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実は招待券をいただきまして…はるばる松本まで見に行ってきました。

美術館WEBサイトの展覧会情報を見ると…
「ユニマットグループの創業者・髙橋洋二氏が、長年にわたり収集し築き上げた西洋美術の一大コレクションです。」
とのことで…出品点数が約100点とかなりの規模の展示らしいということで結構期待値は高まっていました。

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美術館2階の展示室入り口にはルノワールの「母子像」を中心とした大きなビジュアルがお出迎え!

入るといきなりミレー、ルソー、コローに代表されるバルビゾン派の作品が大ボリュームで展開しています。
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小品ですが家族を描いたミレーらしい温かみのある作品「洗濯物を干す女」1854-1856年

非常に興味深かったのは、バルビゾン派にはフォロワーがいて、そういった風景画のニーズがあり、後年フランスでも高く評価された画家がいたということです。


そんな中、とても空気感が上手く描けている作品がありました。
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マリー=ヴィクトール=エミール・イゼンバール「洗濯場」
図録のページをスマホで撮った画像なので、アレですが…

強い日差し、遠くの山が白っぽく霞んでいる光の加減など、夏の空気感が上手く表現されていると思います。
…というか、山沿いに住んでいると、こういう見え方をする景色に出会うことがあるのです。
もちろん、松本の人達もそう感じたに違いありません。


前半、バルビゾン派系統でお腹一杯になった次は、古典主義~ロココ~ロマン主義~アカデミズム~印象派と時代を下りながらフランス美術の展開を概観できる展示がありました。

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フランソワ・ブーシェ「勝利のクビド」
天井画の習作と思われるロココの巨匠の作品です。

他にもダヴィッドやドラクロワなど「押さえるべきはきちんと押さえてる」コレクションです。

あと、バルビゾン派の文脈とは別の流れでミレーの肖像画が二点ありました。
そのうち子供を描いた作品がこれ↓
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「犬を抱いた少女」1844-1845年
図録をスマホで撮ったのでややゆがみはありますがご勘弁m(__)m

ミレー初期、必死でお金を稼ぐために制作した肖像画の一つでしょう。
とても可愛らしく描かれていますね。
初期の肖像画は目力があるのも特徴でしょうか。


アカデミズムの作例としてこんな作品も
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ジャン=ジャック・エンネル「マグダラのアリア」
バロック期に流行った画題ですが、なんで19世紀に?と思ったら、イタリア留学してルネッサンス~バロックの作品を見ていたようですね。
なんというか…筆さばきが適格でとてもうまい!




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「母子像(アリーヌと息子ピエール)」1886年
ルノワールが初期の印象派的な粗さのある筆致から輪郭線を重視した作風になった頃の作品です。
本作のための素描も並んで展示されていました。

同じくルノワール作品で、メインビジュアルにもなっている…
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「髪を結う少女」1896年
晩年、透明度の高い色を重ねていく手法にたどり着く前段階の作品でしょうか。
最上のルノワール作品とは言えないかもですが、面白い画面です。

印象派では他にドガのやや大き目なパステル画も展示されていました。


三番目のセクションはエコール・ド・パリ
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アメデオ・モディリアーニ「ルニア・チェホフスカの肖像」1919年
デフォルメで縦に引き伸ばされているかと思ったら、モデル自身も細身の方だったらしいです。
モディリアーニらしい、良さのある画面ですね。

エコール・ド・パリの画家では、ロートレック、ユトリロ、デュフィ、ルオー、スーティン、ドンゲン、藤田嗣治…と一通り網羅されている感がスゴイです。

そんな中で、アンドレ・ドランのこの作品に目が行きました。
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「女性像」1934-1939年
山口百恵っぽいと思ったのは私だけでしょうか?


あと全く知らなかった素朴派とされるカミーユ・ボンボワのこの作品!
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「伝馬船を曳く馬」1928年
この方、様々な職を経験しながらも絵を描き続け、最終的には高い評価を勝ち取ったそうです。
川の水面、馬の立っている地面、近景から遠景までの空間が心地よくはまっています。


最終セクションはラリックのガラス作品

ガラスの凹凸やつや消しのフロスト加工を駆使して独特の立体感を表現しています。

ある程度数を作りながらも芸術感覚はある。
そんな作品が並んでいて、思っていたより面白い世界だと感じました。
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「立像(スザンヌ)」1925年

全体見終わって…戦後にこれだけのコレクションを作り上げるというのは、なかなかスゴイことだと思いますよ。

これだけの内容で普通にチケット買っても1000円とは…機会あれば見るべきですね!


さて、松本は草間彌生さんの出身地ということで、「魂のおきどころ」というタイトルで特別展示がありました。
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絵画作品、オブジェ、インスタレーションがあり、有名な水玉モチーフ以外の作品もあって前衛芸術家としての足跡をコンパクトに表現していました。


さらに、美術館自体も草間彌生テイストの外観になっています。
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ガラスの壁面に水玉と中庭には大型のオブジェ


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なんと、コカ・コーラの自販機にも水玉モチーフと…徹底されていました。

また郷土ゆかりの作家に関する展示では美術のみならず、書などもありました。
面白い美術館です。

松本市美術館公式WEBサイト