
江戸時代に美術主流である狩野派や琳派などとは違った、自由な感覚で個性的な表現の絵画が存在した!
東京都美術館で開催されていた展示を見にいってきました。
近年、大人気でトーハクでの回顧展があまりに混み過ぎて報道にも載った伊藤若冲、グロテスクな表現で一度見たら夢にまで出てきそうな曽我蕭白、ダイナミックな構図で幕末に活躍した歌川国芳…と人気作家が大集合!…という趣の展示でした。
展覧会公式サイト
作品リスト(PDFファイル)
まずは伊藤若冲
いきなり一番人気から始まります。
やはりこの人は鶏の絵がスゴイ!
自分で何羽も飼っていたとのことで、もう見なくてもあらゆる角度から描き起こせるようになっていたのでしょう。

「鶏図押絵貼屏風」
若冲80代と晩年の作とのこと…墨だけで描かれた12枚の画面が並んでいます。
2枚ごとに対になっているようです。
特に尾羽は自由自在な描写で、あたかも書をしたためるかのように鶏を描いています。
2番手はグロい絵師、曽我蕭白(そがしょうはく)
グロさNO1の「群仙図屏風」

↑左側
画面右側の童子たちの表情が…何を考えているのかよくわからない不気味な表情( ゚д゚ )

↑右側
龍とその周りは水墨で描かれていますが、左右の仙人(?)の衣に使われている生々しい青と赤が際立ちます。

「雪山童子図」
画面右上の童子が全然カワイクないですw
この作品も生っぽい青や赤が激しく主張していてけばけばしいですね。
3番目に展示されるのは長沢芦雪(ながさわろせつ)

「群猿図襖」
師匠の丸山応挙ゆずりのリアルな描写が目をひきます。

「白象黒牛図屏風」
二頭の大型動物を白と黒の対比で見せる構成。
この方、象は実物を見たのでしょうか?
なかなかリアルな描写です。

白象…大胆です。
右から3番目の画面はほぼ真っ白!
対比として黒いカラスが二羽のっています。

黒い牛と対比させているのは小さな白い犬(?)

現代の漫画に出てきそうな表情で、来場の女性から「カワイイ!」との声。
物販では関連グッズも…


4番目の作家は一番の年長者、岩佐又兵衛

「山中常盤物語絵巻 第四巻(十二巻のうち)」
私個人的には、そんなに「奇想」という感じでもないかな…と思ったわけですが。
確かに…この絵巻物では常盤御前の殺害シーン(?)がかなりしつこく…アニメ原画のように一連の動きを追いかけたような画面が続きます。
そして、5番目は体制側のポジションにいたと思われる狩野山雪

「梅花遊禽図襖」
安土桃山時代の狩野永徳のような奔放な構図ではなく…非常に抑制的な構図で組立てられた画面。

「龍虎図屏風」
虎は精緻な毛並みが彩色で表現されているのに、龍は墨一色という面白い画面です。
虎の表情がまたどことなくユーモラスですね。
この辺まで見てきて気づいたのは…「奇想」とはいうものの、そのことがかえって伝統的な技法を駆使する手腕が強調されているということでした。
動物の体毛を表現する「毛描き」、水の流れを表現する「流文」、遠景の山水を表現する水墨の技法など…それぞれかなり異なったスタイルなのに同一画面に違和感なく存在しているわけで…観察して描くことは説得力向上に寄与するけれど、絵画の本質とはやはり画面を作り上げることなのだなぁと思ったのでした。
そして…6番目に伝統技法とは無関係な…白隠 慧鶴(はくいんえかく)

「達磨図」
自身禅僧であった慧鶴が布教のために描いた作品ですが…今回の展示中、最も自由な作品かもしれません。
形の当たりをつけるための線を隠すこともせず、筆の運びの勢いそのままの描線などある意味近代的な感覚かもしれませんね。
あと…とにかくサイズがでかい!

「隻手」
有名な禅問答「隻手音声」(両手を打ち合わせると音がするが、片手ではどんな音がするか)を絵で表現した作品。
自分の手を見ながら描いたのでしょうか。
右手が描かれているので、この方は左利きだったのかな?…などと思ったりして。
7番目は鈴木其一(すずききいつ)

「百鳥百獣図」
アメリカから初の里帰り展示だそうです。
其一は琳派なので装飾的な様式が多いそうですが、この作品は左側に動物、右側に鳥類を思いっきり描き込んだ図鑑のような仕上がりです。
どうしちゃったのでしょうか( ゚д゚ )
最後8人目は幕末の浮世絵師歌川国芳

「相馬の古内裏」
版画で出来ている浮世絵ですが、3枚続きで大画面を作るダイナミックな作風が持ち味です。
この作品でも画面の半分近くを巨大な髑髏が占めています。
その人骨表現もやたらとリアルで、絶対実物を見たはずだと思わせます。
この他にもデカいクジラやデカい鯉とか…大画面を活かす主題が多いですね。
かと思えば…ネコを集めて文字を作ったり、ふんどし姿の人物を組み合わせて人の顔を構成したりと…アルチンボルド的な表現も得意です。

「一ツ家」
浅草寺に奉納された幅3.7mの巨大な絵馬です。
鬼婆が間違って自分の娘を手にかけようとする場面が板に肉筆で描かれています。
構図的には、西洋絵画のイサクの犠牲やユディットを想起しました。ちょっとバロック的?
見に行ったのは平日でしたが、そこそこの混雑でこの辺の日本美術の人気の高さが感じられました。
美術館のある上野公園は桜が見ごろでした。

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