※本記事はブリザード教会のホームページ「業界の実際」コーナーより一部加筆修正したものです。


「アクセサリー」というと業界では、メインの商品に対して「付随する小物」という意味合いで使われる。
今回はアクセサリーでも必需品のグローブの話。

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グローブというのは、もしかしたらそう変わらないものではないかという感覚で見ている方が多いのではないかと思うが、意外と流行の変遷があったりする。
大昔、それこそ私が子供の頃は本当の革は高級品で庶民の子供は合成皮革(のようなもの)をあてがわれていた記憶がある。
当然私の家では合成皮革のグローブであった。
しかもその素材は今から考えるととんでもないクオリティで、薄くスライスしたスポンジにビニールの膜を貼り付けただけというシロモノ。
ワンシーズン使っていると2月頃には表面の膜が破れてきて、水は入り放題になったものだ。

これが80年代に入り、日本人も全体に豊かになってくると、だいぶ本革を使ったグローブが増えてきたように思う。
革のグローブといっても100%本革というものはまず無い。
側面や指の間(マチなどと呼ぶ)は合成皮革を使ったりする。こういった部位には本革は厚すぎるのだ。

スキーバブルもその絶頂を迎えようとする頃、グローブにも異変が起こっていた。
それまでの時代とは明らかに異なる傾向が見られ始めたのである。
まず、柄物のトータルコーディネートのためにウエアの柄の素材を使ったグローブが登場した。
多色をブロック状に配したウエアに合わせるには、同じくブロック上に色を切り替えたグローブが作られた。
今思えば何でそこまで必死にデザインを合わせる必要があるのかよく分からないのだが、当時の方針だったので皆がんばって作ったのだ。

さらに、ウエアのアウトラインがだんだん大きくなっていくとグローブの形も幅が大きくなり、長さも長くなった。
手首から下がどんどん伸びて、10cm以上ウエアの袖口にかぶるものまで現れた。
ウエアの見た目のボリュームが大きくなったので、グローブもボリュームがないと釣り合いがとれないのである。

ただ、ここには間接的にスノーボードの影響があったと私は思っている。
スノーボードではストックなどつかむ必要がないため、指がきっちり曲がる必要性は薄い。
それよりも手が雪に触れる機会が多いので、とにかく濡れにくく暖かいという要素が重視されていた。
すると、手にぴったりフィットする形より少々大きめで余裕のあるもの方が、表面に水がしみこんでも中の手まで到達しにくく暖かいというわけだ。
この傾向も、ウエアのアウトラインが小さくなるにつれ、元のぴったりフィットの方に戻っていった。
今では手首ぎりぎりしかない短めのグローブが出ていたりする。


日本国内では革のグローブは四国あたりの地場産業という性格があったが、形の変遷と並行してグローブの産地も他の産業同様海外に移っていった。
ただ、スキーヤーの中には「握り」の感覚にこだわりのある方もいるので、現在では価格としてはハイ&ローの二極時代になっている。
グローブについてI氏は語る。


「結局これは(グローブは)原点回帰の高級商品ととりあえず何でもいいの両極化になったような気がします。
ちょうど10年前位(コメント収録当時)から中国やベトナム生産が主流となりましたが色々不良が出まして・・・・・
悲惨な思い出しかありません。インナーが抜けたりプラスチックが壊れたり・・・」


こういった20世紀の苦労があって、21世紀のグローバル経済が存在しているのであった。