※本記事はブリザード教会のホームページ「業界の実際」コーナーより一部加筆修正したものです。

初年度、ほとんど撥水の無かったストーンウォッシュのウエアだが、さすがに二年目以降の商品に関しては撥水加工をどこかで入れようということになった。


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最初は染めた基布に撥水加工をして、その後に顔料をのせてみた。
この内容でまずは展示会用のサンプルウエアが作られた。


さて、ここで展示会での見本についてお話ししておこう。
毎年3月から4月に展示会と称して、ウエアメーカーは新作の試作品を一通り作り、販売店にプレゼンテーションする。
販売店はそれを見て売れそうな商品に注文を出す。
これは日本国内市場、海外市場かかわらずほぼ同じ手順を踏んでいる。(時期は海外の方が一ヶ月ほど早いのだが…)


当時はカタログの写真もほとんどこの展示会の見本を撮影していた(今もそうかな?)
実はこの展示会の見本に関しては注文をとることの他にもうひとつ生産面で別の意味がある。
各色の素材の染め(この場合は顔料ののり方)具合がこの展示会の見本で確認され、実際の生産時の染め方が決定される。


さて、その撥水加工を取り入れたストーンウォッシュのウエアだが、展示会での仕上がりを見るとどうも顔料が落ちすぎているという評価になってしまった。
当然なのだが、撥水効果を出すにはコーティング加工される。
そのコーティングは水をはじめ、他のものが付着しにくくする効果があるため、顔料粒子の接着力が弱くなってしまうのだ。


そこで実際の商品に関してはやはり以前の内容で行くことになった。
これが混乱の始まり。
カタログの写真と実際に店頭に並んだウエアではかなり色合いが異なったものがあり(加工が違うのだから当然)、「カタログどおりの色のウエアを何とか用意しろ!」などという事実上対応不可能な電話が会社にかかってきたりもした。


一応カタログには、「予告なく製品仕様は変更されることがあります」などと書かれているが、そんなことにはお構いなしに自分の要求をおっしゃる方はどこにもいるものなのだ。
素材を作っているのは遠いヨーロッパ。
カタログの撮影のためだけに少量の素材を作ってくれるほど小回りはきかないのである。

もともとB社で開発された手順で生産すると撥水性能がないと問題にされ、素材に撥水の加工を入れると色が落ちすぎてどうもよくない。
ここは見た目重視で撥水加工よりも見た目重視でいくことになったのだ。
それだけ撥水加工の影響が表現上大きく影響していたのである。 


次回は撥水、色落ち以外のいろいろな問題。