月に一日休めるかどうかという狂気のウインターシーズンも5月7日のゴールデンウィークで終わり…芸術に触れ、リハビリしたいという渇望にも似た感情があふれだしたわけです。

今回は、東京都美術館での「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲルバベルの塔展」と国立西洋美術館での「シャセリオ―展」を狙っていきました。

バベルの塔展は5月11日で来場10万人を超えたという情報もありました。
以前「鳥獣戯画展」でとんでもない混雑からくる、これまたとんでもない待ち時間を経験した私は、今回夜行バスで早朝入りして会場1時間前には都美術館に入口に陣取ろうという作戦を実行したわけです。
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…ところが、行ってみるとゲート前には10人前後の人たちが!

(超拍子抜けかよ)と思いましたが…開場のころには数倍の数十人(もしくは100人ほど)の列になっていました。
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展示室入り口前に漫画家の大友克洋によるバベルの塔内部を描きこんだ作品の展示も。

さて、この展示ですが…3フロアにわたって展開しますが、最初のフロアは15~16世紀フランドルの美術がどんな状況であったかという内容です。

宗教画が多かった15世紀から、16世紀に入ると肖像画が多くなってきます。

さらにこんな作例まで…
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ヨアヒム・パティニールの「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」
画面手前にスポットライトのような光が当たって、ロトと家族が逃げていますが、現実には存在しなさそうな奇岩地帯の向こうには業火に焼かれて滅亡するソドムとゴモラの町が描かれています。

夜っぽい光景に地獄風景を表現する手法はボスも使っていますね。


2フロア目はヒエロニムス・ボスの真作2点が展示されていて本展時の最初のヤマ場になっています。
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「放浪者」行商人ではないかと解釈される人物
左側後方には娼館とおぼしき建物があり、すでに立ち寄ったのかこれから立ち寄りたいのか?その辺は想像にお任せするスタイルの作品です。

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もうひとつは「聖クリストフォロス」
子供を背負ってみたら、やたらと重くなって「なんなんだ!」思ったが、それはキリストであったというエピソードから。

この後はいかにボスの影響が強く残ったか、多くのフォロワーによる油彩画、版画が延々展示されていました。
とにかく「ヒエロニムス・ボスの模倣」という表示の作品多数でした!


で、バベルの塔を描いたブリューゲルの版画も多数展示され、ボスとのつながりが確認できる内容になっていました。
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非常に「ボス的な」「聖アントニウスの誘惑」

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「大きな魚は小さな魚を食う」
展覧会マスコットの「タラ夫」の元ネタとなった版画(画面左上で歩き去ろうとする脚の生えた魚)
そこはかとなくユーモラスな印象。


そして3フロア目はほぼ「バベルの塔」だけで構成されるという前代未聞な内容!
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展示室に入るといきなりブリューゲルのバベルの塔を超拡大した壁が!

「バベルの塔」そのものは60㎝×75㎝ほどでそれほど大きな絵ではありません。
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この画面に1400人もの人間が描かれているそうで、芸大の共同プロジェクトによる300%拡大の複製画の展示も目玉のひとつでした。

さて…最後のショップコーナーでは
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「タラ夫」の元になった半魚人もTシャツになっていました。

ちなみに「タラ夫」はこんなです
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ワルノリ的企画…「タオルの塔」
今治産タオルが塔のように積みあがられていました(´∀`)


さて、次は「シャセリオ―展」です。
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19世紀前半に活躍したテオドール・シャセリオ―の展示です。

この時代は新古典主義のアングルとロマン主義のドラクロワがせめぎあっていた時代で、シャセリオーは最初アングルに師事して修行していましたが、まもなく師とは決別してロマン主義の作風に移っていったとのこと。
新古典主義的なかっちりした描写もロマン主義的な物語性の表現もできる、結果的には非常に器用な画家になったと思います。

文学の物語表現はもろにギュスターブ・モローが影響受けていて…構図一緒だろ!と突っ込みたくなるような作例が並べられていたりしました。

ですが、感心したのは肖像画ですね。
実に達者で魅力的な作品が並んでいました。ドサージュ

外交官「エミール・ドサージュの肖像」
いかにも癖のありそうな男性の肖像。


カバリュス嬢
社交界で美女として有名だったという「カバリュス嬢の肖像」
実にエレガントです。

展示の後半、東方をテーマにした作品の中でもこの描写にはドキッとしました。
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「コンスタンティーヌのユダヤの娘」
目力にあふれた表情、衣装の軽やかさが即興的な筆の運びで描かれています。


シャセリオーを一通り見た後、西洋美術館の常設展もみました。
ちょうど土曜の午後ということで、美術トークを聴くことが出来ました。
これは常設展の作品をネタに作品の読み解いていこうという催しです。
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ルネサンス期から19世紀までいくつかの作品を選んで解説が無料で聴けます。
上画像はルーベンスの子供の寝顔を描いた小品。
大作の注文を受けるときに描写見本として使ったのではないかという話でした。

最後に常設展で気に入った作品
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ピエールボナールの「働く人々」
幅160㎝の比較的大きい画面ですが、絵の具はあまり厚く塗られずカサカサしたタッチが特徴。
白い煙の部分はカンバスの白い下地そのままになっている個所もあります。

それでも画面はカッチリ出来上がっている不思議な人です…ボナールって。