2017年の夏、東京都美術館で開催されていた「ボストン美術館の至宝展」を見てきました。
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開場20分前くらいに着きましたが、すでに50人ほど並んでいたでしょうか?
今年最も混雑したのは国立新美術館でやっていた「ミュシャ展」で会場入るまでに何時間もかかったとか聞きましたが、それに比べれば快適なもんです。

しかも、9:30からなのですが9:20過ぎには開門して入場が始まりました。
国立の美術館も独立行政法人になってからはだいぶ臨機応変な対応をするようになりましたね。

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展覧会のメインビジュアルはご覧のゴッホによるルーラン夫妻で、正直第一印象はヨーロッパ絵画で客寄せして、ボストン美術館の資金稼ぎしたいんだろーと勝手に思ってました。
…ですが、実際見たら…スミマセン!古代エジプト、東洋(中国・日本)、19世紀以降の西洋美術のまさに名品を選りすぐった内容でコンパクトながら非常に充実したものでした。

一番驚いたのは、中国絵画がすべて北宋・南宋の作品だったことです。
おそらく、中華圏の芸術が歴史的にピークを迎えたのがこの時代で、その後日本にも大きな影響を与えています。
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徽宗(北宋第8代皇帝)
「五色鸚鵡図巻(ごしきおうむずかん)」1110年頃

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陳容
「九龍図巻」南宋末期
全部で約10mある長大な竜の物語絵巻。
画像だとよくわかりませんが、よく見ると墨の濃淡を変幻自在に使い分けています。
他にも五百羅漢図など非常に質の高い作品がありました。


続いて日本美術ですが、主に江戸時代から選りすぐりの作品が並んでいました。
陶器、絵画が多かったですがいきなり司馬江漢の洋風画があるかと思えば、喜多川歌麿の肉筆画とか…メインになっていたのは曽我蕭白と英一蝶でした。

奔放な曽我蕭白と、様式の整った英一蝶を対比させるかのような展示です。
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曽我蕭白
「風仙図屏風」1794年
ある意味コミカルに感じるほどの人物の表情(実は画面端でウサギが目を剥いてビックリしている)
渦巻くダイナミックな風の表現など蕭白らしい作品。
画像はありませんが「飲中八仙図」の酔っぱらい表現も秀逸でした。

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英一蝶
「涅槃図」1713年
画面が縦2.9mと日本の絵画としては異例の巨大な作品。
やまと絵の伝統を引き継ぐ端正な画面で多様な人物・動物が描かれています。
修復の過程も映像上映されていました。


続いて19世紀フランス絵画では、バルビゾン派~印象派~ポスト印象派までバランスよくセレクトされた作品が並びます。
この辺は定期的に来日する作品もあり「おなじみ」という感じです。


フランスの次には自国アメリカの作品がきて、続く版画写真のコーナーが良かった!
エッチング版画のシンプルな作品から写真作品が並んでいるのですが、抽象度の高い画面構成だと版画でも写真でも同じようなパワーを感じます。
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アンセル・アダムス
「白い枝、モノ湖」1947年
背景にもやがかかって抽象的な雰囲気があり、そこに白い枝が浮き上がって現実感の薄い不思議な画面になっていますね。
アダムスの作品は全部で3点ありましたが、まじまじと見るのは初めてで衝撃的でした。


最後は現代美術
戦後から21世紀までの作品です。
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アンディ・ウォーホール
「ジャッキー」1964年頃
半世紀前の作品ですが、現代のコンセプチュアルなアートの先駆者ですね。
ご存知ケネディ大統領夫人の「ジャッキー」をテーマにしたものですが、新聞等の印刷表現でザラっとしたドット表現で同じイメージを複製しています。
公人を我々一般人はこうした印刷物のイメージを通して見ていて、それは一度フィルターを通したものなんだよってことでしょうか。

21世紀の作品としては日本人の村上隆の作品もありました。

事前に思っていたより良い展示だったと思います。
これはアメリカでも最も古い街のひとつボストンに、とんでもない目利きがいたという事実の証明です。(日本美術に関してはフェノロサ、岡倉天心が協力しています)
非常にレベルの高い作品を収集して美術館を設立、しかも設立後も公的資金を投入することなく有志の寄付と美術館の活動で得た資金で現在も運用しているといいます。
これまた社会インフラの運用面での理想形のようです。

実はおススメ!

東京の後、神戸と名古屋にも巡回するようです。
展覧会公式サイト