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アメリカはヨーロッパのような王侯貴族のコレクションがない代わりに、大金持ちが個人コレクションを始めてそれが美術館になっていく例がいくつか見られますが、今回の展示もそういったもののひとつ。
ダンカン・フィリップという人物が集めた主に19世紀~20世紀前半の作品が中心になっています。

今回、三菱一号館美術館で開催されている展示は「全員巨匠!」と銘打って選りすぐりの約70点で構成されています。


画集でたまに「フィリップス・コレクション所蔵」という表記を見かけますが、確かに各作家の代表作と呼ぶにふさわしい作品ばかりでした。
展示を見ていくと単に「典型的な作風を示す代表作」というにとどまらず「この作家ならむしろこれだろう」というダンカン・フィリップス氏の価値観で作品が選ばれているのが分かります。

その辺、作品のセレクトに非常にこだわりがあるというか、マニアックというか…美術のオタクとさえ言えるかもしれません。
特に驚いたのが…
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ポール・ゴーガン「ハム」1889年
よりによって何故ハムの絵を選ぶのか?!
ゴーガンにしてはテーブル上の奥行きが素直に表現されているのも異色だと思いますし…まぁハムはそこそこ旨そうに描けているかな。


それでも目利きと思わせるのは…まずはドーミエのいい作品があるというところ
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オノレ・ドーミエ「蜂起」1848年
この画家にしては大きな画面で、適度な省略を含んだ人物描写により普遍性を持たせることに成功しているように見えます。


また、近代美術が収集の対象ですが、その先駆けとなった18世紀の作品も含んでいます。
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ジャン・シメオン・シャルダン「プラムを盛った鉢と桃、水差し」1728年頃
背景はやや抽象的であいまいですが、水差しや果物の存在感にフォーカスした描写がなされています。


同じフランス人でも19世紀になるとこんな静物画が…
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ポール・セザンヌ「ザクロと洋梨のあるショウガ壺」1893年
モチーフの存在感を追求しているのはシャルダンと同様ですが、アプローチは全く異なっています。


ガチガチの古典主義でアカデミズムと思われていたアングルの作品でも
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ドミニク・アングル「水浴の女(小)」1826年
整った描写のように見えますが、右足が不自然な位置にあります。
画面のバランスで見たときにこちらの方が良いとしたわけで、それが近代美術の考え方というわけです。


あと、個人的に感銘を受けたのが
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オスカー・ココシュカ「クールマイヨールとダン・デュ・ジェアン」1927年
ヨーロッパアルプスの現在ではリゾート地となっている土地の風景です。
なんというか山岳地の澄んだ空気感が実に活き活きと表現されています。


どうもノリでサラサラっと描いた印象のあったデュフィですが
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ラウル・デュフィ「画家のアトリエ」1935年
構図がしっかり構築されていて、はじめは(マティス?)と思ったくらい。


フィリップスコレクションはボナールの作品がまとまっていることでも有名らしく、今回も数点展示されていました。
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ピエール・ボナール「犬を抱く女」1922年
女声のセーター(?)の鮮やかな朱色も印象的な画面。
朱色と髪と犬の茶、背景のブルーグレーが織りなすハーモニーですね(´∀`)


点描で知られるスーラもその典型的な作風に到達する前の作品が
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ジョルジュ・スーラ「石割り人夫」1882年
SFイラストレーターの金森達の作品を思い起こさせるタッチです。


私の敬愛するドガ先生の作品も
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エドガー・ドガ「稽古する踊り子」1880年代はじめ~1900年頃
見えた通りに描写された1870年頃の作品も展示されていましたが、色彩も自由に扱ったこの作品の方が印象深いです。


ダンカン・フィリップスという人はキュビスムに対しても理解があったようですが、ピカソよりブラックがお好みのようです。
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ジョルジュ・ブラック「円いテーブル」1929年
結構大きめの画面に描き込まれたブラック流キュビスムの集大成的作品。


もう一つブラックらしい作品も
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ジョルジュ・ブラック「レモンとナプキン」1928年
キュビスムですが端正な画面がブラックらしいかな。


美術史上名高い「コンスタブルの雪」の作例もありました
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ジョン・コンスタブル「スタウア河畔にて」1834~37年頃
雨上がりの日差し的なキラキラ感を白い絵の具を散らすことで表現しているんですね。
この白が雪みたいだと…現代風に言えば…「炎上」したようです。


今回の展示構成で面白いのは、コレクションに加えた年代順に並んでいるところです。
そのため見進めていくと作品の年代はかなり前後しますが、その時代ごとにフィリップス氏がどのような関心を持っていたかがなんとなくわかるようになっています。

あまり期待せず見に行ったわけですが、かなりイイ展示だと思いました。
オススメ!


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