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話題作…というか問題作です。

言うまでもなくアメコミヒーローのバットマンの敵役「JOKER」がタイトルになった映画作品。
一人の人間がいかにして「JOKER」となったのか…その過程を描いていきます。

予告編


全体のトーンはとにかく暗いです!陰鬱といってもよいほど。
DCコミックが下敷きになってはいますが、アクションSFX要素は全くなし。

よく指摘されているようですが、「タクシードライバー」「キングオブコメディ」との関連があるとのことで…私は「タクシードライバー」は見たことあるので、手で拳銃の形を作り頭を撃つしぐさは(ああ、これか!)と分かりました。


舞台は1980年代のゴッサムシティ。
主人公、アーサーは不意に笑ってしまう障害を抱えた男で、ピエロを演じて生計を立てていたのですが…。

尊敬しているコメディアン、マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)にあこがれて自らもコメディアンで成功を望むアーサーですが、他人からは理解不能なタイミングで自ら笑ってしまうため成功には程遠い。
しかし、彼の妄想の中では成功のイメージがありました。
映画の進行とともにその妄想も現実との境があいまいになりますが、意図的な演出でしょう。


映画序盤から彼は次々に不運に見舞われ、ピエロの派遣会社もクビになり、心臓の悪い母親は入院、公的支援のカウンセリング・服薬も予算不足で打ち切り…そして、地下鉄で暴行してきたエリートビジネスマンを護身用に借りた拳銃で撃ち殺してしまう。

これがターニングポイントとなって、どんどんダークサイドに落ちていくのでした(具体的には殺人)

背景には信じていた人たち(信じようとしていた人たち)から次々裏切られ、アーサーが孤独感を深める展開があります。


一方で不景気や格差社会で不満のたまっていた人々は、「勝ち組」のビジネスマンをやっつけたピエロを自分たちの代弁者・象徴的存在として祭り上げ、暴動に向けて盛り上がっていくのです。

と同時にマレーのTV番組に出演の声がかかる(これも”奇異な人間を見せたい”ということで、アーサーが望んだ形ではないけれど)

生放送の出演中に、地下鉄での殺人を告白しスタジオ騒然!
今まで心にたまっていたものを吐き出すように喋りだす!この辺の緊張感はかなりのもの!
そしてマレーを射殺!…まさに放送事故!

ここで「ジョーカー」が完成し、暴動の街に立ったアーサーは不満を抱えた人々に称賛される!
アメリカでこの映画を見て現実に暴動が起こるのではないかと警官隊が出動という話題をみかけましたが、それだけ格差・不平等が存在することを認識しているということなのでしょう。


ラストでは精神病院に入れられたアーサーがでてきますが、最後の最後で血の足跡をつけながら歩いていき、そのまま外に脱走したか否かは判然とせずに終わります。


ホアキン・フェニックスの演技がまた…鬼気迫る…というか痩せた猫背の男を怪演しています(ジョーカーになると背筋が伸びる!)
そして本当に病的に見える笑い方…この特異な演技が、普通に我々の身近にいたら遠ざけられるだろうと思わせます。
その辺の説得力が半端ない!


私が個人的に連想したのは…凶悪事件を起こした理解不能な犯人…2チャンネルを作った”ひろゆき”氏の言うところの「無敵の人」という言葉です。
もう死刑になろうが怖くない、無差別大量殺人のような凶悪事件を起こしてしまう人を指しています。
アーサー→ジョーカーはあまりに酷い環境・経験を通して、善悪は相対的なものだとして「無敵の人」になったというわけです。


この映画を見ると、孤独で社会から必要とされないと感じている人物が、格差や差別に悩み続け…最後に悪行をして何がいけないんだ…という思いに至るということがあり得るのだと気づかされるのです。

ふと、自分もそんな社会的孤独の状況に陥るのではないかという恐ろしさを感じました。

怖い映画です。

心弱い人にはオススメしませんが、強い”なにか”を感じる作品です。

岡田斗司夫氏の面白いレビュー(ネタバレなし)


岡田斗司夫氏の面白いレビュー(ネタバレあり)