※本記事はブリザード教会のホームページ「業界の実際」コーナーより一部加筆修正したものです。

「アクセサリー」というと業界では、メインの商品に対して「付随する小物」という意味合いで使われる。
スキーウエアに対して、帽子や手袋、バッグ、靴下、アンダーウエア、などなどが「アクセサリー」である。(これはスキー板やブーツの場合も同様)


大昔、列車でいっていた時代は、シートの頭上に開いている空間にぶら下げるため網棚に吊り下げるフックつきのスキーケースがたくさん売れたらしい。
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「私をスキーに連れてって」が大ヒットした時代、大学生などの若者が夜行バスでスキーに行く時代になるとバスターミナルまで「フックの無い」スキーケースを背負って、キャスターバッグをゴロゴロ引きずっていくのが、当時の流行でスキーに行く若者の標準的なスタイルだった。
前回はキャスターバッグの話だったが、今回はもう一方の主役、スキーケースに関しての話。
I氏は回想する。


「サンプル(展示会見本)と量産を異なる工場で作る事は当時のP社のACC(アクセサリー)としては異例のことでした。
しかし、さらなる利益拡大、原価率軽減を求め原産地の模索の真っ只中、日本橋にある某かばんメーカーにスキーケースのみ約5000本の生産の依頼をしました。
いろいろあったものの納品が終わりこれまたシーズンイン直前、営業から・・・スキーケース傾いて危ない!という連絡が…」

「どうやら普通に背負うと後傾してしまうとのこと。原因はサンプル時よりさらに原価を下げる為、工場が仕様を一部変更し工程を少し簡略(これ自体は良いことであった。)した際にベルトの取り付け位置まで変更して(見てくれを良くした)重心が変化していることに誰一人気づかなかったのです。
量産時にたまたま担当だった私は店からの返品修理、倉庫の在庫の修理の入出庫など生産側で出来ることの全てを負わされ上記のキャスターBAGの件とあわせ不良品大魔王となったのでした。
これ以後、サンプルチェック体制をなんとかしようとかいろいろな論議がなされたが、この件の責任はなんとなく私が負わされたような形となってしまいました。
ついでにこのケースは韓国で生産されており、ファスナーの引き手が不足したらしく、ケロケロケロッピーのスライダーがついていた商品が何本かありました。」


この件については私も記憶していて、会社のショップに入っていたスキーケースを背負ってみた覚えがある。

なるほど、ベルトの付け位置が下により過ぎていて、背負うと大きく後ろに傾いてしまった。
車に放り込むだけなら問題にならなかったと思うが、当時はバスターミナルまで背負っていかなければならないのでかなりシリアスなクレームになっていたはずだ。
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しかし、バスツアーでスキーに行っていた学生達が社会人になり、自分の自動車を持つようになるとスキーケースは急速に衰退していった。
ルーフボックスやステーションワゴンのテールゲートを開けてそのまま放り込めば、スキーケースなど必要ないのである。


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