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「絶筆」で人間を読む~画家は最後に何を描いたか
NHK出版新書 中野京子著 2015年

ルネッサンス期のボッティチェリから19世紀のゴッホまで、最盛期代表作と絶筆(晩年の作品)を紹介し、その画家の創作史をたどるという内容です。
興味深いのは、絶筆が必ずしも傑作ではないということです。
それどころか、酷評されている画家もいます(下記リスト※印)

取り上げられた画家は下記の15人。

ボッティチェリ※
ラファエロ
ティツィアーノ
エル・グレコ
ルーベンス
ベラスケス
ヴァン・ダイク
ゴヤ
ダヴィッド※
ヴィジェ=ルブラン
ブリューゲル
フェルメール※
ホガース
ミレー
ゴッホ

やはり人間、酷評されているとなぜか印象に残ってしまうもので…他人の不幸は蜜の味ってやつでしょうか(・´з`・)

ボッティチェリは作家キャリア後半はサヴォナローラの影響でガチガチの画風になったというのは知っていましたが、あらためて本書に取り上げられた「誹謗」という作品は人物が記号的になってます。
代表作の「春」「ヴィーナスの誕生」と比べると全然エモくありません。
この作品、2016年東京都美術館で開催されたボッティチェリ展で来日していました(私は見逃していますが)
展覧会関連の動画↓


ダヴィッドも元々、理屈っぽく堅い画風の人ですが、晩年の作品は確かに形式ばってこれまた記号的な印象です。
画像見つけました↓
Jacques-Louis_David_-_Mars_desarme_par_Venus
ヴィーナスと三美神に武器を取り上げられるマルス
1822-24年 ブリュッセル王立美術館

フェルメールの晩年作とされるのは、今年のロンドン・ナショナルギャラリー展にも出ていた作品ですが…本当に真筆?というくらい画力が衰えていると書かれています。
言われてみれば…最盛期の光を浴びて浮かび上がるような描写ではなくやや平板な印象ではあります。
Johannes_Vermeer_-_Zittende_Klavecimbelspeelster_(1673-1675)
ヴァージナルの前に座る女
1675年頃

本書の中では、すべての画家の最盛期と絶筆の作品に対して著者のコメントがつけられています。
そのコメントがまた、褒めるところとダメ出しするところが明確でこうした歯切れのよいところが面白いし、ウケる要因なのでしょう。

酷評された画家以外では、ラファエロ、ティツィアーノ、エル・グレコ、ベラスケス、ブリューゲル、ゴッホは画集などで必ず収録されそうな有名作です。

面白いのは、ルーベンスとゴヤで…油彩完成作品ではなく素描を取り上げていること。
両者とも晩年まで衰え知らずで油彩画を描き続けていましたが、素描を見ると画家の「本音」みたいなものを感じられると思います。

面白いのはカバー画になっているミレーの「鳥の巣狩り」
カッチリ画面構成された動きの少ない作品が多いミレーですが、これだけは動きのある人物像が松明の明かりに浮かび上がるという異色の一枚です。

全体的にはそれぞれの画家が生きた時代背景(それが画家に大きく影響する)を絡めながら語られるので、多少でも美術に興味のある人なら楽しめるでしょう。
どこから読んでも楽しめるというのもいいですね。