「絵画史上、最強の美少女(センター)」
あぁ…狙ってるな…という感じのキャッチコピーですね(笑)
2018年3月19日の月曜日に見てまいりました。
月曜日で大かたの美術館が休館で、六本木の国立新美術館だけがやっていたので行ったのですが…良かったです(平日で余裕もって見られたし)
なんと個人一人で収集したコレクションとのことですが、教科書や画集に掲載される作品がごろごろあって、ビュールレ氏の目利き度は非常に高い!
調べてみると、スイス チューリッヒの邸宅で一部公開されていたが、2008年に強盗団に4点の作品が盗まれ、2015年公開を停止。
新たにチューリッヒ美術館を増築して2020年に移管するとのことで、それまで世界各地を巡回展示しているそうです。
E.G.ビュールレ コレクション財団のWEBサイトでは全作品の画像・解説が見られます(解説はドイツ語・英語)
→作品一覧のページ(英語)
今回の展示は10のセクションで構成されています。
1 肖像画
2 ヨーロッパの都市
3 19世紀のフランス絵画
4 印象派の風景―マネ、モネ、ピサロ、シスレー
5 印象派の人物―ドガとルノワール
6 ポール・セザンヌ
7 フィンセント・ファン・ゴッホ
8 20世紀初頭のフランス絵画
9 モダン・アート
10 新たなる絵画の地平
全体としては印象派とポスト印象派を核にその前後の時代も含んだ流れが概観できるという構成です。
最初の肖像画セクションではいきなり17世紀オランダのフランス・ハルスの作品から始まりますが、これは印象派の筆触分割技法の先駆けを示しています。
「男の肖像」1660-1666年
実際、印象派の作品と比べてもあまり違和感がありません。
19世紀の作例としてアングルの作品が二点ありましたが、新婚時代の妻を描いた絵が印象的です。
「アングル夫人の肖像」1814年頃
顔は描きこまれているものの、服などは習作であるかのように素早く形を暗示するようなタッチで済ませています。印象派的です。
あと、ドガの画集にかなりの確率で掲載されている作品もありました。
ドガが比較的若いころの肖像画です。
スナップショット的というか、さりげない自然な感じが印象派的だと思います。
「ピアノの前のカミュ婦人」1869年
2番目の「ヨーロッパの都市」では
18世紀のグアルディが描いたヴェネツィアの光景が印象派を先取りする作例として紹介されていました。
「サン・マルコ沖、ヴェネツィア」1780-1785年
晴天の日差しが色々なところでキラキラ反射している様が、コンスタブルのような白のハイライトでチマチマ書き込まれています。
(実物を見ると、ものすごく細かいです!)
全体の色のトーンは印象派直前のブーダンに似ています。
同じヴェネツィアをポスト印象派のシニャックがグアルディの120年後に描いたのがこの作品。
タイル状に絵の具を配置して画面を構成しています。
「ジュデッカ運河、ヴェネツィア、朝」1905年
朝もやを表現しているのか、遠景は白っぽいトーンです。
3番目の19世紀フランス絵画では当時流行っていた主題が並んでいました。
個人的に印象に残ったのはコローの小品。
「読書する少女」1845-1850年
この主題は相当流行ったようで、日本からフランスに留学した画家たちは大体描いているのではないでしょうか。
他にもオリエンタル(中東)主題、クールベのリアリズムも紹介されていました。
4番目の印象派の風景
一般的にイメージするいわゆる印象派の絵ですw
新潟県人ですからやはり雪景色には反応しますね。
今回ピサロの雪景がありました。雪上の青い影が澄んだ空気までイメージさせます。
「ルーヴシエンヌの雪道」1870年頃
ほぼ風景専業画家のシスレーの作品も
「ハンプトン・コートのレガッタ」1874年
かなりザックリした筆触でイギリスの水辺を描いています。
レガッタというスポーツを主題にすることで動きの要素も取り入れています。
5番目はドガとルノワールの人物画です。
ここでメインビジュアルに登場したルノワールの美少女が!
