ここでひと際目を引く不気味な彫刻が…
「ブルボン侯爵夫人、次いでブーローニュおよびオーヴェルニュ伯爵夫人ジャンヌ・ド・ブルボン=ヴァンドーム」1465-1511年
半裸の腹部にいくつかうごめくのは屍を食い荒らす虫、下腹部でとぐろを巻くのは露出した大腸とのこと(´Д`)
ペストが大流行した時代、身分が高かろうが低かろうが死は等しく訪れるという表現。
グリューネバルトのキリスト像を想起します。
故人の高貴さの表現として、かなり有名な作品
「マラーの死」1794年
ジャック=ルイ・ダヴィッドと工房
フランス革命期に活躍し、暗殺されたマラーをシンプルな構成の中に神々しく表現した作品。
ぱっと見たとき「あれっ?思ったより密度感がないなぁ」と感じたのですが…どうも教科書等にのっていた原作はベルギーにあって、今回やってきたルーブル所蔵の本作は工房で複製されたものということだそうです。
セクション2は「権力の顔」…古代からナポレオンまで権力者の表現です。
「アレクサンドロス大王の肖像」2世紀
(BC340-330頃リュシッポスの原作に基づく)
一般的に「アレキサンダー大王」というと、この顔を思い出す人も多いのでは?
カラカラ帝の像もありましたが、なんか石膏デッサン思い出しますよね。
また、教科書によくのっているリゴーの太陽王ルイ14世の公式肖像画(工房作)とかも。
そして時代が下ってくるとナポレオンです!
「アルコレ橋のボナパルト1796年11月17日」1796年
アントワーヌ=ジャン・グロ
これは颯爽と旗をふっている全身像の習作。
旗はアウトライン程度で上半身・顔の表現に焦点が絞られていてかえって近代的な画面になっているように見えます。
「フランス王太子、オルレアン公フェルディナン=フィリップ・ド・ブルボン=オルレアンの肖像」1842年
ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル
7月王政のルイ・フィリップ王の王太子の肖像です。
芸術にも理解があり軍事的にも優れ、アングルも敬意をもって描いたようです。
ただ、この絵の完成直後1842年に馬車の事故で亡くなっています。
この作品を見ていたとき、隣で女性客の方が「写真みたい~」と言ってましたが…顔こそアングルらしい写実の極致みたいに見えますが、恐らく腕などは実際より引き伸ばされ優雅さを強調していると思います。
エル・グレコ的かもしれません。
セクションの間に「幕間劇」として携帯可能な小さなアイテムに表現された肖像が展示されていました。
「国王の嗅ぎタバコ入れの小箱」1819-1820年
「国王の嗅ぎタバコ入れ」のためのミニアチュール48点1818-1836年
このミニアチュールはすごいです。
さすが国王向けの作品と言うところでしょうか。
歴代国王と王族、有名宰相、有名文化人まで精緻な表現のエマイユです。
セクション3は「コードとモード」…「コード」とはドレスコードという言葉もある通り、その場や人の地位に見合った姿形だし、「モード」は時代によって移り変わるスタイルです。
このセクションは服飾史的な性格もあります。
「赤い縁なし帽をかぶった若い男の肖像」1480-1490年頃
サンドロ・ボッティチェリ
15世紀の上流階級の男性像ですが、意外と現代的な服装に見えますね。
女性の肖像画の目玉としては
「女性の肖像(通称”美しきナーニ”)」1560年頃
ヴェロネーゼ
誰を描いたか不明で色々な説があるそうですが、衣装の青が非常に美しく装飾品も豪華で、それが過不足なく表現されている作品です。
ヴェネツィア派的な柔らかな絵の具づかいですね。
ヴェロネーゼ、いいなぁ…と思っていたら、しれっと(笑)レンブラントが!
「ヴィーナスとキューピッド」1657年
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン
レンブラントが事実婚の妻と子供をヴィーナスとキューピッドに見立てて描いたらしい作品。
当時の服装ですが、子供にはキューピッドの羽を描き加えてギリギリ神話風にしています。
家族愛がにじみ出る画面ですね。
…で、これまたしれっと今度はゴヤが出てきます。
「第2代メングラーナ男爵、ルイス・マリア・デ・シストゥエ・イ・マルティネスの肖像」1791年
フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス
調べてみると1792年にゴヤは大病で聴覚を失い、その後の作品は凄みを増してくるのですが、その前のまだ柔らかさのあったころの作品です。
気に入らない大人の肖像だと、人格を暴き出すような容赦なさを発揮するゴヤですが、子供の肖像は好意的に描いていますね。
あと、展覧会公式サイトでも情報のない作品で、私…ピピっときました
ネット上も画像見つからないので図録を撮影したものです↓
「画家の息子アンブロワーズ・ルイ・ガルヌレ」1793年のサロンに出品(?)
ジャン=フランソワ・ガルヌレ
印象派等が身近な人たちをモチーフにするはるか前、18世紀にこれほど近代的な表現があったのかというところに驚きました。
現代のインスタグラムにもあり得るような少年のリラックスした表情、一緒にいるネコ(笑)
どうやら当時の公式な肖像画に求められる「コードとモード」を無視したからこのような親密さが出ているようです(かえって他作品のコードとモードの存在が際立ちます)
髪型が現代にあっても不思議でないところがまたイイのでしょうね。
この作品をリストに入れた人はセンスがいい!
このセクション最後は「自己に向き合う芸術家」というサブタイトルで18世紀啓蒙思想のなかで近代的な自意識の表現の例が展示されていました。
「性格表現の頭像」1771-1783年
フランツ・クサファー・メッサーシュミット
精神を病んでしまった作者が一人引きこもりながら制作し、没後に発見された作品の一つだそうです。
なにかこらえる様な表情ですが、よく見ると口を閉じるかのようにテープが貼られています。
18世紀に粘着テープなんてあったのだろうか?という疑問も持ちつつ、迫真の表情には驚きますね。
眼を閉じている自分の表情って、実際は見ることはできないわけで…そこは作者のイマジネーションなのでしょうか。
エピローグとして「アルチンボルド~肖像の遊びと変容」ということで人物の横顔を人間ではないものの集合で描いた作品がありました。
「春」1573年
ジュゼッペ・アルチンボルド
昨年6月に西洋美術館でアルチンボルド展見たよな~と思いながら…この「春」は花の縁取りがありますね。
やや蛇足感ありますが、肖像表現の変化球ということで理解しました。
なんでこんな回りくどい描き方するんだ!?と思うでしょうが、おそらく「普通に描く」なら当然できるでしょうから「こんなこともできるよ!」という一種の知的ゲームなのでしょう。
絵画のアクロバットと言ってもいいかもしれません。
最近は美術館の物販はどこも充実してます。
「LOUVRE」ロゴのプラスチックボトル。
何を入れるかやや悩むかもですが、なかなかにクール!
アパレルもありますゼ(笑)
これは正面から見ると「LOVE」だけど、横から見ると文字が浮き上がって「LOUVRE」になるというギミック!
マルセイユ石鹸…オーガニックなイメージで魚柄がプリントされています(´∀`)
エッフェル塔歯ブラシとか…もう単なるフランス土産状態w
ルーブル美術館のマスコットキャラクターというカバのぬいぐるみ!
4000円+税!(タケェ!)
今回はコラム等テキストが面白そうだったので図録を買いました。
何年振りでしょう?
広大なルーヴル美術館を効率よく見るためのガイド
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