4月1日までとのことで、慌てて(?)3月31日に行ってきました。
ちょうどこの時東京は桜が満開となった土曜日で、上野公園は桜にパンダに…と朝から大勢の人でごった返していました。
朝の行列が一番ヤバかったのは、パンダが人気の動物園でしたね。
動物園の列を見てビクビクしながら東京都美術館に行ってみると…
開場30分前で行列は100人以内と、やや安心したと同時に拍子抜けでしたね。
チケットはオンラインでクレジット決済、現場でチケット窓口に並ぶことなく真っすぐ展示入り口に向かえます。
さて、今回のブリューゲル展ですが…ピーテル1世から始まる一族四代…16世紀~17世紀にまたがる約150年を概観しようというものです。
そういえばブリューゲルって、ピーテルとかヤンとか1世、2世、(父)(子)とか…色々表記があって全体ではどうなっているんだ?という印象を持っていました。
今回、系図を見ながらの鑑賞で、関係がよくわかりました。
この辺は昨年の運慶展に似た構成ですね。
展示は時代の古いところから始まりますが、ブリューゲル周辺の作品も時代性を表すために結構出品されています。
まず、初代ピーテル1世はほとんど版画か素描ですw
初代の頃はまだブリューゲルブームはそれほどでもなかったので、油彩の作品は比較的少なかったのだと思います(ピーテル2世、ヤン1世の世代から彼らの作品は大ブームとなり大量生産するようになったそうです)
その版画の中で印象的なのは…
ピーテル1世下絵の版画、非常にヒエロニムス・ボス的な「最後の審判」
画面中央で人間が天国行きと地獄行きに振り分けられて、地獄方面は怪物の口の中に入っていきます。
口の中に飲み込まれるイメージは、現代では「進撃の巨人」あたりに受け継がれているような気もします。
そして、手前にはおなじみの異形の怪物たちが跋扈しています。
もう一つ…
ピーテル1世下絵の版画「金銭の戦い」
大量の貨幣が詰まった箱、樽、壺が擬人化されて相争うというなんともシュールな画面です。
画面下に書かれた文章は同じ版画を所蔵する西洋美術館のサイトで翻訳を見ることができます→西洋美術館「金銭の戦い(ピーテル・ブリューゲル[父]の原画による)」
強欲に対する戒めを示す寓意画なのでしょうが、箱や樽に手足が生えたキャラは時代を超えて現代のアニメキャラのように見えました。
二世代目に入って「ブリューゲル」ブランドが確立してくると油彩画など量産体制になってきます。
流行りのブランドとして一定の様式が確立されてくるわけです。
例えば風景画なら、近景は茶色や緑色が強くて遠景は青みがかった色、もしくは近景は暗めで遠景を明るくする…といった明確な特徴がありますね。
下の画像は二世代目ヤン1世の「水浴をする人たちのいる川の風景」(1595~1600年)
16世紀末制作と言われるこの作品は遠景まで細密に几帳面に描かれ、当時の様式をはっきり見ることができます。
さて、ブリューゲルブランドが確立してきたところで商売ですからウケる題材は量産します。
そんなウケた画題のひとつが「鳥罠」
ピーテル2世「鳥罠」(1601年)
冬景色が歴史上確立されたのはブリューゲルの功績でもあります。
冬景色と言えば、ヤン2世がテンペラで描いた「冬の市場への道」(1625年頃)
油彩に比べてラフに描かれたことでかえって、空気の冷たさや雪道の質感がビビッドに伝わるような気がします。
画像はありませんが、ヤン1世による非常に小さい画面に細密に描かれた風景画が多数展示されていました。
特に小さいものは銅板に描かれていましたが、これは表面が特に平滑で細かく描くのに適しているかな…と推察しました。
あと、花など静物画の確立もブリューゲル一族の功績だということがわかります。
ヤン1世、ヤン2世による「机上の花瓶に入ったチューリップと薔薇」(1615~1620年頃)
実際に描いてみると分かりますが、花など植物は結構複雑で油彩みたいに重い画材では描きにくいのですが…さすがうまいですね。
展示とはあまり関係ないですが…この頃オスマントルコからヨーロッパにチューリップが入ってきて大流行するんですね。
そして、世界初のバブル経済「チューリップバブル」が起こるんですね。
(チューリップバブルWikipediaの記事)
ルーベンス等の画家とも共作していて、花の部分だけ描いた作品が相当数あるそうです。
あと、今回初めて知ったのですが大理石にそのまま描かれた昆虫の絵がありました。
四世代目にあたるヤン・ファン・ケッセル1世「蝶、カブトムシ、コウモリの習作」(1659年)
大理石の白さをそのまま生かした描き方が新鮮でした。
最後にピーテル1世が創始した農民が大勢でワイワイ騒ぐ作品がありました。
ピーテル2世による「野外での婚礼の踊り」(1610年頃)
この展示のすごいところは、ほとんどすべてが「個人蔵」ということで初公開の作品ばかりということ。
それだけ王侯貴族ではなく平民階級に広く行き渡っていたのだなと気づかされました。
小さな作品が多いので正直見ていて非常に疲れますが、画題も多彩で年代によって様式も少しずつ変わる様も見られますので面白かったです。
東京展は4月1日で終わりましたが、今後は愛知県、北海道、広島県、福島県を巡回するようです。
東京展作品リスト(PDFファイル)
最後、物販コーナーにいくと…ブリューゲルの活躍したフランドル地方は現在のベルギーということで、ベルギービールが売られていました。
日本人にはなじみのないベルギービールということで、味の特徴を示したマップがボード化されて掲示されていました。
あと、ベルギーのキャラクターということでスマーフとのコラボも
運慶のときもあったバンダイによるガチャも!
結構人気でした!
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