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アポロ11号で人類初の月面着陸を成し遂げたニール・アームストロングを題材とした映画です。
2月14日に長岡市のTジョイで見てきました。

以下…思いっきりネタバレしますので、未見で知りたくない方は閲覧しないでくださいね。
…とはいえ、本作の内容はほぼ史実通りですので大きなエピソードは今時調べればわかることばかりですが。


本作の宣伝文句は「ラ・ラ・ランド監督最新作 ライアン・ゴズリング主演」…と、アカデミー賞を受賞した「ラ・ラ・ランド」をフックにしたPRがなされています。

ですが…多分それとは全く関係ない価値を持った映画です。
(私…ラ・ラ・ランド見ていませんが)


この作品を見て面白く感じるかどうかは宇宙開発史に興味があるかが大きく影響します。
1983年の映画「ライトスタッフ」が面白いと感じる方は楽しめるかな。


私自信の話をすると、小学生の頃(1970年代)から学校の図書館で宇宙開発の本を読み漁っていて、ツィオルコフスキーの理論時代からゴダードの液体燃料ロケット、フォン・ブラウンのV2ミサイル、ソ連が先行していた時代からアポロの月面着陸まで…その概略は刷り込まれた人間です。

本作はその活字情報を追体験するかのような映画なわけです。


時系列上はマーキュリー計画を描いた「ライト・スタッフ」の後日譚にほぼ当たるのが本作です。
※アメリカの宇宙計画はマーキュリー→ジェミニ→アポロ→スペースシャトル


映画冒頭の場面は…主人公の乗るコクピット…大型機から切り離されてロケットモーターで加速する場面から始まります。

いきなりピン!ときました。
NASAの実験機…X-15の大気圏外飛行!

この後、ロケットによる宇宙飛行という展開になるのですが、テストパイロットから宇宙飛行士(アストロノーツ)という構図が「ライトスタッフ」と相似形になっています。


ただ…80年代の「ライトスタッフ」とは表現はだいぶ異なっていて、本作ではニール・アームストロングの視点に集約されています。

画面上の特徴はカメラが登場人物に(異常に)近くてブレる!
宇宙の場面以外は60年代の雰囲気を出すために、あえて16ミリで撮影してるとか…


ストーリー上は冒頭のX-15の飛行後、干されそうになったり幼い娘を病気で亡くしたりしたけどジェミニ計画に応募…無事採用!

アポロ計画の準備段階であるジェミニ計画で宇宙機同士のドッキング試験にアームストロングが参加するものの…ドッキング後に激しい自転が発生し…なんとか相手方のアジェナ衛星を切り離し無事帰還したというのが前半の山場。
自転のトラブルがあったというのは本で読んでいましたが、映像で見せられると相当ヤバかったんだと分かります。


アポロ11号の月面着陸も、設置直前にコンピューターがオーバーロード起こして(データ入れすぎ)フリーズしていて…最後は手動で事なきを得た…とか本で読んでいましたが…
映画上はコンピューターでエラー表示が出ているけど…いいから任務続行しろ…という表現でした。
それより着陸適地を探すのに燃料ギリギリという緊張感!
そこからの…着陸した月面の完全な静寂がもたらす感動!


…とここで、本作の本当のキモを申し上げると…宇宙飛行の場面より多くの尺を割いてニール・アームストロングの感情を深掘りします。
冷静で抑制的なニールは画面上大声を出すこともありませんし、気に障りそうなことを言われても受け流すかのような反応ばかりです。

ネット上の映画レビュー投稿を見てみますと…ストーリーが平たんで耐えられなかったという方が散見されますが…スターウォーズじゃねぇんだから!
どんだけ盛られた演出に毒されているのか!…と小言の一つも(以下略w)


さて、演者の見どころは普通の家庭人が宇宙飛行士、それも初の月面着陸に抜擢されたら家族はどう感じるのか?
ニールの妻役であるクレア・フォイの演技はそんな人間の正直な感情を表現していて…普遍的にインパクトあると思います。


アクション的にも…月着陸訓練シーン…わりと淡々と描写することで逆に命がけで取り組んでいたことがジワジワ伝わると思います。


「ライトスタッフ」的な場面
アポロ11号で月面に足跡を残したバズ・オルドリンの発言シーン

ニールが口下手なところをオルドリンが上手くカバーしています。
「ライトスタッフ」のジョン・グレンのシーンを想起させます。

幼い娘が腫瘍で亡くなったことをネタに大丈夫かと問われる場面で…


ストーリー上、ニールの一人娘カレンが主軸になっています。
脳腫瘍(?)で亡くなった子供を思い出しつつ、月面着陸で想いを回収するストーリーが用意されています(実話かどうかは分からないそうですが)

マッチョで英雄的な宇宙飛行士ではなく普通に子供を愛する父親としての描写が新鮮です。

そういえば、音楽も終始かなりウェットな感じでしたが、登場人物の感情の揺れを表現するかのようでした。

広く一般受けしないかもですが、いい映画ですよ。

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