※本記事はブリザード教会のホームページ「業界の実際」コーナーより一部加筆修正したものです。


「アクセサリー」というと業界では、メインの商品に対して「付随する小物」という意味合いで使われる。
最後にアンダーウエアの話をしよう。

21世紀の現在で、スポーツのアンダーウエアにおいては速乾性が不可欠であるとされている。
これは登山の世界から来たもので、冬の山で運動して汗をかき、それが冷えたりするとそれこそ低体温症で「死んでしまう」わけで、登山者にとっては非常にシリアスな問題なのであった。
天然素材でこのような厳しい環境での使用に耐えるのはウールくらいなもので、綿など最も雪山では危険な素材とされていたのだ。
そこに化学繊維の開発が進み、80年代に様々な素材が開発された。速乾素材というやつである。

さらに積極的に汗の水分を外側に排出するものは吸汗速乾素材と呼ばれ、ポリエステルやポリプロピレンなどの繊維で多層構造の編み組織を作ったもののことである。
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化学繊維はつまるところプラスチックを細く引き伸ばしたもので水分を含むことは無い。
これで水分を外側に排出するように外側ほど繊維の本数が多い組織を作ると、着用者の身体表面に水分は残らない。

P社においては夏用にポリエステルで「Cool&Dry」という素材を開発、使用していた。
これを元に裏側を毛羽立てて(起毛させるという)できたものが「Warm&Dry」と、まあネーミングはやや安直な気はするが、冬用の速乾素材である。
起毛させることで素材の厚みが増加し、含有空気量が増えて断熱効果が劇的に高まるのだ。

ところが90年頃まではスキー業界でアンダーウエアといえば綿100%ばかりだった。
形は、タートルネックだったりジップアップのハイネックだったりしたが、素材は「汗を吸い取る」綿だったというわけだ。
まあ、ゲレンデにおいては少し行けば暖房の効いたレストハウスがあるわけで、冬山登山のような危険性は少ないので、あまり気にしていなかっただけだろう。

その辺の速乾素材が登場してきた時代についてI氏はこう語る。


「(綿のアンダーは)最盛期は万単位で作ってました。機能素材の走りは91-92の頃のインターマックスかな?
その後KappaでCool&Dryが出てそれを裏起毛したWarm&Dryに発展した頃、なぜこれをスキーで使わないの?と単純に疑問に思ってました。
事業部制って嫌ですね。そう思っていたのもつかの間、(スキーの)ACCでもWarm&Dryを作ることになりましたが、当然受注が付かずどれもこれもロット割れ。
何とか1品番をミニマムロットで作りました。」


当初はデザイン面の問題もあったとの事だが、そういった試行錯誤の果てにめでたく速乾素材はアンダーの主流になることができた。
今では保温機能や温度調節機能が盛り込まれてますます高機能化したもの(それなりに高額)が登場し、一方ではとにかく速乾性を備えた安価なものが作られている。
こちらも価格としてはハイ&ローの状況になっているのだ。

そして、速乾や保温、発熱といった機能性は一般衣料品に普及し、ユニクロなどが大儲けしているのが21世紀の現代である。


参考:日本化学繊維協会の記事