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正式には「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」
東京都美術館での開催です。

旧東ドイツ時代に来日したことのあるフェルメールの「窓辺で手紙を読む女」
この作品を修復していったところ…塗りつぶされた画中画があるけど、それはフェルメール本人の死後に上描きされたことが判明!

作者本人が描いた状態に復元するという原則に基づき、キューピッドの画中画が現れたということです。
その状態を収蔵館以外で初めて展示する!…というある意味一点豪華主義(?)の展示なのです。
(展示は全3フロアで2番目のフロアの半分以上がこの作品とその修復に当てられています)

この辺の経緯は山田五郎さんのYoutube動画を見るとよ~く分かります。
画中画があった方が良いか?ない方が良いか?…人によって見解は分かれるようですね。
余白に価値観を認める日本人的な感覚では画中画はない方が良かったと思うでしょうし、キューピッドが見えた方が手紙の意味性がより明瞭とも思えます。

この作品そのものについては、修復後の状態を見ると事前の予想より赤・青・黄色の色味が明瞭だなぁ…という印象。
窓ガラスに移り込んだ女性の顔の表現が繊細だなぁ…とか。

展覧会の告知フライヤー(チラシ)もこの一点に絞ったものに…
パッと見ると修復前の画面ですが、上部にかぶった部分をめくると…修復後のキューピッドが現れるという趣向です( ゚д゚ )
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フェルメール全作品を原寸大で見る本。
私も買ってみましたが、オススメ!

フェルメール作品の盗難事件にまつわる本

フェルメールの贋作でナチスを騙した男の物語


例によって東京都美術館の地下一階から。
展示の順番としては、会場に入るとまずは肖像画。
当時オランダでは裕福な商人などが絵画発注していて、王侯貴族でない平民ばかりです。
絵画を飾る場所も教会や宮殿ではなく一般家屋ということで、画面サイズは小さめが多いですね。

なかでもやはりレンブラントは飛び抜けていますね。
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レンブラント・ファン・レイン「若きサスキアの肖像」1633年
スポットライト的な光に照らされた妻を描いた作品で、衣装や帽子も細やかな描写も魅力。


肖像画の次に当時大流行したらしい風俗画のセクション。
フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」もこの流行の中の一枚ですね。

室内、画中画、女性の日常動作、ペットの犬…当時の定番要素が盛り込まれた作品。
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ヘラルト・テル・ボルフ「手を洗う女」1655-56年頃
達者な質感描写が印象的です(中央の女性のシルバーに輝く衣装とか)
個人的に注目したいのは画面左にあるテーブルクロス。
やや厚めの生地で赤×紺?黒?、柄が表現された、こうした特徴のあるクロスはフェルメールはじめ他の作品でも見られます。
当時流行のインテリアなのでしょう。

風俗画でも教訓などを芝居がかった表現のものも流行ったようですね。
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ヘラルト・ダウ「歯医者」1672年
インチキ歯医者でしょうか?
窓枠とカーテンをだまし絵的に描いています。
同じような窓枠のある複数作品が連作で展示されていました。

このダウは国立西洋美術館にかなり気合の入った作品が収蔵されています。
西洋美術館所像の「シャボン玉を吹く少年と静物」
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風俗画の他にも日常目にするものを描いた静物画も流行ったのですが、写実的な描写から「だまし絵」的な作品も増えました。
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ワルラン・ヴァイヤン
「手紙、ペンナイフ、羽根ペンを留めた赤いリボンの状差し」1658年
画力を誇示するかのような作品ですね。
おそらくこの作品のオーナーは「これ、面白い絵でしょ(笑)」というノリだったのではなかったでしょうか。


この時代に成立した「その辺の普通の景色を描いた(ように見える)風景画」
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ヤーコプ・ファン・ライスダール「城山の前の滝」1665-70年
この方…森を描く印象が強いのですが、本作は珍しく高低差のある滝が主役になっています…レアだと思います。

風景画のくくりの中に海景画、帆船による海戦の場面を描いた作品がありました。
海路による交易で栄えた当時のオランダを反映しているのでしょう。
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ルドルフ・バクハイゼン「オランダとイングランドの海戦」1673年以降
英蘭戦争での海戦シーンですね。
ヨーロッパ絵画ではこうした主題も好まれました。
時代は下りますが、英国の海洋小説ホーンブロワーのシリーズを思い出しました。

展示作品は70点強、オランダ黄金時代の17世紀に絞っているので全体に色合いなどやや地味と感じるかもしれません。
それでもこの時代に絵に描かれる主題が多様化した様はよく分かるのではないでしょうか。

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