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2017年12月15日…熊谷守一の展示を見てきました。
すごく見たかったわけではないのですが、どうにも時間があって…この機会に見ておこうというわけです。

会場は国立近代美術館。
皇居近く竹橋にあり、上野のような美術館の集積地ではないので空いているかな~という期待(?)を持って向かいました。
案の定(平日金曜ということもありますが)かなりゆったり見ることができました。

さて、僕の熊谷守一作品への認識というと、シンプルにアレンジしたフォルムに色面を強調した画面で、和風マチス?ぐらいなものでした。

今回の展示では最初期からの作品が出ていましたが、なんと青木繁と同級生ということで…最初期の奥さんの肖像はなんとなく青木との共通性があるように思いました。
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それにしてもこの展示で最大の問題作は「轢死」でしょうかね。
暗~い画面に女性の死体だけが描かれています…なんですが、顔料なのか油なのか黒く変色して実物見ても正直どこに何があるのかよく分りません。
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あまりに見えないので、ネット上探したら赤外線撮影した画像がありました。
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実はこんな構図でした。
どういう感覚で描いたのだろうと思いましたが、後年自分の娘がなくなった時も臨終直後の顔を油彩で描いたりしています。
モネも妻が亡くなった時つい油彩で描きだしたけど、途中でそんな自分が嫌になって未完で終わらせています。
生死に対する感覚が普通より尖っていたのかもしれません。

そんな時期を経て原色に近い色面で構成するようになります。
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「日蔭澤」ある意味フォービスム的な表現の作品。

だんだんフォルムの輪郭線がかっちりしてきて、下のようなマチスの晩年の作品を彷彿とさせる作品になってきます。
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で、実は一番驚いたのはお盆に玉子がのっているだけの作品。
ベタ塗りみたいな面ですが、タッチの方向など計算されつくして画面に妙な緊張感があるように思いました。
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水滴が落ちて発生する波紋を描いた作品。
こういう米菓あったよな…と思いました(チーズが中央にのっているやつ)
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なんともユーモラスな猫の絵。
熊谷守一といえばこういう作品をイメージする人が多いのでは?
何度も何度も同じモチーフを描いていくうちに単純化してこういう画面になっていったのでしょう。
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没後40年 熊谷守一 生きるよろこび~出品リスト

 近代美術館は明治以降の美術作品を所蔵していて、その常設展もなかなか。
明治期の黎明期の洋画、その後の国際的なトレンドを意識しながら展開した作品群が見られます。

近年再評価されている戦争画も。
珍しい日本画の技法による作品。
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まるで引っ越し荷物のような段ボールの山に、それを無意味に移動する映像を流し続けるインスタレーション作品。
一見、美術館の備品を片付けきれないでいる状況のように見えますが、れっきとした作品です。
よく見たら、作品中の椅子に座って休憩もできるとのこと(誰も座っていませんでしたがw)
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多分、最後までそれほど混雑はしないであろうと思います。
ゆったり鑑賞したい方にお勧め。

まるで仙人のようだと言われた守一の著書