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小早川秋聲 ー旅する画家の鎮魂歌

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コロナの状況もだいぶ落ち着いてきたので、東京ステーションギャラリーで開催中の日本画家「小早川秋聲」の展示を見に行きました。

以前、戦争画に興味を持った時に横たわる戦死者の作品を図版で見かけたことがありました。
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「國之盾」1944年

調べると、出来上がった作品は軍から受け取り拒否されたそうで…確かにこれで士気が上がるかと言われれば「??」なわけです。
戦争画でも藤田嗣治は激戦の悲惨な光景を鬼気迫る描写で描いていて勇ましさ一辺倒でない作品もあるわけですが、この方がずばり戦死者だけをクローズアップしたというのはどういった背景があったのか興味はありました。

小早川秋聲は1885年生まれで太平洋戦争当時すでに年齢的には大ベテランですが、それだけではなく若い頃に騎兵連隊に入り少尉になっていて、Wikipediaで調べたら太平洋戦争では将官待遇での従軍だったそうです。
自らも軍隊の現場に身を置いたからこそ分かる、兵士の疲労、苦労などが表現できたのでしょう。
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「虫の音」1938年

また、父親が京都東本願寺の事務局長も務めた僧であり仏教の背景もあったことが影響しているのかもしれません。

あとこの時代としては非常に多く海外渡航をしています。
これは母親の実家が子爵の家であり、金銭的には恵まれていたのだろうと思われます。
それこそ世界一周と言ってもよいくらい多くの国を訪れていて、各地で制作された作品はそれぞれの土地の様子をいきいきと表しています。
外国を描いた作品には秀作が多いと思います。
グランドキャニオンを描いた作品の色彩の美しさには驚きました。

作品的には軍人の写生を基にしたであろう作品は近代的な線描が見られますが、伝統的な画題では過去の様式化された表現を使っています。

かと思えば…おそらく西洋絵画の影響と思われる女性像も。
ナビ派に近い表現だと感じました。
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「恋知り初めて」大正期

写生と様式化を上手くミックスさせた馬の作品がありましたが、これは迫力があり良かったです。
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「愷陣」1930年
馬の体表を覆う長めの毛の表現が独特です。
強い存在感を感じますね。

この辺は秋聲の面白いところで、狩野派的、南画的、写生っぽい表現など作品によって表現スタイルを器用に使い分けていたのですね。

戦後は体調が万全でなく画壇の表舞台に出ることもなく「忘れられた」存在になってしまったようですが、近年の戦争画に対する再評価によってまた見直されたということです。

すべて見終わって思い返してみれば、穏やかな作品が多かったように思います。
東京ステーションギャラリーで2021年11月28日まで

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