「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」1880年
珍しく、まつ毛の一本一本まで気持ちを込めて描かれています。
ルノワールが相当モデルを気に入ったのでしょうか。
発表当時から評判が良かったそうな。
展示もこの作品だけで一面使って特別扱いでした。
ドガによる知人家族の肖像。
「リュドヴィック・ルヴィック伯爵とその娘たち」1871年
右側の子の顔が集中的に描きこまれ、他はほのめかす程度の描写で非常にメリハリ効いています。
左側の子は人形的ですし、父親に至っては顔かたちがまあ認識できる程度で首から下は茶色をシャバっと塗っておわりですね(´∀`)
発表当時、ロウで作られ実際の衣装を着せてあまりに生々しくて物議をかもしたドガの彫刻もありました。
現在ではブロンズに置き換えられています。
あくまでリアリスティックに顔もどこか猿っぽいです。
「14歳の小さな踊り子」1880-1881年(ロウによる原作)
6番目はセザンヌのセクション
初期作から展示されていましたが、ハイライトはどの画集にも載っているこの作品でしょう。
「赤いチョッキの少年」1888-1890年
ブルー~グレーが主となった画面にチョッキの赤が実に効果的です。
画面の構成を重要視するあまり、右上腕は大きく引き伸ばされています。
実は、セザンヌから数十年前にアングルがこのようなデフォルメを多く取り入れています。
このような現実から離れた形のデフォルメを突き詰めるとキュビズムに行き着くわけですね。
7番目はゴッホのセクション
ここも初期作から死の直前までの作品がバランスよく展示されていました。
昨年末東京都美術館でのゴッホ展で展示されていた夕日の中で種をまく人と同じ構図の作品もありましたが…
「日没に種まく人」1888年
印象的だったのは下の作品。
「花咲くマロニエの枝」1890年
うねるようなタッチが特徴のゴッホ最終段階の作風です。
絵の具の盛り上がりはしっかりとあるものの、不思議と画面に光沢はなく素焼きの陶器のような感じです。
8番目、20世紀初頭のフランス絵画はナビ派が中心の展示でした。
まず目を引いたのはピカソがいわゆる青の時代に入るころに描かれた「かなり普通な」肖像画
「ギュスターブ・コキオの肖像」1901年頃
やはり基本的なデッサンが上手いことがわかります。
もう一点、ボナールが描いた印象派・ポスト印象派と深い縁がある画商の肖像。
「アンブロワーズ・ヴォラールの肖像」1904年頃
不愛想だが抜け目ない商人であったといわれますが、そんな感じがします。
9番目のモダンアートのセクションはフォービズムとキュビズムです。
ピカソもいいのですが、やはり絵にかいたようなキュビズムはブラックのこんな作品でしょう。
「ヴァイオリニスト」1912年
形体をバラし過ぎて一見ではよくわからなくなっています。
そのブラックも反動でしょうか、その後はやや具象に戻しています。
「果物のある静物」1924年
背景の壁紙らしきものの紫のストライプがモチーフ周囲の黒い部分に微妙に被っているところなど、個人的に非常に引っかかります。
この作品もどことなくセザンヌ的な要素があるような気がしますがいかがでしょう。
最後10番目のセクションはモネの作品一点のみです。
最後の一点は
「睡蓮の池、緑の反映」1920-1926年
この作品のみ撮影可能でした。
驚いたことにこの作品はモネの死後も買い手がつかなかったものを、ビュールレ氏が発見し購入したとのこと。
縦約2m×横約4mもあります。
出口の物販も結構売れていたようです。
定番の絵葉書はじめ、ジグソーパズル、書類フォルダとか、ふきん、お菓子、柄のタイツとかw
そういえば、モンベル製の保温マグカップや「可愛いイレーヌりかちゃん」なんてものまでありました!
東京は5月7日まで、その後福岡、名古屋を巡回するそうです。
→展覧会公式サイト
有名作品がわかりやすく展示されていますのでオススメ!
本展をイメージしたコンピレーションCD
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