IMG_1295
16世紀アール・ヌーヴォーと言えば、この方…アルフォンス・ミュシャ
新潟市新津美術館で2020年6月14日までの展示があるというので見てきました。

IMG_1296
入口はこんな感じでした。
元々こういった分かりやすくキレイと感じる作家は人気ありますし、新型コロナの非常事態宣言がいったん解除されたこともあり、この日の新津美術館はかなりの賑わいを見せていました。

調べてみるとミュシャの展示はここ何年か頻繁に開催されていて、「お金になる」展示企画であることがうかがえます。

内容はほとんどがリトグラフか印刷物で直筆の素描などは作品リストからは3点しか確認できませんでした。
しかし、ミュシャという人の作品は当時からこういった印刷物中心に流布していたので、これも良いのではないかと思います。
なにせ入場料1,000円でこれだけ見られれば十分かと思いますしね。
そして、全展示物撮影OKという最新トレンドにもしっかり乗ってます!
※それ故、本記事は画像多めです

「ミュシャ展」チラシ(PDFファイル)

全体は7章で構成されています。

第1章 パリ時代の魅力的なポスター

第2章 くらしを彩る装飾パネル

第3章 装飾資料集・装飾人物集

第4章 挿絵の魅力

第5章 くらしの中で愛されるミュシャ

第6章 ミュシャとアメリカ

第7章 わが祖国チェコ

まずは第1章
IMG_1300
アール・ヌーヴォー期、フランスの大女優サラ・ベルナールが主演する「ジスモンダ」のポスター
1895年(カラーリトグラフ)
一部が異なるバリエーション2つが展示されていました。
豪華な植物モチーフによる装飾が繊細な線描で表現されています。

これが出世作となり、人気画家となっていくわけです。
最初のセクションでは大画面のポスターやカレンダーが並びます。

サラ・ベルナールのもの以外でも例えば
IMG_1305
「モナコ・モンテ・カルロのポスター」 1897年(カラーリトグラフ)
現代の日本でいえばJRのディスティネーションキャンペーンのポスターみたいなものでしょうか。

ここでも流麗な植物モチーフの装飾が、モナコの優雅さを表現しています。
女性の方から腕にかけての描線が素描の名手であることを物語っています。

線描が強くないこのような作例も
IMG_1310
「ルフェーブル・ユティル」1903年(カラーリトグラフ)
これはルフェーブル・ユティル社のビスケットの宣伝に使われたとのこと。

19世紀後半からは万博が大流行するのですが、ミュシャもポスターを手掛けています。
IMG_1314
「パリ万博のオーストリア館のポスター」1900年(カラーリトグラフ)
ミュシャはチェコの出身ですが、この時代チェコはオーストリアハンガリー帝国の一部だったため、オーストリア館のポスターを描いたのでしょう。


第2章では一般家庭(と言っても富裕層でしょうが)で愛好された装飾パネルの紹介

まずは美しい女性像で四季を表現したシリーズ
IMG_1317
「春」1896年(カラーリトグラフ)
やや目の粗い布地にプリントされています。

IMG_1318
「夏」1896年(カラーリトグラフ)

IMG_1319
「秋」1896年(カラーリトグラフ)
これについては習作デッサンが展示されていました。
やはり線への意識が強いですね。
IMG_1316

IMG_1320
「冬」1896年(カラーリトグラフ)

あと、人気テーマだったらしいのが「ビザンティン風」
オリエンタルというか異国情緒と女性のプロフィール(横顔)の組み合わせ
IMG_1327 - コピー
「ビザンティン風の頭部:ブロンド」1897年(カラーリトグラフ)

IMG_1328 - コピー
「ビザンティン風の頭部:ブルネット」1897年(カラーリトグラフ)

四季があれば、一日の時間の経過を現わすシリーズもあります。
装飾パネルのシリーズは、女優さんなど特定のモデルがいないためミュシャの好みが炸裂した女性像が見られます。
IMG_1334
「昼の輝き」「朝の目覚め」1899年(カラーリトグラフ)

IMG_1335
「夜の安らぎ」「夕べの夢想」1899年(カラーリトグラフ)

IMG_1337
「黄昏」1899年(カラーリトグラフ)

この作品については習作デッサンも展示されていました。
最初にヌードで描いた後に着衣をのせていますが、これで身体のラインが生々しく表現できたのでしょう。
IMG_1336

