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ベン・シャーン展、見に行きました。

20世紀に活躍したアメリカの作家です。
作風は…こんな感じ(展覧会のチラシ)↓
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昨年開催されていたワイエス展と同様、埼玉県の丸沼芸術の森所蔵の作品による展示でした。

点数は約170点となかなかのボリューム。
素描、リトグラフなどの版画、印刷物(本・雑誌・ポスター)が多く仕上げられた絵画作品はわずかでした。

画風としては独特の描線が最大の持ち味だと思いますが、なぜか彩色が線とズレることが多いのです(多分わざとでしょう)
一気に繊細にひかれた細い線から、カサカサ・ケバケバした線、太目でかすれた線と変幻自在でした。
ベン・シャーン_ペン先
例えばこんな感じ↑

そんな線をどうやって描いていたのか?…そんなところに興味はあったのですが、筆を使っているらしいというくらいでそれ以上は謎のままです。

さて、シャーンという珍しい名前なのですが…今回初めて知ったのは現在のリトアニア生まれのユダヤ教徒でアメリアに移住してきたということ。

石版画職人をしながら絵の勉強をしていて、1920年のサッコ・ヴァンゼッティ事件という冤罪事件を題材とした作品で有名になったようです。
その後も人権擁護や反差別をテーマにした作品が多く、リベラルな人物だったことがわかります。

日本とも縁のある人で、日本を訪れたこともあり、また水爆実験で被ばくした第五福竜丸もテーマとしたことがあったとのこと(ちなみに「福竜」=「ラッキー・ドラゴン」と直訳したらしい)

学校の図工・美術教科書によく載っていた記憶があるのですが、こうしたリベラルさ故ではなかったかと思います。
(ロシアのレーピンが描いた「ヴォルガの船曳き」も教科書で見た記憶がありますが、過酷な現実の中でも希望を失わないとか書いてあったような)

とにかくあの独特の線とフォルムがどうしてそうなってしまうのか…私個人的にはさっぱりわからない作家なのですが、線に迷いがないという印象を受けました。

あと、著名人の絵はほとんどカリカチュアの域で、敬意を感じる人物は品のある表現なのに、主義の合わない政治家を描いたものはかなり悪意を感じました。
この辺ははっきりしています。
もし現代に生きていたなら、トランプ大統領をヒドイ表現で描いたことでしょう。

多数手がけたポスターや書籍の画面には独特の書体で書かれた文字がたくさん出てきますが、それらも他に似ているものが思いつかないですね。

正直、それほど好みではないのですが…いくつか発見のあった展示でした。

展覧会チラシデータ(PDF)

さて、続いてみたのは…規模は小さいながらユニークなテーマで構成されるコレクション展

メインの展示室の入口付近に…
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牧野虎雄「風景」1914年
どことなくウェットな日本の風景を上手く描けているように感じました。

メインの展示室に入ってぱっと目についた作品がありました。
「よく描けている!」と感じたのは、県内の新発田市で制作をしていた佐藤哲三という作家の作品でした。
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「苦悩」1934-1935年
えもいわれぬ力強さがあるように思います。

新発田に住んだ佐藤哲三さんだからこそ描けた画面がこれ↓
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「原野」1951年
晴天率が低いという新潟県の平野の光景ですね。

二つ目の小さい展示室では戦争にまつわる作品が並んでいましたが、直接的な表現ではなく象徴的というか一部シュールなものがありました。
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マックス・エルンスト「ニンフ・エコー」1936年
植物と同化したかのような怪物?動物?が第二次世界大戦直前の不穏な空気感を表現しているのでしょうか。

あと、ほとんどポップアートみたいな作品。
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岡本信治郎「ゼロ戦」1984年
正直、実在したゼロ戦をこういうポップな表現で描いてしまうのは…ちょっと違和感を感じました。
自分は実機について興味があるがために、こういった概念的な表現になじめないのかな。

コロナウイルスの影響による移動規制や営業規制で、ここ2~3ヶ月は東京の美術館は軒並み観覧できない状況の中で、新潟県内の美術館を集中的に訪問しましたが…なかなか楽しめるものだと思いました。
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ビキニ環礁水爆実験で被ばくした第五福竜丸に関する絵本


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