※本記事はブリザード教会のホームページ「業界の実際」コーナーより一部加筆修正したものです。
さて衝撃のF-1ドライバーをプロモーションキャラクターにしてから数年後のこと。
スキー競技でもモーグルが注目されるようになってきた。
そこでP社は94年のリレハンメルオリンピックの金メダリストであるジャン・リュック・ブラッサールというカナダ人の選手と契約した。

リレハンメル五輪で金メダルを獲得した時の画像

モーグルテクニックを紹介するビデオ(!)のパッケージ写真より
着用しているのはカナダナショナルチームのウエアで、P社製ではあるが、後述する問題のウエアではない。

リレハンメル五輪で金メダルを獲得した時の画像

モーグルテクニックを紹介するビデオ(!)のパッケージ写真より
着用しているのはカナダナショナルチームのウエアで、P社製ではあるが、後述する問題のウエアではない。
そのブラッサールが6月新宿で開催のユーザーイベントで来日したときは本当に大騒ぎになった。
今風に言えば(まあまあ)イケメンだし、物腰は穏やかで紳士的。
長蛇の列ができたサイン会もにこやかにこなしてまたまた好感度アップ!というわけなのだ。
ユーザーイベントはただ新作ウエアを発表するだけの場ではない。
当然のことながら、人気投票などで実際にどの品番に人気があるかを調べる場でもある。
これだけブラッサールに人気が集まると、彼をキャラクターにしたウエアがダントツのトップ品番になるのも当然のことであった。
この企画の担当者(私ではないよ)はモーグルという種目は人気が上がっているとはいえ、スキーヤー一般の中ではまだまだ認知度が高くないと考えていた。
ゆえに大量生産、大量販売を考慮しない極めて精緻なデザインになっていたのだ。
しかし、いまだ拡大路線を信じていた販売部門がこんなにユーザーの支持があるならたくさん売れるはずだ…ということで大量生産計画をたててしまった。
生産サイドはこの精緻なウエアを大量に作ることにしばらく躍起となる。
結果は企画者の懸念した通りとなった。
「冬になって雪が降ったから、スキーにでも行こうか…」というようなスキーヤーはモーグルなんて良く知らない。
「ブラッサール?誰?」というようなお客が実は世の中の多数派だったのである。
販売するほうはかなり苦労したはずだ。
プロモーションのキャラクターの人気なのか、ウエア自体の人気なのか、その見極めを間違うと大変なことになるということだ。
以後、ユーザーイベントでの人気投票に関しては「どんな志向のスキーヤーが」「どのウエアを支持しているか」というように分析されるようになったのは言うまでもない。
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