第3章ではミュシャが美術を学ぶ人たちに向けて出版した資料集が紹介されていました。
中でも素描の鋭さは「さすが」と思わざるを得ませんでした。

女性像の数々
IMG_1343
IMG_1344
IMG_1345
装飾モチーフに使われた植物も繊細な線描
IMG_1348
ガラス、金属等の質感の描きわけ
IMG_1352

第4章はポスターでブレイクする前から手掛けていた挿絵の数々。

まずはミュシャ「らしい」もの
IMG_1365 - コピー
「ココリコ1」1900年(雑誌)
風刺雑誌の表紙。
昔からのスキーヤーは90年代にエレッセブランドでフランススキーチームのウエアが「ココリコ」だったと覚えているかもしれません。
※ニワトリはフランスを象徴する鳥、日本で「コケコッコー」というがフランスでは「ココリコ」というそうです。

お堅い書籍の挿絵もしっかり描いてます!
IMG_1368
「ドイツ史の諸場面とエピソード(計10点)」1896年(書籍挿絵)

日本ネタのこんな作品も
IMG_1374 - コピー
書籍「舞台衣装」イザナミとサクマの部隊衣装 1890年書籍挿絵


第5章は日常使うものの中に使われたミュシャ

チェコが独立国家となった時、愛国心あふれるミュシャは無償で切手や紙幣等をデザインしたそうです。
IMG_1379 - コピー
「付加価値券」1919年
日本でいう収入印紙とか証紙でしょうか。
随分優雅な図案です。

紙幣の図案は少額なものほどカワイイかも。
IMG_1382 - コピー
IMG_1383 - コピー
IMG_1384 - コピー
上から10コルナ、50コルナ、100コルナ紙幣

パッケージに使われたミュシャも
IMG_1389 - コピー
「紅茶パッケージ缶アームストロング&クレイドンベドフォード社」年代不明

絵葉書も多数!これは一例。
IMG_1396 - コピー
「シャンプノア社製 第4シリーズ」1900年(ポストカード)

第6章ではフランスでの名声をもってアメリカを訪れた時期の作品を紹介。
アメリカでも売れっ子ぶりは変わらなかったようです。
IMG_1397
「ズデンカ チェルニー」1913年(カラーリトグラフ)

最後、第7章は祖国のチェコ、スラブ民族をテーマにした作品群。
晩年近くなっての時期は民族衣装を着た少女をモチーフにすることが多くなります。
IMG_1400
「モラヴィア教師合唱団」1911年(カラーリトグラフ)
背景の木の形は浮世絵の影響があるようにも見えます。

大作「スラブ叙事詩」20点を描き上げたミュシャはそれを展示します。
その時のポスターですね。
IMG_1404
「スラブ叙事詩展」1928年(カラーリトグラフ)
モデルはミュシャの娘さんだそうで。

チェコは音楽家を輩出していますが、そのあたりをテーマにした作品。
IMG_1406 - コピー
「チェコの音楽の殿堂」1928年(印刷:原画は油彩)
スメタナ、ドヴォルザークらが描かれています。

そして、最後に写真を活用していた証拠となるものが。
時代的には写真が普及していたので、それを活用していたであろうことは予想できますが、こうして方眼をひいたものがあるとなるほどと思いますね。

現代に生きる私たちは全く意識しませんが、写真を通してものを見るということは一つのレンズがとらえた見方で見るということなのです。
実際に人間が自分で見るという行為は、二つの眼で見て(しかも時間的に幅がある)大脳で情報を統合して理解するので、じつはブレがあるはずなのです。
写真登場以前の人々にとっての「見る」行為はおそらく現代人とは違っていたのだろうと思います。

ミュシャの描線の質からは、一瞬を切り取る写真のような印象を受けます。
IMG_1408 - コピー

描く対象はほぼすべて女性で、身体のラインをなめるような描線など…多分スケベな人だったのではないかと勝手に想像してしまいますがどうだったのでしょう。

線が強いミュシャの画風は日本の漫画にも一部影響しているという話もありますが、日本でミュシャ的な活躍をしているのは…江口寿史さんじゃないかと思います。
ちょっと理想化された美しい女性像でグラフィック的な表現、そしてファッショナブル。
*************************************
今回の企画でも展示されていた装飾デザイン集が手ごろな価格で

ポストカード集は現代でも売ってます(日本国内印刷)

スラブ叙事詩の展示で話題になった国立新美術館でのミュシャ展図録

Kindleの画集