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光文社新書 著者:庭田杏珠・渡邉英徳(「記憶の解凍」プロジェクト)
1500円+税

近年AI(人工知能)を使って昔のモノクロ写真や映像をカラー化する事が広がっているようです。
(もちろんフォトショ等使って手動補正も入るけど)

今回、太平洋戦争直前の1941年〜終戦後1946年の日本を中心としたカラー化写真を集めた新書を買ってみました。

モノクロ写真がカラー化されると、途端に心理的な距離感が近くなります。

カラー写真登場以前にも、絵画しか残されなかった人物と、モノクロでも写真が残された人物では全く距離感が異なります。

本書の内容から離れますが一例を挙げれば…
幕末、江戸幕府の将軍で

14代徳川家茂(絵)
Tokugawa_Iemochi
15代徳川慶喜(写真)
Tokugawa_Yoshinobu_with_rifle
モノクロでも写真になっただけで「近く」感じるわけで、これがカラー化するとさらに普段の視覚体験に近くなり、人物や場面への距離感がさらに近くなるわけです。


さて、本書においては可能な限り当時その場で視覚体験された画像がこれでもかと登場するわけで…80年近く前の一コマ一コマをリアリティをもって追体験できます。

戦争のまさに戦闘中の写真では、炎に色がつくことによってその温度感も出てきますし、なにより衝撃的なのは原爆のキノコ雲ではないでしょうか。

著者の渡邉氏はTwitterでも多くのカラー化写真を発表していますので、是非ご覧いただければと思います。


興味深いのは、戦争の現場の写真でも破壊された街や、飢餓でやせ細った兵士などはありますが、亡くなった人は載っていません。
これは、生きている(あるいは生きようとしている)人達だけを掲載することによって少しでもポジティブな表現にされたのだろうと思います。


それらに対して戦争直前の記念写真やお祭りの場面では…特別な機会だったのでしょう…飾りがカラフルであったり、服装が結構豊かさを感じさせたりします。
「戦前は世の中、全部暗かった」というのは誇張された話だと分かります。


そして、一部キャプションにはカラー化に際して当時、現場にいた人の証言を参考にしたという内容がありますが、なるほどこれが「記憶の解凍」かと納得した次第。


あと、ひとつ妙に引っかかった写真があってですね…

贅沢をひかえようと、女性のパーマネント禁止が求められたことから「パーマネントのお方は当町通行をご遠慮ください」と町内会での決議を示した立て札と、それを見る女性の後ろ姿。
(立て札には下手くそなパーマネントの女性の絵が描かれている)

1940年の写真なのですが、現代において新型コロナウイルスに怯えるあまり東京の人はお断りという田舎の状況を想起せずにはいられませんでした。


最後に…本書は戦争の現場も日常の光景もバランスよく載っていて、しかもカラーでリアルさがあります。
そうした時代の光景ですので、本書を見ると戦争に対して人それぞれ様々な感情を抱くことかと思います。

私個人的にはアメリカによる空襲も原爆投下も非道な大量虐殺であり、日本降伏後に政治体制を好き放題変えてしまったGHQの態度は、戦争に負けたら何をされても構わないという非情な世界の現実を示していたと思います。

「負けるような戦争は行ってはならない」と感じました。

また、太平洋戦争の時代と現代とでは戦争の形態も変わってきているのだと「リアル」にとらえて現代の諸問題を考えなければならないと思います。

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